年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
風の吹くまま気の向くまま 日々の出来事をつづる

自営業者の年金保険料控除

2015年10月29日 | 新聞連載記事
11月上旬、税金の申告の際に使う「国民年金保険料控除証明書」が、自営業者などの国民年金1号加入者に送られてきます。

今年払った保険料は、今年の税金に対する社会保険料控除として、その全額を所得から控除できます。今年3月までの保険料額は月額15,250円、4月からは15,590円なので、年間約186,000円です。

仮に、所得税と住民税を合わせた税率が20%だとすると、この保険料額の申告で、37,000円ほど税金が安くなります。ただし、税金がかかるほどの所得がない人にとっては、控除のメリットはありません。控除証明書は、1号加入者本人の名前で届きます。妻や子供の保険料を、夫や親が払った場合は、払った人に対する税金の控除に使えます。

自営業者は、厚生年金に加入する会社員と比べ、老齢年金額が十分とは言えません。自営業者が個人で老後に備える年金としては、生命保険などの個人年金や国民年金基金、それに個人型確定拠出年金などがあります。

それぞれにメリット、デメリットがあり、保険料控除の最高額も異なります。個人年金は最高で年間4万円。国民年金基金と個人型確定拠出年金は、保険料の上限が合わせて月額68,000円までとされ、その全額を控除できます。仮に最高額を控除できれば、その額は年間816,000円になります。税率が20%とすると、163,000円ほどの節税効果となります。

被用者年金一元化セミナーin名古屋

2015年10月27日 | 年金講座・研修・セミナー
本日は…も? 宣伝です。

11月15日に名古屋で「一元化セミナー」をやります。

一元化に関しずっと疑問に思っていた点について、ようやく解決の糸口がつかめたので、その話を中心に。

あと、いつも時間切れでおざなりになっちゃう障害と遺族についてもやろうかなと思っています。

ご興味がある方はぜひお申し込みください。


報酬と在職年金停止額

2015年10月22日 | 新聞連載記事
年金情報が流出して基礎年金番号が変更された人のうち、在職年金を受給している人にこの10月、間違った年金額が支給されたというニュースがありました。

老齢厚生年金の受給年齢を過ぎた後も、厚生年金の加入者として勤めていると、報酬に応じて年金額が一部もしくは全部支給停止されます。いくら停止されるかは月々の月給額ではなく、標準報酬月額と過去1年間の標準賞与額を12で割った額との合計額で決まります。

標準報酬月額は毎年4月、5月、6月に支払われた月給額によって決め直され、9月から翌年8月までの1年間使われます。残業や欠勤などによって月給額が上下しても、基本給が変わるなど大きな変動がない限り、標準報酬月額は1年間変わりません。

例えば65歳前、年金月額10万円の人が、標準報酬月額30万円、賞与がないという状況で勤めていると、年金は6万円停止され、支給されるのは4万円です。この人の標準報酬月額が9月から28万円に下がると、9月分の年金から停止額は5万円になります。標準報酬月額が下がったので停止が減り、支給額が5万円に増えるのです。今回は、基礎年金番号の変更時期と在職年金の停止額変更時期が重なって、混乱が起きたと思われます。

標準報酬月額は保険料や年金額の基にもなり、決定や変更されたときは会社を通じて本人に通知されることになっています。自分の標準報酬月額は、自分で把握しておきたいものです。

繰り上げ繰り下げの受給総額

2015年10月16日 | 新聞連載記事
62歳から特別支給の老齢厚生年金を受給できる人を例にして、老齢厚生年金と老齢基礎年金を、<A>本来の年齢から受給した場合、<B>60歳から繰り上げ受給した場合、<C>70歳から繰り下げ受給した場合の受給総額を比べてみます。

老齢厚生年金を年額120万円、老齢基礎年金を年額78万円として、65歳(男性)の平均余命の84歳までの期間で比較します。

<A>本来の年齢から受給
・老齢厚生年金 120万円×22年(62歳~84歳)=2,640万円
・老齢基礎年金  78万円×19年(65歳~84歳)=1,482万円 合計4,122万円

<B>60歳から繰り上げ受給
・老齢厚生年金 120万円×88%×24年(60歳~84歳)≒2,534万円
・老齢基礎年金  78万円×70%×24年(60歳~84歳)≒1,310万円 合計3,844万円

<C>70歳から繰り下げ受給
・老齢厚生年金 120万円×100%× 3年(62歳~65歳)=  360万円
・老齢厚生年金 120万円×142%×14年(70歳~84歳)≒2,386万円
・老齢基礎年金  78万円×142%×14年(70歳~84歳)≒1,551万円 合計4,297万円

繰り下げ受給は総額が一番多く、年金額が増額されるのも魅力ですが、65歳から5年間は年金収入がありません。84歳前に死亡すれば受給総額は少なくなります。
繰り上げ受給は総額が一番少なく、長生きすればするほどその差はさらに拡がります。ただし、生活のためには繰り上げ受給もやむを得ないというケースもあります。
すべての人に有利な受給方法はありません。年金事務所などで自分に合った受給方法を相談してください。

老齢年金いつから受給するか

2015年10月08日 | 新聞連載記事
今年度60歳になる男性の老齢厚生年金は、62歳から支給されます。これを、「62歳から受給すると損をする。受給開始を先延ばししたほうが得になる」と思っている人がいます。これは65歳から支給される年金の繰上げ受給や繰下げ受給のことで、62歳から支給される年金には当てはまりません。

65歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は、60歳から65歳になるまでの任意の時点から「繰上げ受給」をすることができます。ただし、前倒しした期間に応じて年金額が減額されます。

この逆に、66歳から70歳になるまでの任意の時点から「繰下げ受給」をすることもできます。このときは、受給を先延ばしした期間に応じて年金額が増額されます。

年金額だけに限って言えば、減額される繰上げ受給は損、増額される繰下げ受給は得というわけです。ただし、これは65歳からの年金の話です。この例の男性に62歳から65歳になるまでの3年間支給されるのは、「特別支給の老齢厚生年金」という繰下げ受給ができない年金です。

受給開始を先延ばしして、例えば64歳のときに請求しても、それ以後62歳から受給したときと同じ額が支給されます。また、62歳からの過去2年間分の年金も同じ額でさかのぼって支給されます。

必ず62歳から受給しなければならないわけではありませんが、年金額については受給開始を先延ばししても意味がないということです。