年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
風の吹くまま気の向くまま 日々の出来事をつづる

改正によって厚年・健保加入者とされるパートの条件

2012年12月27日 | 新聞連載記事
パート労働者は、厚生年金と健康保険がある企業に勤めていても一般的に加入者とはされません。これが、今年の8月に決まった改正によって、パート労働者のうち一定の人が加入者とされることになりました。実施は2016年10月からです。

企業で働く人が厚生年金と健康保険の加入者とされるかどうかは、給与額にかかわらず労働時間と労働日数で決められます。同じ職場で働くいわゆる正社員と比べて、一日又は一週間の所定労働時間と一カ月の所定労働日数が、両方とも4分の3以上の人は加入者とされます。これを4分の3基準といいます。

今回決まったのは、4分の3基準を下回る人のうち次の条件にすべて該当する人を加入者にするというものです。

①一週間の所定労働時間が20時間以上
②月額賃金が8万8千円以上
③1年以上の雇用が見込まれる

なお、学生は条件に該当しても加入者とはされません。また、4分の3基準による加入者数500人以下の企業は、当面対象から除かれます。

近年、派遣やパートといった非正規雇用の増大が社会問題化しています。企業が正規雇用を非正規雇用に切り替える大きな要因は、半額を負担しなければならない社会保険料の存在です。

今回は経過措置によって中小企業が対象外とされたため、新たな加入者は25万人程度と見込まれますが、これを3年後に見直すとも明記されています。仮に、ほとんどのパートが加入者とされるようになったら、社会保険料負担は非正規雇用への切り替えの要因ではなくなります。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

【ご注意】本文下の広告は、gooブログに自動掲載される広告で、本ブログの書き手とは何ら関係ないものです。

給付水準の引き下げとは実質価値の低下

2012年12月20日 | 新聞連載記事
現在支給されている特例水準の年金額が三段階で引き下げられ、2015年4月から本来水準の年金額に切り替わると、給付水準の引き下げが始まります。そもそも、給付水準の引き下げとはどういうことなのでしょうか。

例えば、引き下げ開始の15年に年額240万円の年金で生活している夫婦がいるとします。その後、物価が年1%ずつ上がるとすると、20年後の物価、つまり生活に必要な物やサービスの値段は15年と比べて22%上昇しています。

通常であれば、このときには年金額も物価スライドによって22%引き上げられ、約293万円になっているはずですから、この夫婦は15年と同じ生活ができます。

給付水準の引き下げは、この年金額の引き上げ幅を抑制することです。通常であれば年1%の引き上げ幅が仮に0・1%だとすると、20年後の年金額は15年より2%多い245万円です。

年金額はわずかとはいえ増えています。ただし、245万円を物価上昇率22%で15年の価値に置き換えると、その額は約201万円にしかなりません。

給付水準の引き下げは04年の改正によって決められました。そのときの見通しによると、少子高齢化のピークを乗り切るには、給付水準を16%程度引き下げる必要があるとされました。240万円を16%引き下げたものが約201万円です。

給付水準の引き下げは、老齢年金だけではなく障害年金や遺族年金にも適用され、現在の加入者世代、受給者世代を問わず、すべての人に関わる問題です。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

【ご注意】本文下の広告は、gooブログに自動掲載される広告で、本ブログの書き手とは何ら関係ないものです。

マクロ経済スライドによる給付水準引き下げがいよいよ始まります

2012年12月17日 | 新聞連載記事
現在支給されている年金額は、以前物価が下がったときに引き下げを見送った特例的な年金額です。これを三段階で引き下げて、2015年4月からは本来の年金額を支給することが解散直前の国会で決まりました。

公的年金の年金額は受給者の過去の加入期間などに応じて計算され、受給開始以後は物価の動きに応じて上げ下げされます。

例えば受給開始時に200万円だった年金額は、その後物価が10%上昇したときには10%引き上げられて220万円とされます。これを物価スライドといいます。

もし物価スライドされないとすると、年金生活者は物価が上昇するにつれて徐々に生活が苦しくなります。年金額の価値を維持する物価スライドは、個人年金には見られない公的年金の特徴です。

