ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

パールスィー料理本

2006年09月26日 | 

 ナマステ・インディアに出店していたなゆた屋さんのブースで、「Parsi Kitchen」という本を買いました。パールスィーという、インドにいるゾロアスター教徒の料理本です。

 ゾロアスター教はもともとペルシャ(イラン)で生まれた宗教で、善悪の二元論を展開した、世界最古の一神教と言われています。イスラム教が広まり、ペルシャから出たゾロアスター教徒が居ついた先が、インドの西海岸。グジャラート州やムンバイのあたりだそうです。インド人にとっては、「ペルシャの」人達だったので、ゾロアスター教徒を「パールスィー」と呼ぶようになりました。

 ムンバイにある有名なタージ・マハル・ホテルを作ったターター財閥や、インディラ・ガーンディー首相の夫、世界的な指揮者、ズービン・メータもパールスィー、亡くなってから知って仰天しましたが、クイーンのボーカリスト、フレディー・マーキュリーの家もパールスィーだそうです。
 ゾロアスター教の葬式は鳥葬で、燃やしたり川に流したりしないので、大気や水質を汚染しないとか。 

 ペルシャから来たゾロアスター教徒がたどり着いたのはグジャラートのあたりなので、インドのパールスィーは、名前はイラン風(ファルーク、フェローズなど)、名字はグジャラーティー風(ガーンディーやメヘターなど)という人が多いようです。

 現在ではイランには残っているゾロアスター教徒はごく少なく、インドにあるコミュニティーが世界最大だと思いますが、インドの中でも少数派です。ただ、ターター財閥を始め、裕福な人が多いので、人口は少なくても、インド、特にムンバイでは認知されたコミュニティーのようです。

 何度かインドに行っているのに、パールスィー料理を食べたことがありませんでしたが、「Parsi Kitchen」によると、パールスィー料理の特徴は、「中東の料理を基礎とし、卵や肉、魚を多用する肉食を好む。イランの伝統であるナッツ類もよく使い、インドに入ってからは、グジャラート州やマハーラシュートラ州の食事の影響を受け、ココナッツやスパイスなどを取り入れた。豆料理は明らかにグジャラート料理の影響が強い」だそうです。

 この本は英語で書いてあるのですが、料理名はペルシャ語のようです。アルファベット表記してあります。こんなレシピが載っていました。

 Paeta Na Sada Pattice (Deep-fried potato cakes)
  Tamata Pereeda(Eggs on tamato)
  Cokmi Na Kabab(Prawn kebab)
  Gosht Na Vindaloo(Lamb vindaloo)
  Masala Ni Kaleji(Fried liver)
  Dahi Ma Gosht(Lamb cooked in youghurt and raisins)
  Matar Ma Gosht(Lamb cooked with green peas)
  Parsi Gosht Ne Curry(Lamb curry flavoured with coconuts)
  Patra Ne Macchi(Chutney fish steamed in banana leaves)
  Tamata Ne Papeta Nu Stew(Tomato and potate stew)  などなど。

 ペルシャ語とヒンディー語は、インド・アーリア語族といって、かなり近いと聞いていましたが、ABC表記でも、かなり推測できます。

 おそらく、レシピにある Na、Ni、Neは日本語の「の」にあたるもの、Ma は「と」(英語の with)なんじゃないかな~。

 トマト(日) tomate(E) tamata(P) tamatar(H) tametun(G)
 ジャガイモ(日) potate(E) papeta(P) aaloo(H) bataka(G)
 グリーンピース(日) peas(E) matar(P、H) vataano(G)
 葉(日) leave(E) patra(P、H、G)
 魚(日) fish(E) machli(H) macchi(P)

 ※日=日本語、E=英語、H=ヒンディー、P=推測ペルシャ語、G=グジャラーティー 

 …と、わずかな知識を駆使して想像すると、料理本なのに、なんだかロゼッタストーンのように思えてきます。

 インドにいるムスリムの話すウルドゥー語の発音が、パキスタンのウルドゥー語に比べてかなりヒンディー語化しているように、この本の料理の名前も、ペルシャ語というより、インドのパールスィーが話すパールスィー語なのかもしれません。
 料理本でこんなに楽しめるなら、なゆた屋さんから、パンジャーブ料理とかマラーティー料理の本も買っちゃおうか…。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ぽんすけ)
2006-10-03 22:16:53
インド関係のことイロイロ書いてあって、思わず読んじゃいました。ヒンディー使って書いてあるのスゴイですねぇ、ハイテク!!



これからも寄らせてもらいます。よろしく
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こちらこそよろしくお願いします (とーこ)
2006-10-04 08:50:15
ぽんすけさん、こんにちは。

インド関係のサイトには、もっとディープな専門的なものもたくさんありますが、私はこんな程度で(笑)。

こちらこそよろしくお願いします。
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初めまして (mugi)
2006-10-05 23:07:13
初めまして。

拙ブログにコメントをありがとうございました。



映像のパールスィー料理、とても美味しそうですね。

フレディ・マーキュリーのお母様の得意料理は、チキンパイだったとか。

ヒンディー語やグジャラーティーまで紹介されているのはお見事。ちなみにパールスィーの日常会話は英語です。



インド情報に大変お詳しいですね。じっくり拝見させて頂きます。

ものぐさどころか、ディープな内容で感心しました。
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英語ですか! (とーこ)
2006-10-06 09:33:18
migiさん、こんにちは。



> パールスィーの日常会話は英語です。



びっくり!イギリスがインドに入ってくるまでは、ペルシャ語かサンジャーンの言葉を話していたのでしょうか?

でもインドにいる人は、たいてい3言語くらい話しますから、不便はなかったんでしょうね。パールスィー料理名は、単なる固有名詞として覚えているのかも。

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日常会話 (mugi)
2006-10-07 22:47:39
こんばんは。



イギリスが来る前までは、パールスィーはグジャラーティーが日常会話でした。ムガル朝の公用語のペルシャ語もある程度知っていた可能性もあるでしょう。

彼らが十世紀にインドに来た時、現地の王は地元の言葉を話す事を帰化条件に求めてます。ゾロアスター教の神官の中には別に強制された訳ではないのに、サンスクリットを学ぶ人もいたとか。
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アーリアン (とーこ)
2006-10-07 23:46:34
mugiさん



> イギリスが来る前までは、パールスィーはグジャラーティーが日常会話でした。ムガル朝の公用語のペルシャ語もある程度知っていた可能性もあるでしょう。



なるほど。ムガル朝の公用語、ペルシャ語というのは、ありそうですね。もともと、ペルシャ語とサンスクリットなど北西インド諸語はかなり近いので、そう苦労はなかったのでしょう。



去年、インドレストランで働いていたイラン人の人は、「アーリアンだから。イランとインドとドイツは」と、言っていました。ドイツはどうかな…と思ったけど。



バングラデシュのムスリムはベンガル語、グジャラートのムスリムはグジャラーティーを話すように、日常会話と宗教用語はパールスィーも分けていたのでしょうね。日本の仏教徒も、かなり訛っているとはいえ、宗教用語はインド起源の言葉を使っていることになるのでしょう。
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