年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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消費税引き上げ先送りの影響

2014年11月27日 | 新聞連載記事
来年10月に予定されていた消費税10%への引き上げが、1年半先送りされました。これは、既に決定済みの年金に関わる改正点のうち、いくつかの施行時期にも影響します。

「老齢年金の受給資格期間を10年に短縮」する改正と「年金生活者支援給付金」は、消費税10%への引き上げに合わせて施行するとされています。従来は来年10月に施行される予定でしたが、今回の消費税引き上げ先送りによって、この施行時期も先送りとなりそうです。

老齢年金を受給するには、国民年金の1号、2号、3号加入者としての保険料納付期間と免除期間との合計で25年以上必要です。25年未満の場合はカラ期間を含めることができますが、その場合も合計で25年以上が条件です。
この受給資格期間の25年が、来年10月に10年に短縮される予定でした。今回の先送りにより、受給資格期間10年以上25年未満の人が老齢年金を受給できる時期が、予定より遠のきます。

年金生活者支援給付金は老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者で所得が一定以下の人に、税金を財源として月額5,000円程度の給付金を支給する制度です。年金ではありませんが、一定の年金受給者を対象とし、年金と同様に2カ月ごとに支給されます。取り扱い窓口は年金事務所です。
給付金は来年10月からスタートする予定でしたが、今回の消費税引き上げの先送りにより、これも先送りとなる見込みです。

この他、来年10月施行とされていた「被用者年金一元化」、対象期間を過去5年とした「後納制度」については、消費税引き上げと連動していないので、予定通り施行されるものと思われます。

医療費自己負担限度額の見直し

2014年11月21日 | 新聞連載記事
70歳未満の医療費の自己負担限度額が、来年1月から変わります。所得が高い人は負担が増え、所得が低い人は負担が減ります。70歳以上の限度額は変わりません。

健康保険も国民健康保険も、70歳未満は医療費の3割を負担します(小学校入学前は2割)。また、1カ月の自己負担が限度額を超えた場合、超えた額が高額療養費として払い戻されます。医療費の一定割合を負担するだけで医療が受けられ、その負担に限度が設けられていることが、日本の公的医療保険の特徴です。

現在の自己負担限度額は、所得に応じて3つに区分されています。来年1月からは、上位所得者と一般所得者がそれぞれ2つに細分化され、全部で5つに区分されます。
2つに細分化される上位所得者は、いずれも限度額が引き上げられます。最上位の負担は、現在の1.7倍ほどになります。

<上位所得者>
・今年12月まで(標月53万円以上)150,000円+(医療費-500,000円)×1%
・来年1月から (標月83万円以上)252,600円+(医療費-842,000円)×1%
        (標月53~79万円)167,400円+(医療費-558,000円)×1%

一般所得者の限度額は、現在と変わらないかあるいは引き下げられます。健康保険に加入する会社員を例にすると、引き下げの対象は標準報酬月額が26万円以下の人。この人の1カ月の医療費が例えば100万円かかったとすると、現在の自己負担は87,430円。これが来年1月からは、3万円ほど減って57,600円となります。

<一般所得者>
・今年12月まで(標月50万円以下)80,100円+(医療費-267,000円)×1%
・来年1月から (標月28~50万円)80,100円+(医療費-267,000円)×1%
        (標月26万円以下)57,600円

限度額を超えた額の払い戻しは、本人の請求によります。病院の窓口での支払いを限度額までにする方法もあります。該当する人は忘れずに手続きしましょう。

国民年金保険料の控除証明書

2014年11月13日 | 新聞連載記事
今年国民年金の保険料を納めた人に先月末、日本年金機構からはがき形式の「社会保険料控除証明書」が発送されました。年末調整や確定申告の際に使うものです。

社会保険料を納めたときは、税金を計算する際にその全額を所得から控除できます。国民年金1号加入者が今年納めた保険料は、今年の所得から控除します。

今年納めた保険料は、今年の分だけとは限りません。過去の「滞納」期間の保険料は、2年以内のものであれば納めることができます。それ以前の未納期間は本来納めることはできませんが、現在、過去10年以内の未納期間の保険料を「後納」することができます。免除期間の保険料は、過去10年以内のものを「追納」できます。

これら、過去の期間の保険料を今年納めたときは、その全額を今年の所得から控除できます。

将来期間の保険料を「前納」することもできます。今年から2年前納制度も始まりました。来年3月までの1年前納、再来年3月までの2年前納をしたときは、その全額を今年の所得から控除できます。また、前納した額を月割りして各年の所得から控除することもできますが、一度各年控除としたものを一括控除に変更することはできません。

控除できる社会保険料は、自分の分だけではありません。生計を一にする配偶者や子供などの分を納めたときは、納めた人の所得から控除できます。控除証明書を紛失したときは、年金事務所などで再発行してもらえます。

記録訂正新たな仕組みへ

2014年11月07日 | 新聞連載記事
年金記録問題が明らかになって7年。記録がなく、明確な証拠もない人の申し立てに対応してきた総務省の「記録確認第三者委員会」は、来年3月末で活動を終了し、その役割を新たな仕組みに引き継ぎます。

第三者委員会は、国民年金の保険料を納めた、あるいは厚生年金の保険料を給料から天引きされていたなどの申し立てを受け、補足資料や当時の状況から認否を決定します。年金当局はその結論に従って、認められた人の年金記録を訂正します。

申立件数は、2007年6月の設置から13年9月末までの累計で約27万件。そのうち、記録訂正が認められたのは約11万件です。最近は、第三者委員会へ送られる前、年金事務所の段階で処理される件数が増えています。

今年六月、年金法が改正され、法律に基づく記録訂正の仕組みが設けられました。各地の厚生局に記録訂正審議会(仮称)が置かれ、第三者委員会と同じように、年金事務所で申し立てを受け付けます。

第三者委員会は来年2月末まで申し立てを受け付け、3月末で活動を終了します。記録訂正審議会は来年3月初めから申し立てを受け付け、4月から審議を開始します。

第三者委員会で処理できなかった申し立ては、本人の同意を得て記録訂正審議会に引き継がれます。今年11月以降の申し立てについては、引き継ぎのための事前申し込みが受け付けられます。

標準報酬の誤りなど、最近になって発生した記録問題もあります。年金記録は折に触れ、チェックしておきたいものです。