年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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任意継続被保険者の所得区分

2014年09月25日 | 新聞連載記事
ある社労士さんから、「健康保険の任意継続被保険者が高額療養費を受ける場合、自己負担限度額の所得区分は、任意継続としての現在の標準報酬月額に基づくのでしょうか?」と質問され、答えにウッと詰まりました。

高額療養費は、一カ月の医療費の自己負担が一定限度(自己負担限度額)を超えた場合、超えた額が払い戻される制度です。自己負担限度額は、所得に応じて三つに区分されています。区分の目安となるのが、標準報酬月額(標準報酬)です。標準報酬が53万円以上の者は上位所得者とされます。

標準報酬は社会保険料や給付に反映される、いわば〝月給″に相当する額。会社に在職中、保険料はこの標準報酬に基づいて算定され、月給から天引きされます。

任意継続被保険者は、退職後、退職前の健康保険に任意加入する制度。退職後の任意継続には月給が支払われていません。任意継続の保険料は、退職時の標準報酬に基づいて算定されます。在職中、労使折半負担だった保険料は全額本人負担です。

ただし、退職時の標準報酬には上限があり、全国健康保険協会(協会けんぽ)は、28万円が上限となっています。例えば、退職前に標準報酬が65万円だった者が退職して任意継続になると、保険料の基とされる標準報酬は28万円になるわけです。

では、この者が高額療養費を受ける場合、自己負担限度額の所得区分は28万円の標準報酬に基づく「一般」とされるのか、あるいは退職時の65万円の標準報酬に基づく「上位所得者」とされるのか、はて?となってしまったのです。

この者は28万円の標準報酬に見合う所得があるわけではなく、退職前の65万円の標準報酬に見合う所得があるわけでもありません。28万円の標準報酬に基づいて保険料を負担しているけれども、それもあくまでも仮想だし…。

結論は、28万円の標準報酬に基づいて「一般」とされるのだそうです。あれこれ考えずに、ごく単純に考えればよかったみたいです。

被用者年金一元化・その4

2014年09月24日 | 被用者年金一元化
被用者年金一元化に伴う厚年法の改正事項を、アトランダムに取り上げています。

改正によって厚年法19条2項が、次のとおりとなります。あ、条文は要約してあります。

<改正前>
被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一カ月として被保険者期間に算入する。ただし、その月に更に被保険者の資格を取得したときは、この限りでない。

<改正後>
被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一カ月として被保険者期間に算入する。ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者(第3号被保険者を除く。)の資格を取得したときは、この限りでない。

ご存知、同月得喪の規定ですね。被保険者期間は資格取得月から喪失月の前月までだけど、取得した月に喪失したときは一カ月としますよ、という規定。ただし書きは、喪失後、同じ月にさらに資格取得したときは、同月得喪の一カ月と取得月の一カ月が重複して二カ月になっちゃうから、そのときは同月得喪一カ月じゃないよ、という意味。

これが上記のとおり改正される。喪失後、同じ月に国年の1号か2号になったときは同月得喪一カ月じゃないよ、と読めます。国年2号は厚年加入者だから、これは要するに改正前と同じ意味だから良しとして、喪失後に国年1号になると、今までは厚年一カ月とされてきたのに、改正後は厚年被保険者期間とされない、ということですよね。ふ~む、なぜでしょう。

共済法に「組合員資格は同月得喪一カ月。ただし喪失後、共済組合員、厚年被保険者、もしくは国年被保険者(2号を除く)の資格を取得したときは、この限りでない。」という規定があります(国共38)。共済は、喪失後に国年1号か3号になると、組合員期間とされないみたいですねえ。これとのすり合わせでしょうか。

でも共済法は、「国年1号か3号になると」なのに、今回は「3号」を除いています。なぜでしょう? わからんことばっかりだわ。だから楽しいのですが。

★★★おわび★★★

申し訳ありませ~ん。改正後の2項のカッコ書きは(第3号被保険者を除く)ではなく(第2号被保険者を除く)です!! 私が改正法を研修のレジュメに落とし込むとき、単純ミスしました。すみません。なので、結局、共済法の規定と同じです。

ただし、何ゆえ国年1号・3号を取得したとき、同月得喪1カ月としないのか?という疑問に変わりはありません。申し訳ありませんでした!


