「野暮なことを言うな」とか「あいつは野暮な奴だ」とか、よく使う言葉であります。
「野暮」とは、世情、人情の機微を理解できない人を指す言葉であり、特に男女間の微妙な機微に対して配慮が利かない人、田舎っぽい行動が目立って洗練された振舞いが出来ない人に使われる言葉です。不粋(ぶすい)という言い方になる場合もあります。
いろいろ辞書などを調べてみると、もともとの語源は、江戸時代の「遊里=遊郭などの水商売」の事情に疎い人を指す言葉であった由。
江戸の「遊郭」という場所は、さまざまな「お作法」や「仕来り」が定着していて、花魁などの高級娼婦に限らず、普通の遊女と言えども稼ぎ手である以上、相応に「リスペクト」されている世界でありました。そんな所へ、地方から出てきたばかりのケチ臭い武士が遊びに来て、高い料金や毅然とした遊女の態度に不満を漏らし、偉そうに怒鳴り散らして暴れる奴のことを「野暮」と呼んだらしい。当然ながら、こんな相手に対して遊女はフン!と袖にすることもしばしば。
なお「野暮」は「野夫」から来ているという説もあるそうで、ちなみに「野夫」とは「田舎者」を指す言葉だそうであります。まぁ、江戸の遊郭に初めて出かけてきた、ケチで横柄な侍を指した言葉が語源ということなのでしょう。
ところで、自分は50年来の競馬ファンでありますが、競馬をよく知らない方から最初によく聞かれるのが、
「競馬って儲かるの?」
という言葉。これこそ「野暮」な質問の最たるものであります。
馬券というのは、あらかじめ胴元であるJRAが売上げの15%、国も売上げの10%を差し引いて、残り75%を当たった人に配分する仕組みですから、期待値が75%に過ぎない世界。長くやればやるほど期待値75%に収れんしていくのが理屈ですから、儲かる訳がありません。競馬とは、買った馬券の1/4程度を損し続けるゲームであり、それが「お楽しみ料」になっている訳です。
ゴルフ好きな人に「ゴルフって儲かるの?」と質問しませんよね。それと同じで、競馬好きの人間に「競馬って儲かるの?」と聞くのは「野暮」であります。
「競馬を知らない」という事実は仕方のないことなのですが、よく知らないにも関わらず、質問の背景に「競馬ファンを蔑む」潜在意識が隠れていると感じてしまいます。競馬ファンにとっては、「江戸の遊郭」へ来て「したり顔で遊女を蔑む」横柄な侍と変わりません。
そういうワタクシも、63歳と年を重ねていますから言動には気をつけないといけません。野暮なことは言うと、自らの品格や人間性を疑われることだってあり得る年齢ですから。
自戒 自戒・・