昨年の9月16日に掲載した当blogを再掲いたします。
2024年2月現在の日経平均株価は、1989年の史上最高値まであと一息のところまで来ていますが、大きな流れとしては、海外投資家による日本株投資再開の勢いは止まりそうにありません。そもそもの日本株の「割安度」に加えて、直近の日本マーケットの資本効率化への舵切りは、彼らから見れば「ようやくこの時が来た」と大きなトリガーになったようです。また中国株式に投じていた多額の資金を他のアジア市場へ移管しようとしても、吸収できる規模のマーケットは東京市場くらいしかありません。これも追い風になっています。
日本株で成功体験に乏しい国内の個人投資家は、相変わらず「消極姿勢」のままでありますが、「乗り遅れる」のは日本の個人投資家の常なので、やむを得ないことかもしれません。ただ、今回だけは早めに乗って「長期投資」に参加することをお勧めしたいと思います。
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今年(=2023年)に入ってから、久々に日本株が上昇局面にあって、特に日本を代表するような自動車産業や、総合商社、メガバンクグループなどの株価のパフォーマンスが良好に推移しております。ただ7月以降は、中国経済の予想以上の停滞が報じられるようになって、地政学的に近い日本の株式の勢いが衰えて、相場はひと休みの状況。
日本の個人投資家の皆さんは、この30年間、正直言って日本株投資で成功した体験を持つ人が少なく、成功体験と言えば、北米株や新興国株なので、年前半の日本株の上昇局面では、「やれやれ売り」と言って、ようやく買った値段を超えたので、日本株の利益確定売りに走った方が多くいらっしゃいました。そして、その売却代金で、北米株の下値買いに向かっているようです。つまり、日本株の成長力や上昇力を、全く信じていないのが実情。
そういうワタクシも、もともと成長力と言えば「北米あるいはインドなど新興国」という考えを強く信じている人間なので、自分自身の金融資産の割合をオープンにすれば、資産の2/3はドル資産。そのうち半分はドル預金、もう半分は北米の成長株投信という偏ったポートフォリオになっています。ちなみに、あとの1/3は、持株会で積み立てた自社株であります。これだけが円資産と言って良いです。
そんな極端な個人ポートフォリオの主であるワタクシが、この状況下、ここから新規購入するのであれば、日本株が面白いという感覚に包まれております。理由は『今の日本の資本市場が、1990年代の北米資本市場に酷似しているから』。
1990年頃の北米の資本市場と言えば、大きな変革期を迎えた時期でありました。その直前の1980年代の米国は、急激にのし上がってきた日本経済=「Japan as NO.1」に押されて、特に自動車産業に代表される製造業が追い込まれ巨大な貿易赤字に苦しむ、かつての栄光から転げ落ちた黄昏感が広がる状況でありました。米国を代表するDOW30銘柄、あのGEでさえ、多くの事業に手を出し過ぎて、コングロマリット・ディスカウントで株価低迷に悩まされる時代でありました。
1990年代に入って、その状況から脱するために、北米企業の経営者たちは、特に株価を意識して、以下の方向へ舵を切ります。
①資本の効率性に拘る。売上や経常利益ではなく、ROE重視の経営に転換する。
②事業別のROEに着目して、M&Aの積極活用によって有望な事業に資本を集中。これによりコングロマリット・ディスカウントを解消する。また自社株購入も積極的に活用する。
③市場からの成長期待であるPERを強く意識。PBR1倍以下など以ての外で早期脱出を図る。
④米国市民にIRA(個人年金勘定)と企業型DC制度が定着した時期。全国民による資産形成=定時定額投資が本格化する。
いかがでしょうか?
まず①と③については、ここ2~3年で日本の経営者の若返りが進んで、新世代の経営者たちが口を揃えて「資本の効率化を図る」「ROE経営に移行する」「PBR1倍以上を実現する」と言い始めました。東証が言い始めたのは、今年に入ってですが、その前から企業経営者が変わり始めておりました。
すでに②については、あの日立が実践しているように、日本の基幹産業群がこの方向へ変わりつつあります。もちろん、ここからのスピード感が大事であります。
そして④については、2024年から始まる新NISA制度の導入によって、日本国民全体に、定時定額投資による資産形成が国家的イベントとしてスタートします。
状況が酷似しているでしょう?
特に重要なのは、今回は、若返った新世代の企業経営者たちが本気で取り組んでいること。そして政府官邸も不退転でやり遂げようしていること。
すでに割安感満載の日本株は、乾燥しきっているマキ材のようなもの。これに火を点けようと国を挙げて取り組んでいるのですから、乗らない手はないとワタクシは考えております。