年金ふわふわ

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年金機能強化法案を読む(6)遺族基礎年金の遺族の範囲

2012年04月25日 | 年金ワンポイント
遺族基礎年金が支給される者を、現在の「妻または子」から「配偶者または子」と改正して、「夫」にも支給することにしようという件に関し。

審議段階で検討された、『夫・妻にかかわらず3号が死亡したときには支給しない』という点は、改正案条文からは読み取れないが…

という4/17のアップに対して、『神奈川のクリハラさん』が「見つけました!」とコメントを寄せてくれました。

厚労省HPの24日付新着情報に載っている、年金部会の資料ですね。

クリハラさん、ありがとうございました。

「政省令等により措置予定」か。政省令で「3号は除く」とでもするのでしょうか。

でも、こういう場合って、本体の条文のほうで「配偶者(政令で定める者を除く)」としておいて、政令で「○○条に規定する政令で定める者は、第3号被保険者…」てな構成になるのではないでしょうか。

本体の条文のほうが、単に「配偶者」となっていて、それを政省令で限定できるのなかあ。

年金機能強化法案を読む(5)遺族基礎年金の遺族の範囲

2012年04月24日 | 年金ワンポイント
第37条の2(遺族の範囲)
1 遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子は、被保険者又は被保険者であった者の配偶者又は子(以下単に「配偶者」又は「子」という。)であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当したものとする。
一 配偶者については、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当する子と生計を同じくすること。
二 (略)
2 被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時胎児であった子が生まれたときは、前項の規定の適用については、将来に向かって、その子は、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していたものとみなし、配偶者は、その者の死亡の当時その子と生計を同じくしていたものとみなす。
3 (略)

遺族基礎年金が受けられる遺族とは誰か?という規定。現在は「妻」とされている部分が、「配偶者」と改正されます。

なお、子は18歳年度末前の子、または20歳未満の障害1・2級の子であること。子・配偶者は共に、死亡者との間に生計維持関係があること。配偶者については子との間に生計同一関係があること…などは現在と同じです。

2項は、たとえば夫が死亡して妻だけが残されたとしても、当時胎児だった子が生まれたときには、その子と妻は遺族基礎年金がもらえますよという規定。

ここも、現在「妻」とあるものが「配偶者」に改正されますが、ここが「夫」となる可能性ってあります?

「妻」が死んだ後に、死んだ「妻」の子が生まれて、「夫」が遺族基礎年金を受給する…って、あり得る? ここは、「妻」のままでいいんじゃないのかな。

年金機能強化法案を読む(4)遺族基礎年金の遺族の範囲

2012年04月17日 | 年金ワンポイント
第37条(遺族基礎年金の受給要件)
遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又は子に支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあっては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一~四(略)

遺族基礎年金を夫にも支給しましょうという改正。賛成、賛成。妻が死んで、小さい子があったら、夫もたいへんだもの。せめて、遺族基礎ぐらい支給してあげましょうよ。

現在は、「死亡者の妻又は子に支給する」とされているものを、「死亡者の配偶者又は子に支給する」と改正します。配偶者なので、妻が死亡したときの夫にも支給されるわけですね。

ちなみに、この改正事項の議論の際に、「第3号被保険者が死亡したときには支給しない」ことにしようと言われていたのですが…?

遺族給付は、生計を支えていた者が死亡したときの、生計のすべを失った遺族に対する生活保障。3号は2号に扶養される者。たとえば妻が3号であるときに、その妻が死んでも、その妻を扶養していた側である夫に遺族保障はいらないでしょうという理屈。

でも、この改正条文だけでは、「3号が死亡したときには支給しない」というのは見えませんね。どこかの附則にでもあるのかしらん?

