年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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基金がなくなっても最低限、代行部分は守られますが…

2013年06月27日 | 新聞連載記事
6月19日に成立した厚生年金基金の改正法は、積み立て不足の基金を解散させ、積み立て不足でない基金もなるべく別の企業年金へ移行させて、基金制度自体の整理をめざそうというものです。

基金がある会社に勤めていた人は、本来国から支給される老齢厚生年金の報酬比例部分を、基金の代行部分として受給します。基金の年金は、代行部分と会社の退職金に当たる加算部分を合わせた年金です。

改正法によって基金が解散すると、基金からの年金は支給されなくなります。その代り、基金から代行部分の積立金が国に移され、代行部分と同じ額の老齢厚生年金として支給されます。

万一、積立金が全額移されなかったときにも、不足分を厚生年金制度全体でカバーして代行部分と同じ額の老齢厚生年金が支給されます。今回の改正法では、どんなに積み立て不足の基金であっても代行部分だけは守られることとなりました。

一方、個々の会社の退職金に当たる加算部分がどうなるかは、積み立て状況などにより基金ごとに異なります。別の企業年金に移行できる積み立て不足がない健全基金は、全体の一割程度といわれています。ほとんどの基金は積み立て不足なので、約束どおりの加算部分が受給できるケースは少ないでしょう。

現在基金に加入している人、また基金の年金を受給している人は、まずは自分の基金の現状と今後の見通しの情報を手に入れ、それによって老後の生活設計の見直しが必要かどうかを検討しなければなりません。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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厚生年金基金の廃止をめざす改正法

2013年06月20日 | 新聞連載記事
厚生年金基金は、企業の退職金を年金という形で支払う企業年金の一種です。企業年金は国の年金とは関係ない私的な制度ですが、基金は老齢厚生年金の報酬比例部分を国に代わって支給するのが特徴です。これを代行部分といいます。

基金は年金として支払うお金を事前に積み立てます。おおむね退職金に当たる部分の掛金は会社が負担し、代行部分の掛金は会社と加入者が半分ずつ負担します。基金加入者の厚生年金の保険料は基金の掛金分だけ安くなっているので、基金と厚生年金を合わせた負担は基金のない会社に勤めている人と変わりません。

基金の積立金は株や債券で運用されます。予定どおり運用できないと積立不足が生じます。基金は現在550余りあって、加入者は400万人程度、受給者は270万人ほどですが、多くの基金が積立不足に陥っています。中には代行部分の積み立てすら割り込んでいる、代行割れ基金も少なくありません。

このような危うい状況にある基金を解散させ、制度自体の整理をめざした法律改正が、6月19日国会で可決成立しました。

基金がこの改正法によって解散した場合は代行部分の積立金が国に返上され、加入者には代行部分に見合う額が老齢厚生年金として支給されます。万が一、基金が相応の積立金を返上できなかったとしても代行部分は支給されるわけですが、これは基金がなかった会社や基金に加入しなかった人を含む、厚生年金全体で最終的な面倒を見るということです。


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比例は本来水準・定額は特例水準が高かったら?

2013年06月19日 | 年金ワンポイント
現在、支給されている特例水準の年金額は、今年の10月と来年4月にそれぞれ1%ずつ引き下げられ、特例水準の年金額の適用は来年度(26年度)でおしまい。再来年度(27年度)からは本来水準の年金額が支給されます。

さて、現在の特例水準と本来水準の差は、基礎・定額部分は2.5%ありますが、若い世代の報酬比例部分の年金額は2.5%もありません。ということは、賃金水準や物価の動向によっては26年4月時点で、基礎・定額部分は特例水準のほうが高いけど、報酬比例部分は本来水準のほうが高い…ということが起こり得ます。

これは、65歳以後の老齢厚生年金についていうと、報酬比例部分は本来水準のほうが高い、経過的加算は特例水準のほうが高いということ。んじゃこの場合、65歳以後の老齢厚生年金の年金額は、どうなるのでしょうか?

①それぞれ、高いほうの額を足した額、すなわち「本来水準の報酬比例部分+特例水準の経過的加算」

②「本来水準の報酬比例部分+本来水準の経過的加算」または「特例水準の報酬比例部分+特例水準の経過的加算」のどちらか高いほう

ちなみに、本来水準が支給されることになると、直ちに例のマクロ経済スライドによる給付水準の調整が行われます。もし①だとすると、報酬比例部分だけを調整して経過的加算は調整しないことになるのでしょうか。

ふ~~む、どうするんでしょうね。

支給開始年齢のさらなる引き上げ?

2013年06月13日 | 新聞連載記事
報道によれば、今月3日に開かれた社会保障制度改革国民会議は、老齢年金の支給開始年齢のさらなる引き上げを検討すべき、との認識で一致したということです。

老齢厚生年金の支給開始年齢は、既に65歳へ引き上げられつつあります。以前は60歳、あるいは60歳前から支給されましたが、今年度60歳になる1953(昭和28)年度生まれの男性は、61歳支給です。

支給開始年齢は若くなるにしたがって1歳ずつ遅くなり、今年度の年齢でいうと、男性は52歳以下、女性は47歳以下の方は65歳支給です。
今のところ決まっているのはここまで。国民会議ではこれをさらに66歳、67歳へと引き上げることを検討するのでしょうか。

国民会議は昨年の8月、自民・公明・民主の三党が合意した社会保障制度改革推進法によって設置されたものです。会議の意見が必ず実現するとは限りませんが、政府は年金・医療・介護などの制度改革について国民会議の意見を踏まえ法制上の措置を講ずるとされています。

では、今の社会は支給開始年齢引き上げを受け入れることができるでしょうか。今年4月の法律改正によって、希望者は60歳以後も年金支給開始年齢まで雇用されることになりましたが、これは60歳前と同じ賃金が保証されるものではありません。
また、いったん職を離れた高齢者が再就職するのは容易ではありません。支給開始年齢引き上げを検討するのであれば、一方においてそれを可能とする環境を整備しなければなりません。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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産休・育休によって保険料が免除されても当然に年金額へ反映

2013年06月11日 | 年金ワンポイント
6月7日にアップした記事の中の、『来年4月からの産休中の保険料免除は、年金額については保険料が納められたものとされるので影響がありません。』という部分は、正しくないですね。

産休・育休中の保険料免除(正しくは保険料を徴収しない)期間の年金額への反映については、たとえば「免除期間は保険料が徴収されたものとみなす」みたいな条文があるわけではないですもんね。

厚生年金の各部分の年金額の規定は次のとおり。
・報酬比例(厚43①)    …被保険者であった全期間の平均標準報酬額×乗率×被保険者期間の月数
・定額部分(厚附9の2②1)…定額単価×改定率×被保険者期間の月数

ここでいう、「被保険者であった全期間」とか「被保険者期間の月数」は、産休・育休中の保険料免除期間であったかどうかを問うていません。産休・育休中の保険料免除期間であっても「被保険者であった全期間」および「被保険者期間の月数」に含まれるので、とくに「免除期間は保険料が徴収されたものとみなす」みたいな条文がなくても、当然に年金額に反映するわけですな。

育休免除ができたときに勉強したはずですが、忘れちゃって、なにげな~く書いてしまいました。人間は忘れる動物です。