面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

肩書き考

2008年09月10日 | Weblog
 九州最期の日を10日の雑事に追われている。朝からバスで麓の町に下りて、地元唯一の銀行「肥後銀行」へいった。窓口嬢の爽やかな対応で事は順調に運び、6月に倒産した会社の労働争議委員長をやっている友人のIくんと、3333段の麓の、これまた同級生が経営している田舎料理屋で昼食を摂った。午後から争議に出かけると言うIくんと別れ、家に戻って荷物の整理をしている。今宵はS塚くん宅の晩餐会に招かれている。ギターに弦を張ったので、30年ぶりにミニライブをやることにした。東京では思い出したようにライブをやっているので、数曲なら何とかこなせるだろう。

 で、今朝、話が横道にそれた「肩書き」についてだが、こういうことだ。肩書きにもいろいろあって、役職や職種だと事務的に当然である。問題なのは「あの何とかの誰々」という、名刺にはあまり見かけないが、紹介には欠かせないほうの肩書きである。と、いうのも、今の僕には「あの何々の」というキャッチがひとつもないからである。今回の営業で、本当に困った。大方の人間が知っている、例えば、100メートルを10秒5で走ったあの朝倉です、とか、トム・クルーズから恋文をもらった朝倉です、とか、初対面の相手が瞳を輝かせるワクワクキャッチがあれば、何の説明も要らず心を開いてもらえるのに。と、何度も思ったからだ。つまり、営業には肩書きが有効且つ又必要であると、痛感した経験による肩書き考である。

 「腕立て伏せ30秒で60回の朝倉」とか、「毎日ブログ書いている朝倉」では、地味すぎるし、ふーん、で終わりそうな気もする。かと言って「逆立ちで通勤する朝倉」とか「毎日カツどん30杯食う朝倉」では気持ち悪がられるのが落ちであろう。ここは奮起して、「何々賞作家朝倉薫」をものにせねばなるまい。などと、つらい営業の合間に考えた。田舎料理屋の女将Sちゃんが、巨体を揺るがせて笑った。「経営難でこんなにやつれちゃったのよ!でもね、主人に言われたの、つらいからこそ努力するんだ。楽になったら努力しないよって。おーっほっほっほ!」

 小学校、中学校の同級生は心なごむ。Sちゃん、Kちゃんで呼び合えば済む。大人になってからの肩書きなど、何の意味もない。「元気でね」別れの言葉も一言だ。
 何処でも何時でも、Kちゃんで通用したら楽だろうなあ、いかん、いかん、楽だと努力を怠ってしまう。いや、楽が良い。この歳にして惑う僕である。

肩書きとの付き合い

2008年09月10日 | Weblog
 中学時代の友人に某大手下着メーカーに勤めている男がいる。かなり有能で、現在は中国の工場を任されているらしい。彼のインドネシア派遣時代の話は、とても興味深かった。ただし、20年ばかり昔の話である。

 重要なポストなので、待遇は良かったらしい。日本で言えば邸宅、そこにメイドが3人に運転手、さらにボディガードのような助手、と、言葉にすれば聞こえは良いが、すべて現地人、日本語は殆ど通じない。が、料理はまあ口に合うし、仕事で来ている訳だから、と、自分を納得させた。

 ある日、彼は、工場立地の下見を兼ねてジャングル探検に出かけた。勿論、現地の通訳、ボディガード、運転手、それに、運転手の親戚付きである。日本人の金持ちが独りで出歩こうものならたちまち誘拐された時代である。当然、武器を携えた本物の探検隊である。

 ジャングルでは、虎の咆哮、猿の悲鳴、怪鳥の羽ばたき、それこそ映画の中にいる気分だった。その日は朝から腹の具合が悪かったこともあって、陽が中天に上る頃、彼は急に差込がきて、ジャングルの木陰に飛び込み、ベルトを外して尻を出し、しゃがみ込もうとした。通訳があわてて現地語で叫んだ。たぶん、「旦那!尻出しちゃダメ!!」だったのだろうが、なにしろ便意には勝てない。座って一発脱糞した。開放感と共に目をあげると、何と、運転手の親戚がライフルの銃口を彼に向けて目の前に仁王立ちではないか!尻を出してしゃがみ込んだ間抜けな姿で死ぬのかと、彼は目を閉じた。間髪を置かずジャングルに轟く銃声。

 「シテンチョー、ノグソ、ダメ、イゥタデショー!」通訳が平常心を取り戻して、彼のむき出しの尻に目をやった。運転手も、親戚も見下ろす目線は通訳と一緒だった。彼はズボンを上げるのを忘れて、脱糞したばかりの野糞を見た。「ギャー!!」彼の話によると、3メートルは飛び上がったらしい。野糞を枕に、彼を尻から飲み込もうとしていた5メートルはあろうかというニシキヘビが眉間を打ち抜かれて口を開けていたのだ。

 通訳の話だと、虎やニシキヘビに食われるのは、殆どが野糞をしている時らしい。特に女性は見られるのが恥ずかしいのでジャングルの茂みの奥に行き、そのままあの世へ直行となるそうだ。臭い話だが、真面目な彼の話に嘘はなさそうだった。

 「命拾いのシテンチョー」の話、肩書きの話からは大きくずれてしまった。