三日月ノート

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映画:万引き家族

2018年06月23日 10時52分58秒 | 映画
『万引き家族』を観てきました。

やるせないというか、切ないというか、やりきれないというか、観た後に重苦しい気持ちになる映画でした。

実親から愛情を受けられずにいた子どもを、成り行きとはいえ引き取って一緒に暮らし、家族になろうとする夫婦と母、義妹。

そして、その気持ちをわかっていながら、なかなか「お父さん、お母さん」とは呼べない子ども。

日雇いで働き、親の年金を充てにしつつ、足りない分を万引きで賄う。その事に対し罪悪感を感じていない父に対し、本能的に罪を感じる子ども。

父は「俺が教えられることといったら、そのくらいしかなかった」と。

「万引き」自体がこの映画の主題というよりは、万引きを軸に、さまざまな行為、思い、人との関係が螺旋のように関わり合って物語が進んでいくという感じでした。

映画では、最初からずっとこの家族だけに焦点を充て、この家族以外との繋がりがほとんど見られないため、あたかも自分もその家族と行動を共にしているかのような気持ちになっていきます。

互いに血の繋がりはなくとも、目に見えない何かで繋がっている、繋がろうとして葛藤する日々。

そして後半では、それまでずっと「一般社会」から隔絶されてきたこの家族の営みが、外界にさらされる瞬間がやってきます。

「本当の家族なら、こうするはずでしょう。」
「本当の親と一緒に暮らすのが一番幸せに決まっている。」
「本当の家族とはこうあるべき。」

そのどれにも当てはまらない「家族」。

社会の正義や価値観を持ち込んだ時、脆くも崩壊してしまった「家族」。

社会のモノサシで計ったとき決して「家族」とは言えない「家族」。

そして「本当の家族なら絶対にやらないだろう」事をやってしまう弱さ。

ラストの「お父さんにはなれなかったよ。おじさんに戻るよ。」という父の言葉と、子どもの「うん」という返事がとてもせつなかった。

家族、親子、血の繋がり、社会、愛、正義、善意、人間の弱さ。
色々な事を考えさせられる映画でした。


『万引き家族』2018年/是枝裕和監督
リリー・フランキー
安藤さくら
松岡茉優
樹木希林

私的ランク:★★★★★(星5)

ちなみに(私、辛め採点なので)星5は初めてです。


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