年金ふわふわ

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厚年法37条「未支給の保険給付」について

2015年06月29日 | 年金ワンポイント
わたし今、年金法の条文の本を作ろうと、コツコツ作業しております。無謀にもほどがある? 厚37条の2項で、フト疑問が。

<厚37条:未支給の保険給付>
1 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。
2 前項の場合において、死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であったときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であった者の子であって、その者の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、同項に規定する子とみなす。
3 以下省略

2項は次のようなケースを想定したものと思いますが、この「妻」は「配偶者」でいくないですか?

・夫は再婚。「夫、夫と前妻との間の子、再婚した妻」の3名が一緒に生活している。
・夫が死亡。妻と子は遺族厚年の受給権者となる。子は妻に受給権がある間、支給停止される。
・妻が死亡。子の支給停止が解除される。
・子は死亡した妻の子ではなく、1項によれば未支給年金は支給されないが、2項により未支給年金が支給される。

夫と子の遺族厚生は、平成26年4月の年金機能強化法による改正前は、子が優先。子に受給権がある間、夫は支給停止(改正前の厚66条3項)。支給停止の夫が死亡しても未支給は発生しないので、2項は「妻」で構わない。

でも、26年4月改正以後、夫と子の遺族厚生は夫が優先。夫(配偶者)に受給権がある間、子は支給停止(改正後の厚66条1項。なお3項は削除)。その夫が死亡した場合、未支給が発生する。ところが、たとえば次のケース、現在の「妻」という条文だと、子に未支給年金は支給されないですよね。

・妻は再婚。「妻、妻と前夫との間の子、再婚した夫」の3名が一緒に生活している。
・妻が死亡。夫と子は遺族厚年の受給権者となる。子は夫(配偶者)に受給権がある間、支給停止される。
・夫が死亡。子の支給停止が解除される。
・子は死亡した夫の子ではなく、1項によれば未支給年金は支給されず、2項によっても支給されない。

なお、夫と子の遺族厚生の話なので、この場合の夫は、いうまでもなく妻死亡時に55歳以上の夫。遺族基礎も発生していれば(ふつう発生するけど)、遺族基礎も夫(配偶者)に受給権がある間、子は支給停止。この場合の遺族基礎は、夫が60歳前でも支給される(改正後の厚65条の2後段)。

2項の「妻」は「配偶者」で良いように思いますが…う~ん。わたし、なんか勘違いしてます? 

支給年齢変わらず

2015年06月25日 | 新聞連載記事
会社員の老齢厚生年金と公務員の退職共済年金は、生まれた年度に応じて支給年齢が徐々に引き上げられています。男性は、その支給年齢について、会社員と公務員の差はありませんが、女性は最大で3年の開きが生じています。

例えば、1956年(昭和31年)4月2日生まれの男性は、会社員も公務員も62歳からの支給開始です。一方、女性は、公務員の場合は男性と同じ62歳からの支給開始ですが、会社員は2年早く、60歳から支給されます。

公務員は労働条件に男女差はないとされているため、支給開始年齢に男女差は設けられていません。一方、民間企業に勤める女性は、男性と比べて昇進や昇給の面で不利な実態があることから、それを補うために年金の支給開始年齢の引き上げスケジュールが、男性より遅く設定されているのです。

ところで今年10月、公務員の共済年金が厚生年金に一元化(統合)されます。一元化以降に支給年齢に達する公務員には、退職共済年金ではなく老齢厚生年金が支給されます。56年4月2日生まれの公務員の女性は、62歳から退職共済年金が支給されるはずでしたが、これが老齢厚生年金になるわけです。ただし、支給開始年齢は62歳のままで変わりません。

一元化された後も、公務員に支給される老齢厚生年金は、一元化前の退職共済年金の支給開始年齢を引き継ぐことになっているためです。

標準報酬月額の確認を

2015年06月18日 | 新聞連載記事
毎年7月は、厚生年金と健康保険の「標準報酬月額」を決め直す月です。手続きは会社が行いますが、加入者の保険料負担や受給額に直接影響することですから、その仕組みを理解しておきましょう。

厚生年金と健康保険の保険料は、月給と賞与に一定率を掛けた額です。また、たとえば厚生年金の年金額は加入中の月給と賞与の平均額に基づき、健康保険の傷病手当金は月給の3分の2の額です。このように、月給は保険料や受給額に影響します。

