本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

ヒミズ【映画】

2012年01月23日 | 【映画】
年初一発目はド重い映画を見てきました。
「冷たい熱帯魚」「恋の罪」に引き続き、
精力的に新作を撮っている園子温監督作品です。


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どこにでもいる中学3年生の住田祐一(染谷将太)の夢は 、
成長してごく当たり前のまっとうな大人になること。
一方、同い年の茶沢景子(二階堂ふみ)の夢は、
自分が愛する人と支え合いながら人生を歩んでいくこと だった。
しかしある日、2人の人生を狂わせる大事件が起き……。
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青春映画の金字塔、的な宣伝を見ますが、
それはちょっと大袈裟かなと。


あたしは原作未読なので、
まずは映画だけの感想をば。

主演二人は、若いから仕方ないのかもだけど、個性の表現が薄く、
そこを想像で補うしかないとなると、その行動に至る原因とか根拠とか、
不足に感じる部分もありましたが、荒削りながらも良い演技をしていると思います。
脇役については言うことなしです。相変わらず、でんでんが良い味。
窪塚は、せっかく窪塚なんだからもっと観たかったなぁ。

ストーリーの内容としては、前述している通り、
住田の個性の薄さを想像で補った上で、
クズに囲まれている中学生男子が「立派な大人になるんだ!!」と豪語する理由は
何となく理解できました。
茶沢さんも、あの境遇ありきで
住田に何か通じる物を感じてストーカーしていたとすれば納得。
ただし、ちょっと投げっぱなしな設定が多かったのは残念。
ラストは賛否あるでしょうが、この設定であるならば、映画に関してはこれで良かったように思います。

然しながら、東日本大震災を題材として盛り込む必要性が、全く理解出来ず。
これがなければ、あたしの中ではもっと評価が高かったのに。
そこかしこに出てくる震災を思わせる風景や、挟み込まれている設定に
いちいち違和感を感じてしまい、ちょっと商業的な感じがしてイヤでした。

しかも、震災を題材にした上で、
『がんばれ!がんばれ!』って…。
メッセージとしては押し付けがましくないかなぁ。凄くイヤだった。。。



鑑賞後、ネットで原作マンガとの相違点を確認したんですが、
なるほど、だいぶ違っているようで。
(ここから先、ネタバレ含みますので、読みたくない人は飛ばして下さいませ。)




例えば、住田の性格。

原作の住田は、はどこか達観していて、
世間と自分との間に壁をしっかり作っているみたいだったけど
(原作自体は読んでないので、あくまで想像ですが)
映画は世間と自分を常に比べて「普通でいたい」と願っているし、
原作は一匹狼から、様々な大事な人に出会っていく設定のようだけど、
映画は最初から、結構大事な存在の人達に囲まれて、笑顔も見せたりしている。

あと、茶沢さんの家庭環境は、映画オリジナルとのこと。
そして夜野というキャラクターの設定も、震災ありきで変更されているらしい。




(ここ以下、完全ネタバレですよ!!!要注意!!!)


上記のほか、一番大きな相違点はラストシーン。
相方は映画を観終わった後、
「住田が死んで終わると思ってたのに。」と言っていましたが、
原作ではどうやらそうらしいです。死ぬんだって。
映画は違いました。自殺を思いとどまって、自首します。

以下、個人的な解釈ですが、
原作の住田は、いくら茶沢さんの存在があったとしても、いや、あるからこそ、
立派な大人になんて前向きに生きることは出来なかったんじゃないかな。
自分だって、言ってしまえばクズと同類になったことに失望していたのかもしれない。
茶沢さんの家庭環境の話がなければ、やっぱり違う種類の二人でしかなくて、それならば別れも必然かも。

ただ、映画については、
住田を(ちょっと偏っているとは言え)前向きな性格にしてしまったことと、
茶沢さんの家庭環境を最悪にしてしまったことで、
ヒロインの心のよりどころである住田を、殺す訳にはいかなくなったんでしょう。
何と言うか、観客目線で、救われなさすぎるし。ヒロインがね。

あとは無理矢理入れた震災の話もあるし、
メッセージ上、バッドエンドでは終われなかったんじゃないかな。
園子温監督の良心と取るべきかなとは、思います。


どちらかの是非を決める訳ではないですが、
原作の評価が非常に高い作品のようなので、
恐らく、映画には批判もあると思います。


個人的には、映画は映画として及第点かなと思いますが、
題材に震災を取り入れたことで、だいぶマイナス評価です。
原作には興味あるので、近いうちに読んでみたいと思います。


ちなみに。

エロとかグロとかの要素は、前作とは比較にならない位にライトなので、
見やすい映画だとは思います。
(賞レース意識したのかしら…。)
興味がある人は、見ごたえはあると思いますので、よければどうぞ。

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