年金ふわふわ

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年金機能強化法案を読む(14)任意未納期間をカラ期間に

2012年07月30日 | 年金ワンポイント
ありました! ありました!!

26日のアップの続きです。そもそも任意加入者は、すべての規定について1号か? ということは、さておき。

たとえば旧法時代、サラリーマン(厚年加入者)の夫がいる妻は、国年は強制加入ではなく任意加入の対象ですよね。で、任意加入しなければ、その期間がカラ期間(合算対象期間)になります。

任意加入して保険料を納めれば、その期間はもちろん納付済期間。

最悪なパターンは、任意加入して保険料を納めなかった場合。その未納期間は現在は単なる未納期間。受給要件の25年にもカウントされないし、もちろん年金額にもなりません。

国附7条の改正は、この任意加入しながら未納となった期間を、カラ期間にしようという改正です。

でも、この国附7条の改正(26日のアップを見てね)だけで、とくに旧法時代の任意加入者の未納期間がカラ期間になるとは思えんが。う~~む、と悩んでおったのですよ、わたしは。人知れず。

この答えが見つかりました!

年金機能強化法案の附則。たとえば、この年金機能強化法案が今年成立すると、平24改正法附則とでも呼ばれるようになるんでしょうが、その附則の11条に次のようにあります。

第十一条
昭和六十年国民年金等改正法第一条の規定による改正前の国民年金法附則第六条第一項の規定による被保険者であった期間(昭和六十年国民年金等改正法第一条の規定による改正前の国民年金法第五条第三項に規定する保険料納付済期間及び六十歳以上であった期間を除く。以下この項において同じ。)を有する者に係る当該被保険者であった期間は、国民年金法附則第九条第一項の規定を適用する場合にあっては、第四号施行日において、合算対象期間に算入する。

この中の附則6条1項ってのが、旧法国年の任意加入の規定です。で、その任意加入者であった期間(納付済期間と60歳以上の期間を除く)は、カラ期間ですよ…という規定です。納付と60歳以上を除く、任意加入者であった期間といっているのですから、未納期間であってもカラ期間ということですよね! 

あ~すっきりした。勝手に悩んで、勝手にすっきり。

年金機能強化法案を読む(13)任意未納期間をカラ期間に

2012年07月26日 | 年金ワンポイント
附則7条(被保険者期間に関する特例)
<現在の条文>
1 第1号被保険者でなかつた期間のうち附則第5条第1項第一号又は第三号に該当した期間(第二号被保険者又は第三号被保険者であった期間及び60歳以上であつた期間を除く。以下「合算対象期間」という。)を有する者に対する第10条第1項の規定の適用については、当該合算対象期間は、被保険者期間とみなす。
2 (略)

<改正案の条文>
1 附則第5条第1項第一号又は第三号に該当した期間(第二号被保険者又は第三号被保険者であった期間、保険料納付済期間及び60歳以上であつた期間を除く。以下「合算対象期間」という。)を有する者に対する第10条第1項の規定の適用については、当該合算対象期間は、被保険者期間とみなす。
2 (略)

えっと、これはですねえ、国民年金に任意加入しながら保険料を納めなかった期間を、未納期間ではなくカラ期間にしようという改正案です。

たとえば旧法時代、夫が厚生年金加入者だと、妻は国民年金の任意加入対象者ですね。任意加入しなければカラ期間になります。任意加入して保険料を納めれば、もちろん納付済期間です。

ところが、任意加入をしておきながら保険料を納めなかった期間は、現在は単なる未納期間です。これを、未納期間ではなくカラ期間にしましょうというわけです。

カラ期間を入れて25年あれば老齢基礎年金がもらえるという規定は国附9条。「納付+免除=25年未満の者は、納付+免除+カラ(合算対象期間)=25年以上あれば、26条ただし書きに該当しないものとみなして、老齢基礎を支給しますよ」という規定です。

ただし、9条では単に合算対象期間といっているだけ。細かい説明はありません。んじゃ合算対象期間ってなに? という規定がこの附7条。「附5条1項一号と三号に該当した期間が合算対象期間ですよ」といっています。

附5条は任意加入者の規定。1項一号は60歳前に老齢厚生や退職共済を受けることができる者。今だと、坑内員や船員の特例で60歳前から老齢年金がもらえる人ですね。三号は海外在住の日本人です。

これに該当して2号加入者・3号加入者でない人は、国民年金に任意加入できますよと、附5条ではいっているわけです。で、附7条でその任意対象だった期間を合算対象期間という…と定義づけているのです。

なお、旧法の任意対象期間がカラ期間になるという規定は60改8条。コレコレの期間は、附9条については合算対象期間に算入する。となっています。

さて、ここからが本題。現在の規定では、冒頭に「1号加入者でなかった期間のうち」とあります。任意対象で任意加入しなかった期間は、1号加入者でなかったのですから当然、合算対象期間になります。任意加入した期間は1号だったのですから、合算対象期間になりません…と書きかけて、ホンマにそうか? と。

