先週(2010年4月7日)に放映されたNHK歴史秘話ヒストリア「女中は見た 織田信長最後の三日間」を期待半分、懸念半分でみました。
★ NHK歴史秘話ヒストリアのページ
期待が半分あったのは拙著『本能寺の変 四二七年目の真実』に書いた情報に触発されて信長像を正してくれる内容ではないかと思ったからです。
結果は、見事な全面敗北。落胆!としかいいようのないものでした。
私が高く評価した「日本と朝鮮半島2000年」という番組を作ったNHKの姿勢はどこへ行ったのでしょう。あの番組は歴史の事実を深く知って理解すべきという姿勢で作られていたと思うのですが・・・・・
★ 「日本と朝鮮半島2000年」の私の評価
こと細かに論評する気にはならないのですが、この番組は本能寺の変や戦国時代の歴史を見る際に共通する誤った姿勢で作られていますので、少し具体的に説明しておきます。
①出典を示さずに俗説を流す
信長の正室・濃姫が本能寺で戦う大河ドラマのシーンを流していたが、その根拠となる出典名は示さなかった。もちろん、信憑性ある史料には濃姫が本能寺にいたという記載は一切ない。また、信長の小姓となった黒人(彌介)の肌の色を確かめるために信長が彌介の体を洗わせたというシーンも、その出典が示されなかった。
一方で彌介が本能寺の変の際に光秀軍と戦ったシーンでは出典を示しておきながら、同じ史料に書かれている「彌介は光秀軍に降伏した後、光秀の命令で京都の教会に身柄を預けられた」ことについては、どういうわけか出典を示さずに「一説によれば光秀に捕まった後に釈放された」と信憑性を留保した言い方をしていた。
②軍記物も一次史料も見境なく使う
信憑性のある『信長公記』の記事と同列で『甫庵信長記』や『絵本太閤記』といった全く信憑性のない軍記物の記事を扱っていた。また、信憑性については留保を置かざるを得ない『阿弥陀寺信長公由緒記』や『惟任退治記』の記事についても同様であり、「何かの史料に書かれていれば史料の信憑性にはお構いなし」という姿勢である。
★ 軍記物が創作した通説
③通説を前提として肯定している
信長にはやさしい一面があったということを主張したい番組だったが、信長は残酷・冷酷な人物であったという通説を鵜呑みにして前提においての話だった。
拙著にも書いた通り、信長が残酷・冷酷な性格だったというのは羽柴秀吉が家臣に書かせた『惟任退治記』で演出したものであるが、『惟任退治記』の別の記事には言及しているのに、このことには一切言及していない。「通説には従いつつ、いくつか逸話をちりばめて面白くお見せする」番組であって、通説に根底から疑問を提示するといった気概はさらさらないという制作姿勢。
★ 織田信長:苛烈・冷酷説を斬る!
以上、見てきた通り、真面目に史料を調べて組み立てた番組とは思えない内容でした。現代の出来事については「真実を報道する使命あり」と自認しているはずの報道機関が、過去の出来事については使命を放棄してよいものなのでしょうか。「歴史は昔のことだから対象外」という考え方があるのかもしれませんが、過去と現代はひとつながりであることを「日本と朝鮮半島2000年」は主張していたのではなかったでしょうか?
まことに残念至極です!! NHKの良心はいずこに!
【お知らせ】
本ブログは『本能寺の変 四二七年目の真実』著者のブログです。通説・俗説・虚説に惑わされない「真実」の世界を探究します。
★ このブログの説明のページ
★ このブログの目次(サイトマップ)
★ 怨恨説を斬る!
★ 野望説を斬る!
★ 本能寺の変は三面記事?!
★ 通説の創作者は秀吉!
★ ノイローゼ説を斬る!
★ 発作的犯行説を斬る!
★ 朝廷黒幕説を斬る!
★ 朝廷黒幕説を斬る!(続き)
★ 足利将軍黒幕説を斬る!
★ 足利将軍黒幕説を斬る!(続き)
★ イエズス会陰謀説を斬る!
★ イエズス会陰謀説を斬る!(続き)
★ イエズス会陰謀説を斬る!(続きの続き)
★ 日光東照宮桔梗紋説を斬る!
★ 「敵は本能寺にあり」を斬る!
★ 「是非に及ばず」を斬る!
★ 安土城放火・織田信雄の冤罪を晴らす!
★ 安土城放火・織田信雄の冤罪を晴らす!(続き)
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期待が半分あったのは拙著『本能寺の変 四二七年目の真実』に書いた情報に触発されて信長像を正してくれる内容ではないかと思ったからです。
結果は、見事な全面敗北。落胆!としかいいようのないものでした。
私が高く評価した「日本と朝鮮半島2000年」という番組を作ったNHKの姿勢はどこへ行ったのでしょう。あの番組は歴史の事実を深く知って理解すべきという姿勢で作られていたと思うのですが・・・・・
★ 「日本と朝鮮半島2000年」の私の評価
こと細かに論評する気にはならないのですが、この番組は本能寺の変や戦国時代の歴史を見る際に共通する誤った姿勢で作られていますので、少し具体的に説明しておきます。
①出典を示さずに俗説を流す
信長の正室・濃姫が本能寺で戦う大河ドラマのシーンを流していたが、その根拠となる出典名は示さなかった。もちろん、信憑性ある史料には濃姫が本能寺にいたという記載は一切ない。また、信長の小姓となった黒人(彌介)の肌の色を確かめるために信長が彌介の体を洗わせたというシーンも、その出典が示されなかった。
一方で彌介が本能寺の変の際に光秀軍と戦ったシーンでは出典を示しておきながら、同じ史料に書かれている「彌介は光秀軍に降伏した後、光秀の命令で京都の教会に身柄を預けられた」ことについては、どういうわけか出典を示さずに「一説によれば光秀に捕まった後に釈放された」と信憑性を留保した言い方をしていた。
②軍記物も一次史料も見境なく使う
信憑性のある『信長公記』の記事と同列で『甫庵信長記』や『絵本太閤記』といった全く信憑性のない軍記物の記事を扱っていた。また、信憑性については留保を置かざるを得ない『阿弥陀寺信長公由緒記』や『惟任退治記』の記事についても同様であり、「何かの史料に書かれていれば史料の信憑性にはお構いなし」という姿勢である。
★ 軍記物が創作した通説
③通説を前提として肯定している
信長にはやさしい一面があったということを主張したい番組だったが、信長は残酷・冷酷な人物であったという通説を鵜呑みにして前提においての話だった。
拙著にも書いた通り、信長が残酷・冷酷な性格だったというのは羽柴秀吉が家臣に書かせた『惟任退治記』で演出したものであるが、『惟任退治記』の別の記事には言及しているのに、このことには一切言及していない。「通説には従いつつ、いくつか逸話をちりばめて面白くお見せする」番組であって、通説に根底から疑問を提示するといった気概はさらさらないという制作姿勢。
★ 織田信長:苛烈・冷酷説を斬る!
以上、見てきた通り、真面目に史料を調べて組み立てた番組とは思えない内容でした。現代の出来事については「真実を報道する使命あり」と自認しているはずの報道機関が、過去の出来事については使命を放棄してよいものなのでしょうか。「歴史は昔のことだから対象外」という考え方があるのかもしれませんが、過去と現代はひとつながりであることを「日本と朝鮮半島2000年」は主張していたのではなかったでしょうか?
まことに残念至極です!! NHKの良心はいずこに!
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