年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
風の吹くまま気の向くまま 日々の出来事をつづる

来年以降の年金改正の見通し

2014年12月26日 | 新聞連載記事
今年は5年に1度の、公的年金の財政検証の年でした。前提が甘過ぎるという批判があったものの、将来の年金給付は、おおむね現役世代の平均手取り収入の50%程度が維持されるという結果でした。

政府の年金審議会は先月、最近の議論を整理した資料を公表しました。来年以降の制度改正につながるもので、次のような項目が挙げられています。

<パートに対する適用拡大>2016年10月、一定のパート労働者が健康保険と厚生年金の加入者とされることが決まっています。この適用範囲をさらに広げていこうという案です。実現の可能性が高いと思われます。

<高齢期の就労と年金受給>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことを前提とし、保険料拠出期間や受給開始時期、在職老齢年金制度などを見直す案です。

<年金額改定方法の変更>賃金や物価が下がって年金額が引き下げられたときも、そこからさらにマクロ経済スライドによる引き下げを実施するという案。いわゆる、デフレ下におけるマクロ経済スライドの方法の見直しです。これも実現の可能性が高いと思われます。

<働き方に中立的な制度>労働時間や収入額を調整することによって、結果的に加入・非加入、扶養・被扶養が選択できてしまう現行制度を見直す案です。国民年金の3号加入者制度にも関わる課題です。

最終的にどの項目が、どう改正されるか分かりませんが、いずれも私たちの生活に影響することばかりです。今後の動きに注目していきたいと思います

被用者年金一元化・その9

2014年12月22日 | 被用者年金一元化
被用者年金一元化に伴う共済法・厚年法の改正事項を、アトランダムに取り上げています。今日は職域加算について。

一元化されて公務員に支給される厚生年金には、共済年金の特徴であった職域加算がありません。
一元化前に支給事由が生じた共済年金は、一元化後も一元化前の規定に基づいて支給されます。これには職域加算が含まれているので、これに該当する人は問題ないですわね(一元化買改附36条他)。

問題は一元化後に支給事由が生ずる人。この人は、一元化前の公務員期間については、一元化前の規定に基づく職域加算が支給されます。これを便宜的に「①旧職域加算」と呼ぶことにします。また、一元化後の公務員期間については、職域加算に代わる新たな制度として設けられる退職年金が支給されます。これを便宜的に「②退職年金」と呼ぶことにします。

①も②も共済の独自給付。厚生年金とは別個です。②はいわゆる年金払い退職給付制度ってやつ。労使折半で保険料を負担する、事前積立方式の年金制度。キャッシュバランスを使うんですって。企業年金と同じですね。

で、①の根拠条文が見当たらなかった。一元化改附36条にそれらしき規定があるのですが、これは次のとおり一元化前日時点で、特退共あるいは特老厚の受給権がある人について。

<一元化改附36条>
施行日(平27.10.1)前の国共済組合員期間を有する者が、次の各号のいずれかに該当する者であるときは、改正前の国共法の退職共済年金のうち、改正前の国共77条2項各号に定める金額(退職共済年金の職域加算部分)に相当する給付の支給要件に関する改正前の国共法の規定は、これらの者について、なおその効力を有する。
  一 施行日の前日において改正前の国共附12条の3(通常の)又は12条の8(繰上げ減額の)の規定による(特別支給の)退職共済年金の受給権を有している者
  二 施行日の前日において改正前の厚附8条の規定による(特別支給の)老齢厚生年金の受給権を有している者(前号に掲げる者を除く。)

一元化時点で受給権がない人についても、一元化前の公務員期間については職域加算が支給されるはずなんだけど…? と、ずーっと気になっていたんです。
それを見つけました。一元化改附36条は、「国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平24法律96号)」によって次のように改正されます。ちなみに、改正後の36条は、2項以降に職域加算の取り扱いがずらずらっと規定されていますが、今日は省略ね。

