年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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厚年保険料 10月天引き分から引き上げ

2013年08月29日 | 新聞連載記事
厚生年金の保険料率が9月から引き上げられるため、10月の月給から天引きされる保険料が少し上がります。

厚生年金の保険料率は2004年(平成16年)の改正以後、毎年9月に0.354%ずつ引き上げられています。今年の8月までは16.766%でしたが、9月からは17.120%になります。

保険料は月給や賞与に保険料率を掛けた額。なおこの場合、実際の月給額などを使うのではなく、月給は「標準報酬月額」に、賞与は「標準賞与額」に置き換えられます。

例えば標準報酬月額が30万円だとすると、8月までの保険料は50,298円、9月からは1,062円上がって51,360円になります。保険料は会社と本人が半分ずつ負担するので、本人負担分は8月までが25,149円、9月からは25,680円です。

本人負担分の保険料は会社が給料から天引きし、それに会社負担分を合わせて国に納めます。月給から天引きできるのは、前月分の月給に対する保険料です。保険料率は9月に上がりますが、9月分の保険料は10月の月給から天引きされるので、天引きされる保険料が上がるのは10月からです。

賞与に対する保険料は、支払いごとに直接その賞与から天引きされます。仮に9月に賞与が支払われると保険料率は17.120%、天引きされる本人負担分は標準賞与額の8.560%です。

2004年改正では、保険料率引き上げは2017年(平成29年)9月の18.300%で上限とされましたが、はたしてこの約束は守られるのでしょうか。


★中日(東京)新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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マクロ経済スライドによる給付水準調整のルール変更?

2013年08月23日 | 新聞連載記事
公的年金の年金額は、社会全体の平均賃金や物価の動きに応じて上げ下げされます。これによって「年金の価値」、すなわち給付水準が一定に保たれるのです。

少子高齢化の下で給付水準を従来のレベルに保とうとすると、支え手である現役世代の負担が増大します。そこで、少子化によって減少する負担力と見合うレベルまで、給付水準を引き下げることになっています。

給付水準の引き下げは、賃金や物価が上昇したときの年金額の引き上げ幅を調整、すなわち抑制することで行われます。これを「マクロ経済スライド」といいます。

例えば調整率(抑制率)が0.9%だとすると、賃金などが1%上昇しても、年金額は0.1%しか引き上げられません。

また、調整の結果マイナスになるときは、前年度と同額までの調整とされます。例えば賃金などが0.5%上昇したとき、0.5%引き上げたポイントから0.9%調整(抑制)すると、年金額はマイナスになりますが、このときは前年度と同額に据え置かれます。

さらに、賃金などがマイナスになったときは、調整は行われません。例えば賃金などが0.5%下落すると、年金額は0.5%引き下げられますが、そこからさらに調整されることはありません。

この給付水準の調整ルールが、変更される可能性がでてきました。先ごろ発表された社会保障制度改革国民会議の報告は、将来の給付水準を少しでも高くするため、調整を確実に進めるよう求めています。これはルールを変更して、調整の結果マイナスになるときも調整を実行し、賃金や物価下落に応じてマイナスされた年金額についても調整する、ということでしょう。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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厚生年金の在老と共済年金の在老

2013年08月20日 | 年金ワンポイント
社労士会の研修のため「被用者年金一元化法」を勉強していたとろこ、次のような改正カ所に引っかかりました。

<厚法46条:本来老厚の在職停止>
【現行】
1項 老齢厚生年金の受給権者が被保険者である日若しくはこれに相当するものとして政令で定める日(厚令3条の6:資格喪失日)が属する月において…略…停止する。
6項 1項及び前項の規定により老齢厚生年金の全部又は一部の支給を停止する場合においては、36条2項の規定は適用しない。

【改正後】
1項 老齢厚生年金の受給権者が被保険者である日(厚生労働省令で定める日を除く。)が属する月において…略…停止する。
6項 (改正なし)

6項は、厚生年金における在職停止については通常の支給停止、すなわち「停止事由該当月の翌月から停止事由消滅月まで停止する」という、36条2項の規定は適用しないという規定。では、いつからいつまで停止するのかというと、1項のとおり、「被保険者である日が属する月、若しくは資格喪失日が属する月」について停止される。

たとえば、3月31日退職、4月1日喪失の場合、4月は被保険者である日は1日もありませんが喪失日があるので在職停止されます。

これが、改正後は「資格喪失日」が消えてしまっています。新たに付け加わる「省令で定める日」の省令は、もちろんまだ制定されていないと思いますが、これは「除く」規定なので影響ないと思います。単純に「喪失日」が消えるということだとすると、この例では4月は在職停止されないことになる?