【一元化セミナーin東京】http://nenkin.happylife.ne.jp/seminar/2014/01/post-4.html

来年度の厚生年金の額

2014年09月18日 | 新聞連載記事
厚生労働省は8月、財務省に来年度の予算の概算要求を提出しました。

公的年金は加入者から集めた保険料によって支給されています。ただし、基礎年金の半分は税金で支給されているので、これについて予算の手当が必要です。

予算要求の際には、来年度の年金額が上がるのか、あるいは下がるのかを見込まなければなりません。厚生労働省は今回の概算要求で、来年度の年金額に影響する物価の動きを1.1%上昇、賃金の動きを0.8%上昇と見込みました。マクロ経済スライドによる年金額の引き上げ抑制率は、1.1%の想定です。

物価や賃金に応じて上がり下がりするのは、本来水準の年金額です。本年度の厚生年金の報酬比例部分は、77歳以上の人は基礎年金額と同じように、本来水準を上回る特例水準が支給されています。一方、76歳以下の人は本来水準と特例水準がほぼ同額で、本来水準が支給されています。

本来水準の年金額は、67歳までは賃金に応じて上下し、68歳以後は物価に応じて上下します。ただし、今回の厚生労働省の見込みのように、賃金上昇率が物価上昇率を下回る場合は、年齢にかかわらず全ての人が賃金に応じた改定とされます。

そうなると、厚生年金の報酬比例部分は本年度と比べて0.8%引き上げられますが、来年度の本来水準はマクロ経済スライドによって引き上げが抑制されます。

抑制率は1.1%との想定ですが、来年度の抑制は本年度の特例水準までという歯止めがあります。結局、76歳以下の来年度の報酬比例部分は、物価や賃金が見込み通り上昇しても、本年度と変わらないということです。この点は、本年度、本来水準を上回る特例水準が支給されている77歳以上の人についても同じです。

被用者年金一元化・その3

2014年09月17日 | 被用者年金一元化
takaさん、いつもコメントありがとうございます。

共済には70歳喪失の規定がないので、法律上、昭12.4.1以前生まれの現役組合員がいても不思議ではない。実際にはいないと思いますが、あくまでも法律上の話です。

で、共済は組合員である間は在職停止だから、その昭12.4.1以前生まれの人は在職停止されている。

今般の一元化に伴って、昭12.4.1以前生まれの人を在職停止の対象外にしていた厚生年金の方を、共済の方に合わせたのかなあ、と思ったわけです。

でも、逆に、在職停止だった共済の方を厚年に合わせればいいのにね。

最近、年金部会で次の改正についての議論が始まって、そのテーマの一つに「高齢期における年金受給の在り方」が挙がっています。

takaさんがいわれるとおり、将来的に所得による給付制限を考えていて、その一里塚にしようという魂胆でしょうか。

【一元化セミナーin東京】http://nenkin.happylife.ne.jp/seminar/2014/01/post-4.html

被用者年金一元化・その2

2014年09月14日 | 被用者年金一元化
今朝、ふと考えついて、忘れるといけないので書きますが、一元化に伴って「昭12.4.1以前生まれの者は、70歳以後の在老の対象としない」という、次の平16改附の条項が削除されます。

【平16改附43条】
1 平16改正後の厚46条1項及び5項(本来老厚の在職停止)の規定は、老齢厚生年金(その受給権者が昭和12年4月1日以前に生まれたものに限る。)については、適用しない。
2 平16改正後の60改附78条6項(旧厚の老齢年金の在職停止)の規定は、同項の表の第一欄に掲げる年金たる保険給付(その受給権者が昭和12年4月1日以前に生まれたものに限る。)については、適用しない。

【平16改附41条】
平16改正後の厚27条に規定する(被保険者等の資格の得喪、標準報酬の届出義務がある)事業主は、同条に規定する70歳以上の使用される者(昭和12年4月1日以前に生まれた者に限る。)については、同条に規定する事項を厚生労働大臣に届け出ることを要しない。

70歳以後の在老は、平16改正によって平19.4.1から適用されましたが、その時点で70歳以上だった者には適用されませんでした。それが昭12.4.1以前生まれ。41条は、これらの者は在老の対象にならないから標準報酬などの届出はいらないよ、という規定です。

これが一元化に伴って削除されるので、これらの者は70歳以後の在老の対象とされるのですが、その理由がわからなかった。なんで今頃になって在老の対象にするのか。

で、今朝、ふと思ったんですが、共済には65歳や70歳など、年齢による組合員資格喪失規定が元々無い。現実にはそんな者はいないと思いますが、65歳以後であろうが70歳以後であろうが在職していれば組合員。よって70歳以後は昔から在職停止であった。当然のことながら、昭12.4.1以前生まれの者を対象外とする規定はなかった。

この削除は、それに合わせたのかなあ…と思ったわけです。いかが思われますか?

【一元化セミナーin東京】http://nenkin.happylife.ne.jp/seminar/2014/01/post-4.html