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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第2章-6 魔界の気まぐれ

2018-03-09 00:02:20 | 私が作家・芸術家・芸人

 姿なき魔王が思念を伝えた。
(魔界はすでにパンドラの筺の秘密を探り当てている。一度開いた筺は、災厄ではなくありとあらゆる人間界の善を集めていた。次に開いた時、筺はありとあらゆる善を人間界にまき散らす)
(だが、・・・・・・)
(筺が再び開けば善意を振りまいた後で、最後にその善を踏みにじる「絶望」を与えるであろう。我らには人間たちの苦しむ姿が目に見えるようだ。災厄に苦しんだ末に「希望」を得るのと、ぬか喜びした後に「絶望」に苦しむのと、どちらもどっちかも知れぬが)

     

(そこまで知っていて、なぜの筺をゲームに賭けるのだ? 魔界にとっては、パンドラの筺こそ神界に一泡吹かせる切り札ではないか)
(あきたのだ、いや、あきれはてたというべきか。人間共の愚かさに。かつて、人間共の中にもファウストのような悪魔と取引をしようとするような知恵者がおった。しかし、今では魔界の住人さえ眉をひそめるような鬼畜ばかりが跳梁跋扈している。悪魔との契約に悩むどころか、先を争って自らを魔界におとしめる輩ばかり。苦しませるべき人間を見つけようとしても、すでに善人どもはすべて虫の息。筺などよりは、波乱要因アポロノミカンを人間界で踊らせた方が今後の楽しみが増えるというもの。大魔王サタンの名にかけて、魔性討伐に成功したあかつきにはパンドラの筺を返すと約束しよう)
 プルートゥが、ユピテルとネプチュヌスと目配せする。
(よいであろう。交渉成立じゃ)
 だが、交渉は終わっていなかった。
(ゲームを、もっとおもしろくしよう)姿なき魔王が思念を伝えた。(お主たちだけでは魔性たちに勝てそうもない。やつらは魔神スネール、いや、かつての魔神と言うべきかを仲間に引き入れようとしている。スネールは精神世界で、さかさまジョージというアポロノミカンを見た狂人と合体しトリックスターと化しつつある)
(トリックスター!?)

 アポロノミカンが生み出されて以来、いつかトリックスターが誕生することは宿命づけられていたのかもしれない。
 世界が作られ、線引きをされ、範疇が定義され、階層が建造されるやいなや、原始的パフォーマーであるトリックスターは、規範を破るため入り込み、タブーを犯し、すべてをひっくり返す。
 彼は、天と地という対立した世界を自由に行き来し既存の秩序を平気で破壊する「聖なる道化師」である。
(天界の住人なら知っておろう。トリックスターがどれだけ危険な存在か。今、この時も変態を続けるスネールは魔性たちと組んで人間界をめちゃくちゃにするであろう)
(アポロノミカン・・・・・・アスクレピオスも、とんでもないものを残してくれたもの。だが、スネールだけなら変態したとしても、天界、海神界、冥界たちの精鋭をさしむければなんとかなるはず)
(この秘密を教えても、お主たちの勝機が増すとは思えぬから警告しておいてやろう。「絶対悪」の誕生が近づいている)


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