>>> こちらをご覧ください!未だに朝廷黒幕説とは!2016年1月
信長に脅威を感じた朝廷が光秀を唆して謀反を起こさせた、というのが朝廷黒幕説です。
この説を熱心に唱えた研究家は既に他の説、発作的犯行説やイエズス会陰謀説に乗り換えてしまっているのですが、一部にはまだこの説を支持している方々もいるようです。
特に、光秀ファンの方にとっては、この説は大変魅力的です。光秀は謀反を起こしたのはではない。朝廷に謀反を企てた信長を討った忠臣である。
こう信じたい気持ちは大変よくわかります。
しかし、残念ながら史実ではないのです。
それでは、例によって5つの視点で評価を行います。
①動機 犯人に信長殺しの動機があるか
②犯行可能性 犯行を実行できる可能性があるかどうか
③関係者の証言 犯行を裏付ける証言があるかどうか
④本人の自白 犯人自身の自白があるかどうか
⑤成功時報酬 犯行成功による報酬があったかどうか
まず動機です。結論を先に言うと、これが決定的に根拠がないのです。
朝廷黒幕説では信長が天皇を亡き者にして自分が天皇になるつもりだった、とか、天皇をムリヤリ譲位させたり、とか、とにかく朝廷を目の仇のようにして圧迫していた、ということを前提としています。
ところが、これが史実ではないのです。
当時の朝廷は貧窮にあえいでいました。収入源であった荘園は戦乱にまぎれて大名や豪族に簒奪され、収入が得られなくなっていたからです。後柏原天皇が在位のまま63歳で没して後奈良天皇が即位しても即位式が10年間できないほどでした。後奈良天皇がやはり在位のまま62歳で没して即位したのが正親町(おおぎまち)天皇です。
高齢の天皇が在位のまま連続して亡くなっているのは、やはり貧窮のためです。天皇が跡継ぎに位を譲って上皇となり院政を敷きたくても、そのための儀式や院の御所の造営ができないという状態が続いていました。すでに五十代に達していた正親町天皇も皇位を譲りたかったのです。
一方、信長は朝廷の権威を利用するため、朝廷を保護する政策をとっていました。多額の献金を行ったり、御所の側に公家の住居を建てたりしています。
そこで、正親町天皇側から譲位の資金援助を信長に申し入れたのです。
これが「信長が天皇に譲位を迫った」と朝廷黒幕説を唱える研究家が「証拠」にしたものの実体です。
(続く)
【お知らせ】
本ブログは『本能寺の変 四二七年目の真実』著者のブログです。通説・俗説・虚説に惑わされない「真実」の世界を探究します。
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信長に脅威を感じた朝廷が光秀を唆して謀反を起こさせた、というのが朝廷黒幕説です。
この説を熱心に唱えた研究家は既に他の説、発作的犯行説やイエズス会陰謀説に乗り換えてしまっているのですが、一部にはまだこの説を支持している方々もいるようです。
特に、光秀ファンの方にとっては、この説は大変魅力的です。光秀は謀反を起こしたのはではない。朝廷に謀反を企てた信長を討った忠臣である。
こう信じたい気持ちは大変よくわかります。
しかし、残念ながら史実ではないのです。
それでは、例によって5つの視点で評価を行います。
①動機 犯人に信長殺しの動機があるか
②犯行可能性 犯行を実行できる可能性があるかどうか
③関係者の証言 犯行を裏付ける証言があるかどうか
④本人の自白 犯人自身の自白があるかどうか
⑤成功時報酬 犯行成功による報酬があったかどうか
まず動機です。結論を先に言うと、これが決定的に根拠がないのです。
朝廷黒幕説では信長が天皇を亡き者にして自分が天皇になるつもりだった、とか、天皇をムリヤリ譲位させたり、とか、とにかく朝廷を目の仇のようにして圧迫していた、ということを前提としています。
ところが、これが史実ではないのです。
当時の朝廷は貧窮にあえいでいました。収入源であった荘園は戦乱にまぎれて大名や豪族に簒奪され、収入が得られなくなっていたからです。後柏原天皇が在位のまま63歳で没して後奈良天皇が即位しても即位式が10年間できないほどでした。後奈良天皇がやはり在位のまま62歳で没して即位したのが正親町(おおぎまち)天皇です。
高齢の天皇が在位のまま連続して亡くなっているのは、やはり貧窮のためです。天皇が跡継ぎに位を譲って上皇となり院政を敷きたくても、そのための儀式や院の御所の造営ができないという状態が続いていました。すでに五十代に達していた正親町天皇も皇位を譲りたかったのです。
一方、信長は朝廷の権威を利用するため、朝廷を保護する政策をとっていました。多額の献金を行ったり、御所の側に公家の住居を建てたりしています。
そこで、正親町天皇側から譲位の資金援助を信長に申し入れたのです。
これが「信長が天皇に譲位を迫った」と朝廷黒幕説を唱える研究家が「証拠」にしたものの実体です。
(続く)
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