じつは、他にも1カ所気になるところがあって、在職年金を受給していた人が退職した場合の「退職改定」について、現行は「資格喪失日から1月を経過したら改定する」という規定ですが、これが「退職日から1月を経過したら改定する」と改正されるように読めるのです。

これらから、『ひょっとして、喪失日がある月については在職停止しなくなるのかな!?』と思った次第。先ほどの例でいうと、4月は停止されない月になるのかしら?と。

さらにさらに、『これはひょっとして、共済年金は喪失日がある月は停止していなくて、そっちに合わせるのかしら』とも思い、共済法を見てみたら、共済の在職停止は厚生年金と違って次のような規定でした(国共79条)。

1項 組合員である間は支給しない
2項 前項にかかわらず次の期間があるときは、その期間については、在職年金を支給する

「組合員である間」って、いつからいつまでなんだろう。2項の在職年金を支給するという期間もよくわからない。ちなみに、共済には「通常の支給停止の規定を適用しない」という規定が見当たらない。ということは、共済の在職年金は、停止事由該当月の翌月から停止事由消滅月まで停止しているのか。となると、3月31日退職、4月1日喪失の場合は、4月も停止されるが。

と、あれこれ思いをめぐらしている昨日、今日ですの。

<スキルアップ研修>厚生年金基金が消える!?

2013年08月18日 | 年金講座・研修・セミナー
まいどおなじみ「年金スキルアップ研修」の開催案内です。

皆さまご承知のとおり「厚生年金基金」の改正法が成立しました。施行は来年4月といわれています。
本改正は、原則として基金制度の廃止をめざすものです。基金がなくなったら加入企業・加入者・受給者はどうなるのか?

研修では、企業年金にお詳しい「道券克則氏」に、改正の全容と今後の見通しについて解説していただきます。

・日 時…2013年10月27日(日)13:30~16:30
・講 師…道券克則氏 CFP・DCアドバイザー
・会 場…ウインクあいち11階・1101号室
・受講料…すっきり年金講座修了者3,000円、その他一般6,000円
・申 込…メールにて nenkin@happylife.ne.jp


年金課税強化で負担増?(社会保障制度改革国民会議の報告から)

2013年08月16日 | 新聞連載記事
これまでの年金をはじめとした社会保障制度は、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心という構造でした。先ごろ公表された社会保障制度改革国民会議の報告書では、全世代型の社会保障への転換を図るとし、負担の在り方をこれまでの「年齢別」から「負担能力別」に切り替えるとしています。

報告書の年金分野で挙げられた「高所得者の年金給付の見直し」は、高齢者も所得が高い人は、応分の負担をしてもらうということでしょう。具体案はこれから検討されますが、直接的に高所得者の年金を減額するのではなく、例えば年金課税を見直すことによって、負担を求められることが考えられます。

現在、遺族年金や障害年金は非課税ですが、老齢年金には税金がかかります。この場合、年金受給額全体に税金がかかるのではありません。受給額から「公的年金等控除額」を除いた残りが雑所得とされ、さらにその雑所得から基礎控除や扶養控除などを除いた額に税金がかかります。

例えば年金受給額が月額25万円、年額300万円という場合、65歳以上の人の公的年金等控除額は120万円です。この人に控除対象の配偶者がいて、介護保険料などを年10万円払っているとすると、課税対象所得は94万円。税金は所得税と住民税を合わせて、おおよそ14万円です。

仮に公的年金等控除額が今より少なくなると、課税対象所得が増えて税金が増えます。どの程度の人が高所得とされるのかわかりませんが、税制の見直しを含んで、負担が増えることが考えられます。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

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