<一元化改附36条>
改正前の国共法の退職共済年金のうち、改正前の国共77条2項各号に定める金額(退職共済年金の職域加算部分)に相当する給付、及び改正前の国共法の障害共済年金のうち、改正前の国共法82条1項二号に掲げる金額(公務外の障害共済の職域加算額)に相当する給付の支給要件に関する改正前の国共法の規定は、改正前の公務員期間を有する者(施行日において改正前の退職共済年金(特退共を除く。)又は障害共済年金の受給権者を除く。)について、なおその効力を有する。
  一 (削る)
  二 (削る)

要するに、一元化前の公務員期間がある人については、その期間に基づく職域加算を支給しますよ、ってこと。ふ~~。厄介だなあもう。一元化法の改正条文を、別の改正法で改正しているわけです。こういうこと、止めてほしいっす。

【一元化セミナーin大阪】http://nenkin.happylife.ne.jp/

児童扶養手当差額支給へ

2014年12月18日 | 新聞連載記事
この12月から「児童扶養手当」の仕組みが一部見直され、年金、あるいは障害年金に付く子の加算と、手当の関係が差額支給の方式へと変わりました。

児童扶養手当は、ひとり親家庭などに支給される手当です。今までは、子を養育している祖父母が老齢年金を受給している場合、あるいは子が遺族厚生年金を受給している場合などは、年金額にかかわらず手当は支給されませんでした。見直し後は、年金額が児童扶養手当より少ないときに差額が支給されます。

両親がいても、その一方が一定の障害状態にある場合は、児童扶養手当が支給されます。例えば父親が障害基礎年金を受給していると、その年金には子を対象とする加算額が付きます。
こうした場合、今までは児童扶養手当か、子の加算か、どちらかを選択して受給する仕組みでした。子の加算の方が多ければ加算を、手当の方が多ければ手当を受給していたのです。
これについても、見直し後は差額支給とされます。障害年金の子の加算よりも児童扶養手当が多ければ、その差額が支給されます。加算よりも手当が少なければ、支給されません。

児童扶養手当や子の加算は、子の人数で額が異なり、手当は所得によっても額が変わります。手当も子の加算も受給するには手続きが必要です。今回の見直し対象になると思われる方は、手当については市町村に、子の加算は年金事務所に問い合わせてください。

被用者年金一元化セミナーin大阪

2014年12月16日 | 年金講座・研修・セミナー
「被用者年金一元化セミナーin大阪」のお知らせです。
名古屋、東京で大好評を博した…と講師が勝手に思い込んでいるセミナーです。

一元化は考えれば考えるほどあちこちに影響が及んで興味が尽きません。
今も日本法令さんの雑誌用に、繰上げ受給と一元化について書き始めましたが、頭の中が????でパンパンです。

大阪初お目見え。皆さまどうぞお申し込みのほど、よろしくお願いします。




賞与と社会保険

2014年12月11日 | 新聞連載記事
12月は賞与のシーズンです。厚生年金と健康保険の保険料や給付は、以前は月給を基本に据えていましたが、2003年(平成15年)4月以降は賞与に対しても保険料がかかり、それが給付にも反映されます。

月給は標準報酬月額に置き換えられ、賞与は支払い額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に置き換えられます。元になる月給と賞与は、税金と社会保険料控除前の額です。

保険料は標準賞与額に対してかかりますが、その額には上限が設けられています。厚生年金はひと月あたり150万円、健康保険は1年度あたりの累計で540万円が上限です。上限を超える賞与には保険料はかかりませんが、給付にも反映されません。

厚生年金も健康保険も、3カ月を超える期間ごとに支払われるものが賞与とされます。等間隔で支払われるとすると、年3回までのものが賞与とされ、4回以上支払われるものは標準報酬月額、つまり月給扱いとされます。

賞与は給付に反映されます。厚生年金の年金額は、03年3月以前の加入期間については平均月給に基づいて計算され、03年4月以降の加入期間については賞与込みの平均月収に基づいて計算されます。在職年金の支給停止額は、月給と過去1年間の賞与の月額との合計額によって計算されます。

最近発生している記録問題には、賞与の届出漏れ、届出額の誤りが目立ちます。ねんきん定期便などを利用して、なるべく早い時期に賞与額をチェックしておきましょう。