年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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給付水準引き下げルール見直しか?

2014年10月30日 | 新聞連載記事
公的年金の給付水準引き下げを急ぐため、ルール見直しの動きが出てきました。

公的年金の年金額は、67歳までは社会全体の平均賃金の動きに応じて上げ下げされ、68歳以後は物価の動きに応じて上げ下げされます。賃金スライドは給付水準(所得代替率)を一定に保つ仕組み、物価スライドは年金生活者の購買力を維持する仕組みです。

年金は加入者から集めた保険料によって支払われています。少子化によって現役加入者が減少することから、現在の給付水準を維持することは難しくなっています。そこで今後、賃金・物価上昇時に年金額の引き上げを抑制し、給付水準が引き下げられます。これが「マクロ経済スライド」です。

現在のマクロのルールでは、賃金・物価が少しだけ上昇し、それに応じて少しだけ上がった年金額に対してマクロによる抑制をかけると前年度額を下回ってしまうときは、抑制は前年度額までとされます。また、賃金・物価が下落して年金額が下がったときは、抑制は実施しなとされています。いわゆるデフレ時には、給付水準は引き下げられないのです。

給付水準は少子高齢化のピーク時に、保険料総額と年金支給総額がバランスするところまで引き下げられます。現在のルールでは最終的な給付水準がより低下するとして、ルール見直しの動きが出てきました。

見直し案は、賃金・物価が少しだけ上昇したとき、前年度額を下回ってもマクロによる抑制を完全実施し、賃金・物価下落に応じて年金額が下がったときも、そこからさらにマクロによる抑制を実施するというものです。

どうも、この見直しは現実のものとなりそうです。今後の賃金・物価の見通しはつきませんが、少なくとも当分はそう大きな上昇はないのではないでしょうか。そうすると、賃金・物価が少し上がって、年金額は前年度より下がる…という状況になるような気がします。

企業年金減少

2014年10月23日 | 新聞連載記事
この10月、「確定拠出年金」の掛け金の上限が引き上げられました。企業型において、他の企業年金に加入していない者の掛金が51,000円から55,000円に、他の企業年金にも加入している者の掛金が25,500円から27,500円に、それぞれ引き上げられました。個人型の掛金は、引き上げはありません。

確定拠出年金は企業年金の一種。企業年金は退職金を年金として支払う制度で、他に「厚生年金基金」(厚年基金)や「確定給付企業年金」などがあります。

日本の企業の多くには退職金制度があります。一時金で支払うのが一般的ですが、年金方式で支払う企業年金を実施している企業もあります。代表的なものに「適格退職年金」(適年)がありました。高度成長期に生まれ、多くの企業で実施されていましたが、社会の変化に伴って2012年3月末に廃止されました。厚年基金は積み立て不足が放置できない段階に達したため、今年から10年かけて法的に整理されます。

確定拠出年金と確定給付企業年金は10年ほど前に作られた、比較的若い企業年金です。適年や厚年基金からの移行を含め、徐々に実施企業が増えていますが、企業年金全体としては実施企業が減っています。

今まであった退職一時金や企業年金を企業が勝手に廃止することはできませんが、退職金は月給と違い、法的な支払い義務はありません。企業年金を実施する企業の減少は、適年廃止の影響といわれます。厚年基金の法的整理は、これに拍車をかけるかもしれません。

公的年金は今後、給付水準が引き下げられ、その代わりに企業年金の重要性が増します。現役時代は退職金、特に企業年金について知らない人が大半です。自分と家族の生活を守るため、会社の担当部署に尋ねるなど情報を積極的につかんでおきたいものです。

被用者年金一元化・その8

2014年10月22日 | 被用者年金一元化
被用者年金一元化に伴う厚年法の改正事項を、アトランダムに取り上げています。今日は共済年金について。

退職共済年金、障害共済年金、遺族共済年金は、厚生年金相当部分に加えて「職域加算部分」があります。また、公務災害による障害共済年金、遺族共済年金は、民間の労災保険に相当する、いわば上乗せ給付があります。

一元化後、退職共済の「職域加算部分」、障害共済と遺族共済の「公務災害上乗せ部分」は、共済法に新設される「退職年金(年金払い退職給付制度)、公務障害年金、公務遺族年金」に引き継がれます。

ところで、障害共済と遺族共済の「職域加算部分」は、どこへいったのでしょう?

