年金ふわふわ

年金についての執筆やセミナー講師を生業とするFP・社労士が
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保険料率引き上げと給付水準

2015年08月27日 | 新聞連載記事
厚生年金の保険料は、8月分までは月給や賞与の17.474%ですが、9月以降は17.828%になります。9月分の保険料は10月に支払われる月給から天引きされるので、引き上げを実感するのは10月からです。

厚生年金や国民年金は、現役世代から集めた保険料によって支給されます。少子高齢化で保険料を負担する現役世代が減少し、年金を受給する高齢者世代が増えることから、厚生年金の保険料率は2004年の年金制度の改正で、毎年0.354%ずつ引き上げることとされました。

改正時の給付水準を維持することを前提にすると、少子高齢化による収支の悪化を乗り切るには、改正前13.58%だった保険料率を二倍程度まで引き上げる必要がありました。しかし、それでは現役世代の負担が重くなり過ぎるため、二倍より低い18.3%を上限とするとされました。上限に達するのは2年後の17年9月です。

ただし、これでは改正前の給付水準は維持できません。そこで、物価や賃金上昇に応じた年金額の引き上げを抑制し、現役世代の負担とつり合うところまで給付水準が引き下げられます。これが、今年度から本格的に始まった「マクロ経済スライド」です。

改正前、現役世代の平均賃金の60%程度だった給付水準は、50%程度まで引き下げられる見込みです。少子化や経済状況が予想を超えて悪化し50%を割り込みそうになったときは、負担と給付について再び見直しされる予定です。

第三者行為事故による年金停止期間延長か

2015年08月20日 | 新聞連載記事
交通事故によって障害を負った人に支給される障害年金、あるいは死亡した人の遺族に支給される遺族年金は、事故の相手方から自動車保険などの損害賠償金を受け取ると、最長で2年間支給されません。

障害年金は障害を負った人の生活を保障するため、遺族年金は死亡した人に生計を維持されていた遺族の生活を保障するために、それぞれ支給されるものです。ただ、交通事故で被害を受けた人の生活を補償する責任は本来、事故を起こした加害者にあるはずです。

年金を支給する国と受給する人からみると、加害者は第三者に当たります。第三者の行為で障害年金や遺族年金を受給し、一方で加害者から生活保障に相当する損害賠償金を受け取ると、補償を二重に受けることになります。

このため、加害者から受け取った生活保障額の範囲内で、遺族年金や障害年金は最長2年間支給されないことになっているのです。なお、治療費や慰謝料、自分で掛けていた生命保険金を受け取っても、年金は調整されません。

2年という期間は、50年以上前に当時の自賠責保険の保障額などに基づいて決められました。会計検査院は2012年、最近は任意保険の加入率が70%を超え、損害賠償額も高額化していることを理由に、実情に合わせて制度を見直すよう厚生労働大臣に意見しました。これを受けて今年10月から、遺族年金と障害年金を支給しない最長期間が3年に伸ばされる見込みです。

遺族厚生年金の寡婦加算

2015年08月13日 | 新聞連載記事
夫の死亡によって妻が受給する遺族厚生年金は、一定の条件に該当すると年額585,100円(2015年度額)が加算されます。この寡婦加算の条件を確認します。

一つの条件は、夫が死亡したときに妻が40歳以上であること。40歳未満の場合は、その後妻が40歳になったとき、遺族基礎年金の支給要件に該当する高校生以下の子供がいることです。

夫にも条件があり…、①死亡したとき厚生年金加入中だった。②死亡したのは退職後だが、加入中に初診日がある病気やケガで初診日から5年以内に死亡した。③障害厚生年金の受給者で、死亡したときの障害状態が1級か2級だった…のいずれかに該当することです。

遺族厚生年金は、老齢厚生年金を受給していた夫が死亡した場合、また死亡したのは受給年齢前でも、受給するために必要とされる加入期間を満たしていた場合にも支給されますが、これらの場合の寡婦加算は、死亡した夫の厚生年金加入期間が20年以上あることが必要です。

例えば加入期間が15年の夫の場合、加入中の死亡であれば寡婦加算がつきますが、退職後の死亡で②や③に該当しなければ寡婦加算はつきません。

寡婦加算は妻が65歳になるまで加算されますが、遺族基礎年金を受給している間は加算されません。1956年4月1日以前生まれの妻は65歳以後も、生年度に応じて585,100円から19,500円の寡婦加算額が加算されます。

厚生年金の加入期間と保険料

2015年08月06日 | 新聞連載記事
厚生年金の加入期間は1カ月単位です。会社に就職した日が月初めでも月末でも、その月から加入期間とされ保険料が徴収されます。これに対し、加入期間の終わりは退職した月とは限りません。

厚生年金の加入者でなくなるのは退職の翌日で、この加入者でなくなった日がある月の前月までが加入期間とされます。例えば、3月31日に退職すると、加入者でなくなるのは4月1日ですから、加入期間はその前月の3月までとなります。

同じ3月でも30日までに退職すると、3月中に加入者でなくなるため、加入期間は前月の2月までとなります。この場合、3月分の保険料は徴収されませんが、その分、年金額にも反映されません。

では、4月1日に会社に就職し、同月20日に退職するなど、就職した月に加入者でなくなった場合はどうなるのでしょう。これを同月得喪といって、働いた期間がたとえ1日しかなくてもひと月分の保険料が徴収されます。

20日に退職した後に国民年金の1号加入者になると、4月は厚生年金と国民年金の保険料を二重に納めることになります。それぞれの保険料は各年金額に反映されるので、損をするわけではありませんが、二重の徴収は負担でもあります。

そこで今年10月から、この仕組みが変更されます。同月得喪で退職した後に国民年金1号加入者あるいは3号加入者になった月は、厚生年金の加入期間とされません。厚生年金の保険料は、いったんは徴収されますが後で還付されます。