ASEで勉強していたAを駅で見かけた。携帯に夢中になっている彼の後ろから「ニイチャン、ちょいと顔貸しな」と脅すと、びくっとしたので、「おれだよ、A」とすぐに続けた。
「なんだよ、おどかすなよお。あさいのおやじじゃねえか」とAはすぐに驚きと怯えの表情を解き、笑顔で応じてくれた。
Aは小学生の時から私の元で勉強していたが、数年前、両親が離婚したことでやる気を完全になくしたのだろう。授業料を滞納したまま(親からもらったものを遊びに使ってしまった)退学していった。その後、時折り、彼の姿を見かけることはあったが、じっくり話す機会はなかった。
「卒業したらどうするの?」
かつて彼は母親の職業に就きたいと言っていた。
「何もやる気無い。でも、大学には行くよ。オヤジも行けって言うしね」
Aはそう言い放ったが、離れて行った母親を良くは言わなかった。だからかつて彼が就きたいと言っていた職業のことは聞けなかった。
「Bがすっかり悪くなっちゃってさ」
Aは、母親と共に離れて行った兄弟のことを持ち出した。Bは定時制高校に行っているが、もうすでに少年鑑別所に2度入れられたという。
最近、生徒たちの親から苗字や住所が突然変わったと言われるケイスが目立つ。その多くが、両親の別居や離婚だが、もはや離婚は、一時的に人の噂になるものの特別視されることではなくなった。だから、子供たちも以前とは違い、退学せずにそのまま継続する。だが、その心の内は、相談されない限りは読めない。
2度も離婚した私がとやかく言えることではないが、両親の別離は子供には重い。Aも多くのことを経験して、さまざまな想いを心の内にしまっているだろう。
別れ際、Aは笑顔を作って、「頑張れよ!」と私を励ます言葉を残して立ち去った。それは、Aが自分自身に対してかけているようにも思えた。
「ありがとう。頑張るよ、A」
私はどこか寂しげなAの背中に無言のメッセジを送った。
「なんだよ、おどかすなよお。あさいのおやじじゃねえか」とAはすぐに驚きと怯えの表情を解き、笑顔で応じてくれた。
Aは小学生の時から私の元で勉強していたが、数年前、両親が離婚したことでやる気を完全になくしたのだろう。授業料を滞納したまま(親からもらったものを遊びに使ってしまった)退学していった。その後、時折り、彼の姿を見かけることはあったが、じっくり話す機会はなかった。
「卒業したらどうするの?」
かつて彼は母親の職業に就きたいと言っていた。
「何もやる気無い。でも、大学には行くよ。オヤジも行けって言うしね」
Aはそう言い放ったが、離れて行った母親を良くは言わなかった。だからかつて彼が就きたいと言っていた職業のことは聞けなかった。
「Bがすっかり悪くなっちゃってさ」
Aは、母親と共に離れて行った兄弟のことを持ち出した。Bは定時制高校に行っているが、もうすでに少年鑑別所に2度入れられたという。
最近、生徒たちの親から苗字や住所が突然変わったと言われるケイスが目立つ。その多くが、両親の別居や離婚だが、もはや離婚は、一時的に人の噂になるものの特別視されることではなくなった。だから、子供たちも以前とは違い、退学せずにそのまま継続する。だが、その心の内は、相談されない限りは読めない。
2度も離婚した私がとやかく言えることではないが、両親の別離は子供には重い。Aも多くのことを経験して、さまざまな想いを心の内にしまっているだろう。
別れ際、Aは笑顔を作って、「頑張れよ!」と私を励ます言葉を残して立ち去った。それは、Aが自分自身に対してかけているようにも思えた。
「ありがとう。頑張るよ、A」
私はどこか寂しげなAの背中に無言のメッセジを送った。