年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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65歳以後の遺族年金

2015年11月26日 | 新聞連載記事
前回は若い会社員が死亡したときの遺族年金の話でした。今回は老齢年金を受給する65歳以上の夫婦で、夫が死亡したとき妻が受給できる遺族年金について確認します。

夫は会社勤めが長く老齢厚生年金が月額(以下、同じ)10万円、老齢基礎年金は満額に近い6万円とします。妻は老齢厚生年金が2万円で、老齢基礎年金は5万円。合計23万円の年金と、足らない分は貯蓄を取り崩しながら暮らしている夫婦を例にします。

夫が死亡して妻に支給される遺族厚生年金は、夫の老齢厚生年金の4分の3に相当する額なので、この妻の場合は7万5千円です。これに1万5千円の寡婦加算がついたとすると、遺族厚生年金は9万円です。なお、寡婦加算は生年月日などの条件があるので、必ず加算されるとは限りません。

遺族年金と老齢年金は、65歳になるまでは本人が選択するどちらか一方の年金しか受給できません。65歳以後は、まず老齢年金が支給されます。そして、遺族厚生年金は老齢厚生年金を上回る額だけが支給されます。

この妻の遺族厚生年金は寡婦加算を加えた9万円ですが、支給されるのは老齢厚生年金を上回る7万円だけです。これと老齢年金が支給されるので、妻の年金額は合計で14万円です。夫婦二人暮らしが妻一人となったからといって、生活費が半分で済むわけではありません。年金事務所などで万一の場合の年金受給額を確認しておきましょう。

遺族年金知った上でライフプラン

2015年11月19日 | 新聞連載記事
年金というと老後のことと思いがちですが、今回は若い会社員が死亡した場合の遺族年金について確認してみましょう。

厚生年金に加入する35歳の夫が死亡して、32歳の妻と3歳の子供が残されたとします。夫は過去、厚生年金に12年加入して、その間の平均月収が40万円だったとすると、遺族厚生年金は月額約(以下同じ)41,000円です。

夫は国民年金の2号加入者でもあったので、この場合は遺族基礎年金も支給されます。その額は84,000円。遺族厚生年金と合わせると125,000円です。生活費の基礎的な部分はまかなえるかもしれませんが、これだけで生活できる金額とは思えません。

遺族基礎年金は子供が18歳の誕生日を過ぎた年度末、つまり高校を卒業するまで支給されます。その後は支給額が減少するので、遺族厚生年金に49,000円の中高齢寡婦加算額が加算されます。妻に支給される遺族厚生年金は、加算を加えて90,000円となります。

寡婦加算は妻が65歳になると加算されなくなり、その後は加算のない遺族厚生年金だけになります。妻には65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されますが、遺族厚生年金は老齢厚生年金を上回る額だけが支給されます。

遺族年金でいくらカバーされるのかを知った上で、足らない部分を個人で備えるというのがライフプランニングの基本的な考え方です。

正社員以外の社会保険加入

2015年11月12日 | 年金ワンポイント
厚生労働省から先週公表された「就業形態の多様化に関する調査」によると、労働者のうち4割がパートや派遣といった正社員以外で働いているそうです。ついに4割か、という感じですね。

調査では社会保険の加入状況なども調べられていて、正社員以外の方々のうち、雇用保険には7割近くの人が加入していますが、健康保険と厚生年金に加入しているのは5割少々となっています。雇用保険と健保・厚年は適用基準が異なるので当然といえば当然ですが、むしろ5割もの人が健保・厚年に加入しているんだなと、ちょっと意外でした。

健康保険と厚生年金は、1日または1週間の勤務時間と1カ月の勤務日数が両方とも正社員の4分の3以上だと、給料額にかかわらず加入者とされます。

加入者とされない人で年収130万円未満の人は、健康保険に加入する家族がいればその被扶養者になることができ、厚生年金に加入する配偶者がいれば国民年金の3号加入者とされます。いわゆる社会保険の上での扶養家族とされ、保険料の負担はないわけです。

このような家族がいない人、また家族がいても年収130万円以上の人は国民健康保険の加入者とされ、国民年金の1号加入者とされます。この場合は、その人自身に保険料の負担が生じます。

健康保険の加入者になれば、病気やケガで会社を休んで給料が支払われない場合、1年6カ月にわたって月給の3分の2の額の傷病手当金が支給されます。これは、被扶養者になったときや国保に加入したときは受けられない給付です。また、厚生年金の加入者になれば、国民年金の1号や3号と比べ、障害、老齢、死亡時の年金額が多くなります。

自分で加入、非加入を選択できるケースは少ないでしょうし、加入すれば保険料が天引きされて給料の手取りが減りますが、万一の保障は加入した方が手厚いと言えます。

65歳以後の在職年金

2015年11月05日 | 新聞連載記事
会社員期間に基づく老齢厚生年金は、生年月日に応じて受給年齢が引き上げられています。今年度54歳以下の男性、49歳以下の女性は、65歳受給となります。

(余談)当初、書き始めは単に「厚生年金は…」としたのですが、「おっと。49歳以下の女性が65歳支給となるのは、会社員期間に基づく老齢厚生年金だよな」と。一元化されたので、こういうのも気をつけなきゃ。

最近の統計(厚労省・国民生活基礎調査・平26)によれば、男性の場合、60歳代前半で約77%、65歳以後も約36%の人が働いています。男女にかかわらず、厚生年金の加入者として働いている人は、65歳以後も給与に応じて年金が減額されます。

減額されるのは、賞与込みの月収と年金額の合計が47万円を超える場合。超える額の2分の1に当たる年金が減額されます。65歳以後は、老齢基礎年金も受給できますが、これは減額されません。減額の計算に使う年金額は、老齢厚生年金のうち加給を除いた報酬比例部分の額です。

たとえば、報酬比例部分が月額10万円の人が、月収47万円で働くと、合計額は57万円。年金は47万円を超える10万円の2分の1に当たる5万円減額されて、受給できるのは5万円です。

報酬比例部分が月額10万円の場合は、月収37万円までは合計額が47万円を超えないので、年金は減額されず全額受給できます。65歳以後、仮に働いたとしても、年金が減額されるほどの収入がある人はそう多くないのが現実でしょう。

厚生年金に加入できるのは、最長で70歳になるまでです。65歳以後は厚生年金加入者として働けるケースは少ないと思いますが、年金収入のみとなる後期高齢期に備えるため、加入できるうちは加入しておくというのも一つの考え方です。