年金機能強化法案を読む(3)障害年金の額改定の請求

2012年04月13日 | 年金ワンポイント
国34条(障害の程度が変わった場合の年金額の改定)
1 (略)
2 (略)
3 前項の請求は、障害基礎年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該障害基礎年金の受給権を取得した日又は第1項の規定による厚生労働大臣の診査を受けた日から起算して1年を経過した日後でなければ行うことができない。
4~6 (略)

2級の障害基礎年金をもらっていた人の障害状態が悪化して、「私は1級になったんじゃないかな~」というときには、本人は、年金額を2級から1級に改定してちょうだいという請求ができます。

ただし、この改定請求は、現在は、受給権取得から1年以上経過しなければできないとされています。

また、1項の大臣による職権改定、すなわち現況届に添付した診断書の診査によって、『あなたは今まで1級だったけど障害が軽くなったから2級ね』と年金額が改定されたときから1年以上経過しなければできないとされています。

要するに、改定請求はそう頻繁には出すなというわけです。

これを、障害の悪化が明らかだと省令で定めるときには、上記の1年経過を待たなくても改定請求を認めましょうという改正です。

具体的にどういうケースで1年待たなくてもいいのかは、省令が出ないとわかりません。出ても、たぶん抽象的にしか書いてないだろうから、わかんないだろうけど。

年金機能強化法案を読む(2)繰下げ受給

2012年04月10日 | 年金ワンポイント
国28条(支給の繰下げ)
1 老齢基礎年金の受給権を有する者であって66歳に達する前に当該老齢基礎年金を請求していなかったものは、厚生労働大臣に当該老齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が65歳に達したときに、他の年金たる給付(他の年金給付(付加年金を除く。)又は被用者年金各法による年金たる給付(老齢又は退職を支給事由とするものを除く。)をいう。以下この条において同じ。)の受給権者であったとき、又は65歳に達した日から66歳に達した日までの間において他の年金たる給付の受給権者となったときは、この限りでない。
2 66歳に達した日後に次の各号に掲げる者が前項の申出をしたときは、当該各号に定める日において、同項の申出があったものとみなす。
一 70歳に達する日前に他の年金たる給付の受給権者となった者
他の年金たる給付を支給すべき事由が生じた日
二 70歳に達した日後にある者(前号に該当する者を除く。)
70歳に達した日

3・4 (略)


老齢基礎年金の繰下げ申出をしたのが、70歳後であるときには、さかのぼって70歳時に繰下げ申出したものとみなす…という改正ですね。

繰下げ受給をしたときには、年金額が「0.7%×繰下げ月数」分増額されます。ただし、増額率に反映する繰下げ月数は、60月を上限とする。よって、70歳後まで繰下げても、増額という点に関しては意味がありませんが、繰下げ自体は70歳までしか繰下げできないとなっているわけではないので、80歳でも90歳でも好きなところまで繰下げできます。

それを、70歳後に繰下げ申出したときには、70歳にさかのぼって申出したものとみなすわけです。

なお、2項の1号は、基本的には従前からあった規定。たとえば、繰下げ待機中の68歳時に遺族年金の受給権者となったときには、68歳時に繰下げ申出したものとみなすという規定。
ただし、従前は「次項の規定を除き」となっていました。次項は3項ですが、その規定は「繰下げ受給の年金は、繰下げ申出月の翌月分から支給する。」という規定。
たとえば、68歳で遺族年金の受給権を得た人は、68歳までしか繰下げできないかというと、そうではありません。そこからさらに繰下げて、たとえば70歳まで繰下げることができます。ただし、この場合、増額率に反映される繰下げ月数は36月。だって、68歳で繰下げ申出したものとみなされるから。

では、68歳にさかのぼって支給されるかというと、そうはいかない。3項については68歳時に繰下げ申出したものとはみなされないので、支給されるのはあくまでも実際に繰下げ申出をした70歳から。70歳から36月分の増額の年金が支給されるわけです。

で、この「3項の規定を除き」が、なくなりました。ということは、たとえば(遺族とかが関係ない人が)74歳で繰下げ申出したときには、70歳にさかのぼって60月分の増額の年金が支給され、68歳で遺族年金の受給権を得た人が、70歳で繰下げ申出したときには、68歳にさかのぼって36月分の増額の年金が支給される…と読めますが、いかがでしょうか。

ちなみに、1項の「年金たる給付」の部分の改正は、何を意味するのかしら。たしか、国年は「年金給付」、厚年は「年金たる給付」という言い方をしていたと思いますが。その文言を整理しただけかしら。