産まれたときからそっくり悪人という人間はいない。
性善説と呼ばれるその考えは、通常、甘いという感覚で受け止められる。
父母ともに完全な悪人の場合には、生まれたときすでに悪人ということもあるかもしれない。
しかし、そんな組み合わせは、世にはびこっている悪の巣の奥深さを形成するほど多くあるわけがない。
あったとすれば、それはもう人間の世界の生きものではなく、悪魔なのだ。
初めからそうではない人を悪人にするには、その仕立てを業とする人間がいるに違いない。
そうだ、悪人仕立屋だ。
これは思ったより路地の奥が深そう。
しばらくの間、ここに分け入ってみようか、そんなことを今考えている。