附5条(任意加入)の10項に、「任意加入被保険者は、87条の2(付加保険料)については1号とみなし、任意加入被保険者としての加入期間は、5条2項(納付済期間の定義)については1号としての被保険者期間と、49条(寡婦年金)から52条の6(死亡一時金)まで、附9条の3(旧令共済)および附9条の3の2(短期在留外国人の脱退一時金)については1号としての被保険者期間と、それぞれみなす」と規定されています。

付加保険料については1号とみなすから、任意加入者は付加保険料を納めることができるわけですが、このように規定されているということは、他の規定については1号とはいえないということ?

もし、そうであったら、任意加入者は、現在の附則7条の「1号でなかった期間のうち」でいうところの1号に、そもそもあたるの? あたらないの?


20歳前障害に「その傷病により」という規定がない理由

2012年07月12日 | 年金ワンポイント
7月2日のアップに対して、takaさんが次のコメントを寄せてくれました。takaさんありがとうございます。

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30条の4第1項において「その傷病により」が規定されていない理由として、「複数の障害を併合して初めて2級」に該当する場合に、受給権を発生させるためではないかと推測します。

複数の障害が単独では2級に該当しない場合、「その傷病により」の要件をつけると、併合して2級に該当していても障害年金が支給されないこととなるためだと思います。

ちなみに、第2項には、「(同日【初診日】において被保険者でなかったものに限る)」との規定がありますが、第1項にはこの規定がありません。

この理由も、20歳前障害で厚年3級の障害年金受給者が、さらに20歳前の障害により、併合すると2級に該当する場合に、2級の障害基礎年金の受給権を発生させる根拠が必要だからだと思います。
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複数の障害を併合して初めて2級に該当するケースについては、国30の3に「基準障害」の規定が置かれています。ただし、この規定では「基準障害(後発の障害)」について初診日要件や納付要件が必要です。

複数の障害が、共に20歳前の被保険者でないときの障害である場合には、国30の3では対応できません。そこで、30の4(20歳前障害)の1項については、「その傷病により」と規定していないのではないか。

なるほど。すばらしい。勉強になります。

また、takaさんのコメントの後段は、もし1項に「初診日において被保険者でなかった者に限る」という規定があると、20歳前の2号(厚年加入者)であるときの前発障害と、20歳前の被保険者でないときの後発障害があるときは、前発障害を併合することができないので、併合して2級に該当したとしても、2級の障害基礎が発生しないことになるから。

これまた、勉強になります。ちなみにこれ、前後の障害が逆だと、国30の3による対応が可能なので、前後はこの順番ですよね?

takaさんのコメントからも感ずるのですが、20歳前障害についてはどんなケースでも救うぞ! ということでしょうか。それを、こんな短い条文の中に納めてあるとしたら、たいしたもんですね。

でも、20歳前に初診日がることは証明しなくちゃいけないのよね。それも書面で。病院(医師)のハンコがついたのを。

時が経っちゃうと、その証明がとれなくて、泣いてる人が大勢いると思うのですが、この書面原理主義は何とかならんもんでしょうか。

20歳前障害は何でもアリ!?

2012年07月02日 | 年金ワンポイント
忙しさにかまけてブログの更新をサボっているあいだに、社会保障と税の一体改革法案が衆議院を通ってしまいました。

ま、それはさておき(おいちゃイカン)。疑義照会を読んでいたら、「へっ!?」と思ったことがあったので、今日はその話。

障害基礎年金の認定日請求(国30)や事後重症(国30の2)には、「初診日において加入者である者が、その傷病により2級以上に該当したときに支給する」と規定されています。

あたりまえですね。ところが、20歳前障害には、この「その傷病により」という文言がない!(国30の4)。ちなみに、20歳障害でも、事後重症については「その傷病により」という文言があるので(同条2項)、これは、いわば20歳前障害の認定日請求によるものだけ(同条1項)ですけどね。

1項をごくごく簡単に言い替えると、「病気をしたりケガをしたりして、その初診日に20歳前であった者が、20歳になった日に(※)2級に該当してたら障害基礎年金を支給しちゃうよ」となります。

通常の認定日請求や事後重症だったら(※)のところに、「その傷病により」とあるのが、ないんです。

わたしゃ当然に、20歳前に病気やケガをして、「その病気やケガで」2級以上にならなきゃイカンと思ってたんですが、これだと、その病気やケガであろうがなかろうが、何でもいいので2級以上であればよい…てことになりませんか?

20歳前に医者にかからんかった人なんて、おらんだろう。でもって、20歳になったときに、べつにその病気・ケガでなくてもいいので、2級以上だったらOK?

う~~む、どうなんでしょう?