現地3月5日(火)に行われた米大統領選の共和党予備選投票、いわゆるスーパーチューズデーの結果は14勝1敗でトランプ氏がヘイリー氏に圧勝となり、ここでヘイリー氏は「選挙活動の中断=事実上の撤退」を宣言いたしました。この結果、11月の米大統領選では、民主党のバイデン現大統領と共和党のトランプ氏が、前回2020年に続いて争うことになります。
トランプ氏のリスクは、このblogでも再三再四訴えていますので、いまさら繰り返すまでもないのですが、この人が世界最強国である米国のトップに座ることで、世界情勢の不確定要素が10倍から20倍、いやもっと100倍くらいに大きくなることが想定されます。当然ながら、日本人である我々にも極めて大きな影響が出ることになります。
「もしトラ」という言葉がすでに定着しているところですが、今や「ほぼトラ」などと言われる始末。しかし、その時のリスクをきちんと認識している人はまだ少ない気がいたします。
ちなみに、前回のトランプ大統領時代は、何をやらかすか分からない大統領の脇を、ペンス副大統領をはじめ、共和党保守派の大物たちがガッチリ固める体制を組んだことによって、防衛・外交といった重要分野については、トランプは吠えるだけで、重要な判断は共和党保守派がグリップしておりました。ところが今回は、トランプ氏がこの4年間に構築している共和党内のネットワークによって、共和党の重鎮たちに頼らずとも「トランプ政権を支える人材は確保できる=トランプの言いなりの閣僚を確保できる」という状況になってしまっています。すなわち、「トランプ氏が勝利する=トランプ氏による絶対君主制がスタート」くらいの勢いがあるということ。
そもそも、トランプ氏の政治姿勢は「場当たり」「思いつき」であり、世界情勢とか米国の総合利益とかには関係なく、いかに「その時の自分が格好良く見えるか」のために、「場当たりな思いつき施策」を次々口にして実行していくことになります。
前回の時には、習近平の中国に対して「台湾を譲る替わりに、北朝鮮の体制再構築」という「ビッグディール」を実行しようとした過去があります。当然ながら、共和党保守派に激しく反対されて事なきを得たのですが、まるで不動産取引を行うような感覚で、危険な判断を「場当たり的に」してしまう傾向が強い。
それを止めるパワーがあるうちは良いのですが、今回はトランプ氏を止めるパワーが存在しなくなる可能性が大であります。
こうなってしまったのも、現大統領のバイデンさんがあまりに「冴えない」から。極めて常識的で優しい人柄が前面に滲み出ており、ロシアに対しても「米軍がウクライナへ出ていく可能性はない」ことを公に繰り返し述べていたことが、結果として、プーチン大統領のウクライナ侵攻の決断を促す原因になってしまいました。常識的であるが故に、あまりに「弱腰」に見られることが多いのです。これについては、民主党支持者からも評判が良くありません。
11月の米国大統領選挙は、「ボケた老人」対「イカれたジコチュウ野郎」の闘いと言われ始めています。
人類の歴史上、覇権国の絶対君主に「ボケた老人」が就く場合と「イカれたジコチュウ野郎」が就く場合では、圧倒的に後者の方が人類にとって悪いことが発生する可能性が大きい。
自分はそれでも、アメリカの民主主義の力を信じている人間でありますが、まさにアメリカ民主主義の見識が問われる大統領選になると思います。