年金ふわふわ

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遺族年金不支給のケースも?

2013年10月31日 | 新聞連載記事
遺族基礎年金を受給できるのは、死亡した者の子、またはその子と生計を同じくする妻です。妻が死亡した場合は、夫には支給されず、子は父と生計を同じくする間は支給停止なので、結局誰にも支給されません。

これが来年4月1日以降に妻が死亡したときには、夫にも支給されるようになります。今までと比べて支給範囲が広がるのです。

ところが、この改正については、「死亡した者が国民年金3号加入者の場合には支給しない」という、今までなかった新たな条件が設けられるといわれています。
こうなると厚生年金に加入している妻(2号)や、自営業夫婦の妻(1号)が死亡したときには支給されますが、専業主婦やパートで働く妻が死亡したときには、支給されません。

これでは改正の効果が薄れます。さらに、新たな条件が設けられると、改正前であれば支給された遺族基礎年金が、支給されないケースが出てきます。

例えば、共働きだった夫が病気療養のために会社を退職したとします。退職後収入がなくなったこの夫は、厚生年金に加入する妻(国民年金2号加入者)に扶養される3号とされます。
この夫が死亡した場合、今までは子、または妻に遺族基礎年金が支給されていました。ところが、改正後新たな条件が設けられると、支給されなくなってしまいます。

新たな条件の詳細は、まだ明らかになっていません。今までであれば支給されたものが、支給されなくなることだけは避けてもらいたいと思います。


★中日(東京)新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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教えてください

2013年10月26日 | 年金ワンポイント
以下の条文の意味についてご存知の方、あるいはご意見がある方がおられましたら、ぜひ教えてくださいな。

国民年金の「死亡一時金」の裁定請求について定めた国則61条4項は、次のとおりです(以下、部分的に修正あり)。

『受給権者の配偶者、子、父母、祖父母又は兄弟姉妹が、国18条の2(死亡の推定)に規定する状態に該当するものであるときは、本条2項2号に掲げる書類(死亡者の死亡日を明らかにすることができる戸籍など)に代えて、これらの者が行方不明となった事実または死亡した事実を明らかにすることができる書類を添えなければならない。』

これは、たとえば夫が乗っていた船が沈没して、夫の生死が3カ月間わからないときに、「死亡の推定」によって死亡一時金を請求するときには、戸籍などに代えて「死亡の推定」に該当することを明らかにできる書類をつけなさい、ということだと思います。

同じような規定は、遺族基礎年金(国則39条4項)や寡婦年金(国則60条の2 4項)にもあります。

さて、死亡一時金の規定(国則61条4項)ですが、なぜここに「孫」が入っていないのでしょうか?

同項冒頭の「受給権者」は、死亡一時金の受給権者、すなわち裁定請求をする者。また「配偶者、子、父母、祖父母又は兄弟姉妹」は、その請求者から見た死亡者のことだと思います(ひょっとして、この前提が誤っていたら、この質問自体、意味を成しませんが)。

請求者の「孫」が死亡者ということは、請求者は死亡者(孫)の祖父母。死亡一時金は、死亡者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹が、受給権者たり得るのですから、これはありえないことではないですよね。

この場合、孫の死亡が「死亡の推定」であるときには、それに該当することを明らかにできる書類が要ると思うのですが、何故、4項に「孫」が入っていないのでしょうか?

孫が「死亡の推定」に該当することはあり得ない? 孫が「死亡の推定」に該当したときは書類が要らない?

