年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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事後重症による障害年金

2015年09月24日 | 新聞連載記事
前回、障害年金の受給のための初診日の証明について、10月から一部運用が変わることを紹介しました。これまで医師の証明が必要でしたが、それが取れない場合は、第三者の証明と補足資料によって判断されるようになります。今回は、なぜ医師の証明が取りづらくなるのかを考えてみます。

障害年金は、障害の程度が一定以上の場合に支給されます。その程度は1~3級の等級に分かれており、障害基礎年金は2級以上、障害厚生年金は3級以上で支給されます。

等級に該当しているかは、原則として病気やけがの初診日から1年6カ月後の「障害認定日」時点の障害の程度で判定されます。認定日に等級に該当し、時間を置かずに障害年金を請求すれば、医師の初診日の証明は問題なく得られるでしょう。

ただ、認定日に等級に該当しなくても、その後、障害が徐々に悪化することがあります。何年もたってから初めて等級に該当しても、それが65歳前であれば、65歳前に請求することによって障害年金を受け取ることができます。これを「事後重症」による障害年金と言います。

事後重症は珍しくありません。初診日から10年以上たって障害年金を請求する人もいます。この場合、同じ病院に通い続けていれば、診療記録は保存されます。しかし、別の病院に変わると記録が廃棄されることもあるので、医師の証明が取りづらくなってしまいます。このような人にとって、今回の見直しは重要な意味を持ってくるのです。

初診日証明見直し

2015年09月17日 | 新聞連載記事
障害年金を請求する際は、その障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた「初診日」を証明しなければなりません。

公的年金は保険という仕組みを使っているので、受給するには「加入者であること」、そして「保険料を納めていること」が条件となります。障害年金は、初診日に国民年金や厚生年金の加入者であり、初診日前の加入期間の保険料を一定程度納めていると受給できます。初診日が証明できないとこれらの条件が判断できないので、障害年金は支給されません。

20歳以後に初診日がある場合、今までは医師の証明が必要とされてきました。同じ病院に通院し続けていれば問題ありませんが、診療記録の保存期間は法的には5年なので、病院を転々として初診日から5年以上経って請求する場合などは、医師の証明が取れないケースがあるため、これが見直されることとなりました。

今後は医師による証明が取れない場合は、友人や同僚などといった第三者の証明と、それを補足する診察券や健康診断記録、転院先の医師の証明などの参考資料があれば、それによって初診日を判断するとされます。この新たな取り扱いは、来月から始まる見込みです。

三親等内の親族は第三者とされず、補足資料が必要なので、これによって全ての人が有利となるわけではありませんが、今後請求する人はもちろん、過去に医師の証明が取れず障害年金を受給できなかった人も、見直しが本決まりとなったら年金事務所に相談してください。

専業主婦と個人型DC

2015年09月10日 | 新聞連載記事
現在、国会で審議中の「確定拠出年金(以下DCとする)」の制度改正が本決まりになると、専業主婦が個人型DCを利用できるようになります。これは専業主婦にとって朗報なのでしょうか。

今後は公的年金の給付水準が引き下げられるため、これ以外の自助努力が必須となります。個人型DCは、個人が任意で老後準備に利用できる制度です。自営業者や企業年金のない会社に勤めている会社員が利用できますが、これが専業主婦や公務員、企業年金加入者にも拡げられようとしています。

個人型DCは、預貯金や生命保険などの個人年金と比べ、税制メリットが大きいのが特徴です。掛金は上限がありますが、その全額が所得から控除できるので、その分税金が安くなります。ただし、国民年金などの保険料と違って、本人の所得からしか控除できないので、税金がかかるほどの所得がない専業主婦にとってこのメリットはありません。

個人型DCは、銀行などの取扱い窓口ごとに用意された投資信託や保険などの運用商品に掛金を預けますが、利息に対する税金が実質上かからないのも特徴です。また、受け取る場合も公的年金等控除や退職所得控除が使え、これらは専業主婦にとってもメリットです。

ただし、60歳になるまでは任意で取り崩すことができず、運用に失敗しても自分の責任です。自助努力のパーフェクトな方法はありません。自分と家族に一番合ったものを見つけてください。

在職停止額が変わる

2015年09月03日 | 新聞連載記事
最近は老齢年金の受給年齢を過ぎても勤め続ける人が増えています。この場合、給与収入(月収)によって年金の支給が停止されることがあります。

老齢厚生年金が停止されるのは、受給者が厚生年金加入者として在職している場合。65歳前は給与と年金額の合計が「28万円」を超えると停止が始まり、65歳以後は「47万円」を超えると、支給停止が始まります。共済年金に加入する公務員として在職している場合は、給与にかかわらず老齢厚生年金は停止されません。

公務員の退職共済年金は、65歳前も65歳以後も、受給者が共済年金加入者として在職していると28万円基準により停止され、厚生年金に加入する会社員として在職していると47万円基準により停止されます。

今年10月、会社員と公務員の年金が厚生年金に一元化されると、在職による支給停止も、65歳前は28万円基準、65歳以後は47万円基準という厚生年金方式に一本化されます。一元化前から老齢年金を受給している人にも、この停止方式が適用されます。

例えば、公務員として在職している老齢厚生年金受給者は、停止されなかった年金が停止されるケースが出てきます。停止額が増えるのか減るのか、あるいは変わらないのかは、受給する年金や在職状況によりさまざまです。

10月分の年金は12月に振り込まれます。10月に入ったら、年金事務所や共済組合で一元化後の停止額を確認しておきましょう