年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
風の吹くまま気の向くまま 日々の出来事をつづる

年金機能強化法案を読む(12)届出義務者

2012年05月26日 | 年金ワンポイント
第105条(届出等)
1 (略)
2 (略)
3 受給権者又は受給権者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者は、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働大臣に対し、厚生労働省令の定める事項を届け出、かつ、厚生労働省令の定める書類その他の物件を提出しなければならない。
4・5 (略)

国民年金の受給権者の届出の規定。下線部分が付け加わります。

3項の省令とは、国則18条の「現況届」、19条の「氏名変更届」、20条の「住所変更届」、21条の「振込口座変更届」、22条の「証書再交付申請」です。

昨今、年金をもらっていた親が死亡しても死亡を届け出ず、子が勝手に現況届を提出して親の年金を受給し続けるといった事件が起こるので、受給権者本人だけにとどまらず、その家族にも届出義務を課そうということでしょうか。

世も末ですな。

年金機能強化法案を読む(11)申請免除

2012年05月20日 | 年金ワンポイント
第90条(申請全額免除)
1 次の各号のいずれかに該当する被保険者等から申請があったときは、厚生労働大臣は、その指定する期間(カッコ内略)に係る保険料につき、既に納付されたものを除き、これを納付することを要しないものとし、申請のあった日以後、当該保険料に係る期間を第5条第4項に規定する保険料全額免除期間(カッコ内略)に算入することができる。ただし、世帯主又は配偶者のいずれかが次の各号のいずれにも該当しないときは、この限りでない。

一 当該保険料を納付することを要しないものとすべき月の属する年の前年の所得(1月から厚生労働省令で定める月までの月分の保険料については、前々年の所得とする。以下この章において同じ。)が、その者の扶養親族等の有無及び数に応じて、政令で定める額以下であるとき。
(以下、略)


申請免除が認められた場合、さかのぼって免除される期間は、現在は最大で1年間ですが、これを2年間にしよう…という改正案です。

申請免除のサイクルは7月~翌年6月の1年間。学生特例のサイクルは4月~翌年3月の1年間。昔は、免除申請した以後の期間しか免除されなかったものが、16年改正によって、現在はたとえば直近の7月までさかのぼって免除されます。

免除は所得によります。一号の下線部分は、現在は「前年の所得」とされています。現在は、さかのぼりの免除期間は最大で1年ですから、これでいいわけですね。

それが、さかのぼりの免除期間が最大2年になると、単純に「前年の所得」というわけにはいかないので、「免除月の属する年の前年の所得」と改正するのでしょう。

なお、さかのぼり免除期間を最大2年とするという点は、条文からは読み取れません。そもそも、現在の、直近の7月まで最大で1年という点も、条文には書いてありません。

これは、1項冒頭の「厚生労働大臣は、その指定する期間…」で対応しているのでしょうね。

この改正案については、申請全額免除(90条)だけではなく、申請多段階免除(90条の2)、学生納付特例(90条の3)について同じです。若年者納付猶予(16改19条)は?

若年者納付猶予は、すでに(16年改正で創設されたときから?)「前年の所得」じゃなくて「免除月の属する年の前年の所得」となっているのですねえ…

ということに、今はじめて気づきました。へえ~知らなかった。

年金機能強化法案を読む(10)付加保険料の納付期限

2012年05月16日 | 年金ワンポイント
国87条の2、付加保険料の第4項の改正案です。

<現在>
4 第1項の規定により保険料を納付する者となったものが、同項の規定による保険料を納期限までに納付しなかつたときは、その納期限の日に、国民年金基金の加入員となったときは、その加入員となった日に、前項の申出をしたものとみなす。

<改正案>
4 第1項の規定により保険料を納付する者となったものが、国民年金基金の加入員となったときは、その加入員となった日に、前項の申出をしたものとみなす。

87条の2の1項は、1号は付加保険料を納める者となることができますよ、という規定。

2項は、付加保険料は本体のほうの保険料の納付が行われた月についてのみ納付できる。つまり、本体の保険料を滞納して付加保険料だけ納めるということはできませんよ、という規定。