月給は、月々の実際の月給額ではなく、それを数千円から数万円刻みの「標準報酬月額」に置き換えます。標準報酬月額は、4月から6月の3カ月間に支払われた月給の平均額に基づいて決められ、例えばそれが29万円以上31万円未満の範囲であったとすると、標準報酬月額としては30万円とされます。

7月に30万円と決められた標準報酬月額は、基本給が変わるなどしない限り、9月から翌年8月までの1年間使われます。その間に残業や欠勤などによって月給が30万円を超えた月があっても、あるいは30万円を下回った月があっても、保険料や給付は30万円の標準報酬月額に基づくのです。

標準報酬月額は、ねんきん定期便やねんきんネットなどで確認できますが、会社の届出ミスがないとは限りません。実際の月給額とぴったり一致するものではありませんが、あまりにも大きく違っていたら、まずはその理由を会社に訊ね、それでも納得できないときは年金事務所に問い合わせてみましょう。この場合、月給額を証明する給与明細書が手元にあると役に立ちます。

65歳以後の雇用保険加入を検討

2015年06月11日 | 新聞連載記事
現在の雇用保険は、65歳以上の人が新たに就職しても加入者とされませんが、厚生労働省の有識者検討会はこれの見直しを促す報告書を示しました。年金だけでは生活できず、働かなければ生活できない高齢者が増えていることに対応しようということでしょうか。

雇用保険の失業給付は、職を失った会社員に対し、再就職までの生活を支えるために支給されるものです。65歳未満の加入者が離職したときは、加入期間に応じ90日、120日、150日にわたって基本手当を受給できます。

基本手当は定年退職、あるいは定年後の継続雇用が終わって退職した人も受給できますが、65歳以後に退職した人は受給できません。雇用保険の加入者は、同じ会社に勤め続けていると65歳を過ぎても加入者です。この65歳以上の加入者が退職したときに受給できるのは、基本手当の30日分または50日分に当たる一時金です。

65歳以上の加入者とされるのは、65歳前から同じ会社で勤め続けている人です。65歳以上の人が新たに就職しても加入者とされず、その人が退職しても失業給付は受給できません。

昔は65歳以後に就職するような人は少なかったかもしれませんが、最近は定年後も勤め続けることが一般的です。今後は65歳前後まで働く人、働かざるを得ない人が増えてくるでしょう。今回の報告書案は、このような社会の動きを反映するものです。

妻が死亡した場合の遺族年金

2015年06月04日 | 新聞連載記事
今年定年を迎える会社員が、数年前に妻を亡くした際、会社の社会保険担当者に「遺族年金がもらえないか」とたずねたところ、「もらえない」と言われたそうです。実は担当者の勘違いで、この人の場合、遺族厚生年金を受給できます。

妻が死亡したとき、夫が55歳以上だと、夫は60歳から遺族厚生年金を受給できます。なお、去年4月以降に妻が死亡して、高校生以下の子どもが残された場合、夫は遺族基礎年金を受給できますが、この場合は60歳前でも遺族厚生年金を併せて受給できます。

遺族厚生年金の原則的な額は、妻の厚生年金加入期間に基づく報酬比例部分の4分の3。妻の加入期間が短くて、夫の加入期間が長いと、遺族厚生年金額は一般的に老齢厚生年金を下回ります。

遺族厚生年金と老齢厚生年金は、65歳前は受給者がどちらかを選択して受給します。65歳以後は老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金は、老齢厚生年金を上回る額だけが支給されます。

以前は、老齢厚生年金が60歳から支給されていました。同じ60歳から支給される遺族厚生年金が老齢厚生年金より少なければ、ふつうは額の多い老齢厚生年金を選択して受給するので、遺族厚生年金は受給できません。65歳以後も、遺族厚生年金が老齢厚生年金より少なければ、遺族厚生年金は支給されません。

この仕組みは現在も変わりませんが、今は老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられています。冒頭の例の男性は、本年度60歳定年。老齢厚生年金の支給開始は62歳です。となれば、年金額の多い少ないにかかわらず、60歳から62歳になるまでの2年間は、遺族厚生年金を受給することになります。