夫婦で新しい人生にトライしてます~日本編

15年ぶりにカナダから帰国。終の棲家と選んだ北海道美瑛町から日々の生活を綴ります。

映画オッペンハイマー

2024-04-14 07:36:10 | 日記

今年のアカデミー賞を総なめした話題の映画「オッペンハイマー」を見て来ました。原爆の父ロバート・オッペンハイマーの半生記です。アメリカでは昨年夏に公開されていたのに、日本では映像に広島も長崎も出て来ない作品に嫌悪感があってか公開がずっと遅れ、3月末になって公開が決まった曰くつきの映画です。

オフィシャルサイトから

見ての印象は、3時間という長さは全く感じない、考えさせられる点が多々ある良い映画だったと思います。広島、長崎の映像を使わないことが日本では物議をかもしたということですが、そういうことは必要なかったのではないかとも思いました。

この映画はあくまでも原爆を開発したオッペンハイマーという物理学者の生き方を問うたもので、核爆弾という大量殺りく兵器を生み出したことへの道義的な良し悪しを問うものではないものでした。むしろそういう映像を使わなくても彼の心の中に渦巻く悲惨さへの葛藤は随所に出てきて、アメリカ側では原爆の製造、利用に関しどういう議論があったのかを知ることに役立つものでしたし、全く描かれてはいない「ではこの時日本はどういう事態になっていたのか」を改めて日本人に問うものであったと思いました。

映画の構成としては、ほとんど事前知識のないまま見に出かけた私達にとっては登場人物の多さとシーンが大きく3つの舞台に分かれていることで内容を理解するのがちょっと難しかったです。まだ見ていない方のために少しだけアドバイスすると、3つの舞台とは、1つは彼自身の物理学者としての成長の過程と女性遍歴や共産党シンパとなる生き方、2つ目は原爆が使われて終わった第2次大戦後アメリカに吹き荒れた反共反ソ連の赤狩りに彼が巻き込まれ戦中戦後に作られた彼の英雄視を徹底的に叩きのめす聴聞会、そして3つ目は(これが分かりにくいのだが)戦後彼を原子力委員会のトップに招聘した政治家ルイス・ストローズなる人物と意見が合わず、ストローズが閣僚選任されるための上院公聴会に呼び出されて原爆や水爆開発についての意見を求められる舞台となります。

映画は3つ目の舞台でストローズが閣僚就任を承認されず、オッペンハイマーや他の科学者たちの主張が認められて彼自身も赤狩りで地に落ちていた評価を再見直しされていったというところで終わります。

なので、後半は政治劇みたいなものになるが、やはりこの映画のハイライトは日本への原爆投下直前にアメリカで初めての原爆実験「トリニティ」が成功し皆が狂喜する様子や、そこでのスピーチで次第に自分が作ったモノへの恐怖を感じ始める彼の心情、あるいはトルーマン大統領が日本の12の都市名を上げて原爆投下を決定する会議の様子などだったと思います。

彼自身ユダヤ人でナチスドイツに原爆を作らせてはならないという思いから携わった原爆製造が、ドイツ降伏後ほとんど弱体化していた日本へ向かって続き使用にまで踏み入らせてしまい、更にはソ連との核爆弾開発競争に踏み込んでしまうという思ってもみなかった展開に苦悩する科学者という映画でした。

上述したように見終わった感想は、「7月にアメリカが原爆の実験に成功した事実を知っていながらなぜ日本はポツダム宣言を早急に受諾し広島、長崎の悲劇を防げなかったのか」という疑問でした。

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