3項は、いつでも付加保険料納付者でなくなることができますよ、という規定。

そして、4項が上の規定です。

現在は、付加保険料を納期限(翌月末)までに納めないと、付加保険料納付者でなくなる申出をしたものとみなされます。本体のほうの保険料は、翌月末の納期限を過ぎても、過去2年以内のものは納められますが、付加保険料はこの規定でもって翌月末の納期限を過ぎてしまうと納められなくなってしまうのです。

それを、本体の保険料と同様に、過去2年以内のものだったら納めることができるようにしよう、という改正案です。

とくに感想は…ないですねえ。

年金機能強化法案を読む(9)法定免除

2012年05月11日 | 年金ワンポイント
昨日アップした、「前納していた人が免除に該当したときには、前納保険料が還付される」という改正案について、takaさんから次のコメントをいただきました。takaさん、いつもコメントありがとうございます。

『還付は強制なのでしょうか? 還付じゃなくて、そのまま納付扱いにしておいてもらうことはできないのでしょうか?』

申請全額免除、申請多段階免除、若年者納付猶予には、免除の取消規定があります。16年改正で設けられたんでしたっけ、忘れましたが。

免除を申請した後で、「もういいや、納付しよう」と思ったとき、あるいは全額免除を申請した後で「半額免除に切り替えたいな」と思ったときには、現在受けている免除を取り消せるわけです。

ちなみに、学生特例には取消規定が見当たりません。学生は申請免除の対象から除かれていることと関係あるのかしらん。

それはさておき、取消規定がある免除の人が、前納保険料をそのまま納付扱いにしておいてほしければ、免除を取り消せばいいですね。まあ、こんな人は、そもそも免除を申請しなきゃいいわけですが。

ところが、法定免除には取消規定がありません。法定免除の要件に該当した人は、「わしゃ金があるから保険料払う」っていっても免除なんですね。もし、納付したいときには、追納で払うことになります。

また、前納した人が法定免除の要件に該当したときは、「前納はそのままにしといて」っていっても、取消規定がないので嫌でも還付となってしまいます…

…は、ちょっとどうなの? ということからでしょうか、今回、法定免除にも次のとおり取消規定が新設されます。

第89条(法定免除)
2項(新設)
前項の規定により納付することを要しないものとされた保険料について、被保険者又は被保険者であつた者(次条から第90条の3までにおいて「被保険者等」という。)から当該保険料に係る期間の各月につき、保険料を納付する旨の申出があったときは、当該申出のあった期間に係る保険料に限り、同項の規定は適用しない。

法定免除に該当した人が、前納してある保険料をそのままにしておいてもらいたいときは、この規定でもってその期間の法定免除を取り消してもらうのでしょうね。

ちなみに、申請免除は取消も「申請」。法定免除の取消は「申出」です。申請免除は、申請が認められてはじめて免除だから、取消も申請。法定免除は、要件に該当すれば当然に免除だから、取消は申出なんでしょう。

年金機能強化法案を読む(8)法定免除

2012年05月10日 | 年金ワンポイント
第89条(法定免除)
1項<現在の規定>
被保険者(第90条の2第1項から第2項までの規定の適用を受ける被保険者を除く。)が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、その該当するに至った日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料は、既に納付されたもの及び第93条第1項の規定により前納されたものを除き、納付することを要しない。

1項<改正案>
被保険者(第90条の2第1項から第2項までの規定の適用を受ける被保険者を除く。)が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、その該当するに至った日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料は、既に納付されたものを除き、納付することを要しない。

法定免除の第1項の改正案です。上が現在の規定、下が改正案です。

現在は、法定免除に該当しても「既に納付された保険料」と、93条による「前納された保険料」については免除しませんよという規定。これが、改正案では「前納された保険料」が削除されています。

たとえば、10月に法定免除に該当したとすると、その前月の9月分以降の保険料が免除されますが、この人がもし4月に1年分の前納をしていたとすると、現在の規定では翌年3月までは免除となりません。これを、免除しましょうという改正案ですね。

現在は、「私は9月分から免除なんだから、前納した保険料のうち、9月~翌年3月までの保険料を還してちょうだい」といっても、規定上還付できないものを、還付可能にしようということです。

この改正案は「法定免除」にとどまらず、90条の「申請による全額免除」、90条の2の「申請による多段階免除」、90条の3の「学生特例」、16改19条の「若年者納付猶予」について同様です。