退職年金(年金払い退職給付制度)は、中身が2つに分かれています。1つは「終身年金」、もう1つは10年または20年の「有期年金」です。有期年金は一時金選択も可能で、受給者が死亡した場合は残余の一時金が遺族に支給されます。

これが遺族共済の職域加算部分に代わるものと見えなくもありませんが、現行と同等の給付水準とは思えません。また、障害共済の職域加算部分に代わる給付は、見当たりません。この両者、消えちゃったんでしょうか?

【一元化セミナーin東京】http://nenkin.happylife.ne.jp/seminar/2014/01/post-4.html

保険料納付期間の延長案

2014年10月16日 | 新聞連載記事
厚生労働省は先日、年金改革を議論する社会保障審議会年金部会に、国民年金保険料の納付期間を延長する案を示しました。強制加入期間を延ばすことによって年金額を増額し、給付水準の減少を緩和することが目的です。

現在の強制加入期間は、20歳から60歳になるまでの40年間。厚生年金に加入する会社員は、20歳前や60歳以後も国民年金2号加入者とされますが、この期間は老齢基礎年金額には反映されません。

国民年金加入者として保険料を納めた期間が40年あると、老齢基礎年金は年額772,800円(2014年度)。満額といわれるこの額が、現在の最高額です。

見直し案は、60歳から65歳になるまでの5年間を強制加入期間とするものです。保険料納付期間は45年となり、年金額は96,600円増えて、869,400円になるというもくろみです。

今は、これから審議が始まる段階で何も決まっていませんが、見直し案では女性の支給開始年齢引き上げに合わせ、納付期間を1年ずつ延ばすとしています。

女性の老齢厚生年金は現在60歳から支給されていますが、1958年度生まれの人から支給年齢が1歳ずつ引き上げられ、66年度以後生まれの人は65歳支給となります。これに合わせて、納付期間を1年ずつ延ばすという案です。

58年度生まれが60歳になるのは2018年度。そう遠い話ではありません。男性は引き上げスケジュールが女性より早いので、58年度生まれは63歳支給です。

被用者年金一元化・その7

2014年10月12日 | 被用者年金一元化
被用者年金一元化に伴う厚年法の改正事項を、アトランダムに取り上げています。

一元化に伴って来年10月1日以降、公務員は厚生年金の被保険者とされます。公務員が働く国、地方公共団体は、もともと厚生年金の適用事業所。よって公務員はもともと厚生年金の被保険者ですが、今までは適用除外されていました。この適用除外の規定が削除され、被保険者とされるのです。

<厚6条:適用事業所> ※改正なし
1 次の各号のいずれかに該当する事業所、若しくは事務所、又は船舶を適用事業所とする。
  一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であって、常時5人以上の従業員を使用するもの
    イ~タ (省略)
  二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であって、常時従業員を使用するもの
  三 (以下省略)

<厚9条:被保険者> ※改正なし
適用事業所に使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

<厚12条:適用除外> ※一号削除
次の各号のいずれかに該当する者は、厚9条(強制被保険者)及び10条1項(任意単独被保険者)の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
  一 国、地方公共団体又は法人に使用される者であって、次に掲げるもの
    イ 恩給法19条に規定する公務員、及び同条に規定する公務員とみなされる者
    ロ 法律によって組織された共済組合の組合員
    ハ 私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者
  二(以下省略)

来年10月1日において改正前の適用除外に該当していた者、つまりその時点で現役の公務員は、その日に厚生年金の被保険者資格を取得します。ただし、70歳未満の人だけです。

<一元化改正法附則5条>
昭和20年10月2日以後に生まれた者(施行日において70歳未満の者)であり、かつ、施行日(平27.10.1)の前日において国家共済の組合員、地方共済の組合員、又は私学共済の加入者であった者であって、施行日において改正前の厚12条一号に掲げる者(適用除外に当たる公務員等)に該当するもののうち、厚6条1項又は3項に規定する適用事業所であるものに使用されるものは、施行日に、厚生年金保険の被保険者の資格を取得する。

ちなみに、これらの公務員は来年9月30日に、共済法の長期給付(共済年金)に関しては退職したものとみなされます。

<一元化改正法附則30条他>
施行日の前日(平27.9.30)において、改正前の国共済法の長期給付に関する規定の適用を受ける組合員(昭和20年10月1日以前に生まれた者(平27.10.1において70歳以上の者)で施行日において組合員であるものに限る。)は、改正前の長期給付に関する規定の適用については、施行日の前日に退職をしたものとみなす。

【一元化セミナーin東京】http://nenkin.happylife.ne.jp/seminar/2014/01/post-4.html