ところで年金財政は今後ますます苦しくなると見込まれることから、04年の改正によって、加入者の保険料負担を引き上げる一方で年金の給付水準を引き下げることが決定済みです。

給付水準の引き下げは毎年の物価スライドによる引き上げ幅を抑制し、一定期間かけて行われます。例えば、物価が10%上昇しても年金額の引き上げを10%未満に抑えることを一定期間続けるのです。金額が減るわけではありませんが、年金額の価値は徐々に低下します。

給付水準の引き下げは本来の年金額について行われるため今まで実施されていませんでしたが、今回、本来の年金額が支給されることが決まったので、いよいよ15年度から始まることになります。

★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

【ご注意】本文下の広告は、gooブログに自動掲載される広告で、本ブログの書き手とは何ら関係ないものです。

職域加算は別途の退職年金に移行されます

2012年12月06日 | 新聞連載記事
先月の解散直前の国会において、公務員の退職手当を民間並みに引き下げ、退職共済年金の職域部分に代わる新たな年金制度を設けるという法律が可決成立しました。

公務員が老後受給する退職共済年金には、民間の会社員が受給する老齢厚生年金に相当する部分の他に、職域年金と呼ばれる三階部分の年金があります。

8月に被用者年金一元化法が成立し、公務員も厚生年金に加入して老齢厚生年金を受給することとなります。厚生年金には職域部分はないので、その代わりとして新たな年金制度が設けられることになったのです。

新たな制度は、労使折半で保険料を負担する積み立て方式の年金制度です。半分は10年又は20年の有期年金、半分は終身年金とされ、有期年金は一時金で受け取ることも認められます。

イメージとしては民間会社の企業年金に似た制度で、積立不足の発生を抑えるため市場金利に応じて予定利率を柔軟に見直すキャッシュバランスプランとされます。

過去の公務員期間については職域年金が支給され、切り替え後の期間が新たな制度の対象となるので、完全に新たな制度に切り替わるのは何10年も先の話です。

また、今回の見直しにともなって、公務員の退職手当と職域年金部分を合わせた給付水準が、民間会社員の退職金と企業年金を合わせた水準を上回っていることが明らかになり、これを民間会社員並みに引き下げることも決まりました。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

【ご注意】本文下の広告は、gooブログに自動掲載される広告で、本ブログの書き手とは何ら関係ないものです。

未支給年金を受給できる人の範囲が広がります

2012年12月04日 | 新聞連載記事
今年の8月に決まった年金改正によって、未支給年金を受給できる人の範囲が広げられることになりました。

未支給年金とは、受給者などが死亡したときに未払いだった年金のことです。

年金は偶数月の15日に、その前の2カ月分が支払われます。例えば、12月15日に10月分と11月分が支払われるわけです。

また、年金は死亡した月の分までが支払われます。例えば、11月に死亡したときには11月分までの年金がもらえるわけですが、10月分と11月分は12月に支払われる予定だったので、死亡者はこの2カ月分の年金をもらっていません。

この年金は、死亡者と生計を同じくしていた一定の遺族が受給できます。これを未支給年金といいます。

また、年金をもらえた人がその年金を請求せずに亡くなったときにも、遺族が請求して受給することができます。これも未支給年金です。

今まで未支給年金をもらえる人は、死亡者の配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹までの人でしたが、今回の改正によってこれ以外の三親等内の親族まで範囲が広げられました。

例えば、夫が先に亡くなって夫の両親の面倒をみてきた妻は、両親から見れば子ではなくて子の配偶者に当たるため、今までは両親が死亡したときの未支給年金を受給できませんでしたが、これが改正によって受給できるようになるわけです。

なお、この改正は改正法公布日から2年以内の法律で定める日から施行され、施行日以後に受給者などが死亡した場合に適用されます。


★中日新聞生活面掲載「みんなで年金」から

【ご注意】本文下の広告は、gooブログに自動掲載される広告で、本ブログの書き手とは何ら関係ないものです。