そんなことはないと思うのですが…なぜでしょう。

医療費負担限度額見直し

2013年10月24日 | 新聞連載記事
厚生労働省は先日、医療保険の「高額療養費」制度の見直し案を、社会保障審議会に示しました。これは、今年の夏に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告に沿った、年金や医療保険の改革項目の一つです。

高額療養費は、病院の窓口で支払った自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、限度額を超えた額が払い戻される制度です。

例えば、協会けんぽに加入する50歳の会社員は、医療費の3割を自己負担します。医療費が1カ月に100万円かかったとすると、窓口で30万円支払うわけです。

一カ月当たりの自己負担には、所得区分に応じた限度額が定められています。この会社員が一般所得者だとすると、限度額は約8万円。限度額を超える約22万円は、協会けんぽに請求することによって、高額療養費として払い戻されます。

協会けんぽや国民健康保険の自己負担限度額は、所得に応じて3つに区分されています。今回は複数の見直し案が示されました。いずれも、区分を細分化し、所得が高い人の限度額を引き上げ、所得が低い人の限度額を引き下げるものです。

見直し案の一つは、一般所得者が3つに細分化され、上位所得者に近い人は、現在約8万円とされている限度額が約12万円に引き上げられます。

70歳以上の人の自己負担限度額は、若い人よりも低くなっています。今回は、現在の限度額に据え置く案と、所得が高い人の限度額を引き上げる複数の見直し案が示されました。


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夫と子の遺族年金

2013年10月17日 | 新聞連載記事
来年4月1日以降に妻が死亡した場合は、夫に遺族基礎年金が支給されます。この改正は遺族厚生年金にも影響を与えます。

妻が死亡したとき夫が55歳以上だと、夫に遺族厚生年金が支給されます。55歳未満の夫には遺族厚生年金は支給されず、これについては改正もありません。

妻が死亡して、例えば55歳の夫と15歳の子どもが残された場合の遺族年金は、死亡日が来年3月31日までなのか、あるいは4月1日以降なのかによって、次の通り取り扱われます。なお、夫の老齢厚生年金の支給年齢を63歳とします。

【妻が来年3月31日までに死亡した場合】
遺族厚生年金は、子が18歳年度末に達するまで、子に支給される。その後、一時的に支給停止された後、夫に60歳から支給される。子は遺族基礎年金を受給する権利を得るが、父(夫)と生計を同じくしている間は停止されるので、結局、この場合は誰にも支給されない。

【妻が来年4月1日以降に死亡した場合】
遺族厚生年金と遺族基礎年金は、子が18歳年度末に達するまで、夫に支給される。その後、一時的に支給停止された後、遺族厚生年金が60歳から再び夫に支給される。

なお、どちらの場合も、夫の63歳以降の遺族厚生年金は、老齢厚生年金と支給調整され、老齢厚生年金のほうが多ければ一般的には受給しません。

遺族厚生年金は、年金額も支給期間も改正前後で変わりありませんが、夫に支給されるのか、子に支給されるのかの違いがあります。


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妻が死亡した場合の遺族基礎年金

2013年10月11日 | 新聞連載記事
消費税率の来年4月引き上げが本決まりとなったことに伴い、遺族基礎年金を受給できる者の範囲を見直す時期も、正式に来年4月1日と決まりました。

遺族基礎年金は、国民年金の加入者などが死亡したときに支給される年金です。受給できるのは、今までは「死亡した者の妻または子」とされていました。
子は、原則として18歳になった年度の3月31日までが対象。おおむね高校生以下の子どもです。妻は年齢にかかわらず受給できますが、子と生計を同じくしていることが条件です。死亡した人に条件に該当する子どもがいなければ、遺族基礎年金は誰にも支給されません。

妻が死亡して夫と子どもが残された場合、夫はそもそも受給できない人です。子どもは受給する権利を得ますが、父と生計を同じくしている間は支給停止です。この場合は結局、遺族基礎年金は誰にも支給されません。

来年4月1日、受給できる者が「死亡した者の配偶者または子」と変わります。妻が来年4月1日以後に死亡したときには、夫は遺族基礎年金を受給できるのです。
夫は妻と同じように、年齢にかかわらず受給できますが、子と生計を同じくしていることが条件です。子は夫(父)に受給権があるという理由で、また父と生計を同じくしているという理由で支給停止です。

なお、遺族基礎年金も遺族厚生年金も、受給できる者とされるには、収入要件があります。妻・夫にかかわらず、年収が850万円以上ある者は、原則として受給することはできません。


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