監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン(イロナ)カリ・ヴァーナネン(ラウリ)
エリナ・サロ / サカリ・クオスマネン
1996年、フィンランド
涙がにじむ街角に、雲が浮かぶ
>>イロナ(カティ・オウティネン)は名門レストランの給仕長。夫のラウリ(カリ・ヴァーナネン)は市電の運転手。ささやかな幸せの中に生きがいを見出した生活を送っていたふたりが、ある日突然職を失う。イロナは大手レストラン・チェーンの乗っ取りにあい解雇される。夫婦同時失職の危機を、ふたりはどう乗り越えるか?
アキ・カウリスマキ・・私の好きそうな監督なのに、この映画が2作目です。
監督は日本びいきで、小津監督を愛しているとか。
成るほど、日々の暮らしを淡々と描いたところ、人の心の動きを丁寧に描いているところは似ているのかもしれない。
でも、こちらはフィンランド、映画のなかの空気は違う。
登場人物は地味、台詞は徹底的に少なくして、余分な説明もなく、無声映画に近い。笑
空気感と言えば、秋の黄金色の景色も綺麗だけれど、バスの鮮やかな緑や、アパートのソファの赤、壁紙の水色と、優しい原色が使われていて素敵だ。
この青空を思わせる清々しい水色は『かもめ食堂』の壁の色と同じで、嬉しくなった。
イロナのいっちょうらの赤いコートは小津監督っぽいかな。笑
台詞は極端に少ないけれど、じっと画面を見ていたら、人の心のぬくもりがちゃんと伝わってくるのです。
決して退屈ではない。
妻イロナを演じるカティ・オウティネンは女優としては地味だけど、身体の線も美しくて見ているうちに綺麗な人だと思えてくる。
イロナは機転も利くし、レストランの給仕としては有能。
でも、当時のフィンランドは不況で就職難。
外食産業は斜陽だという。
妻想いの夫が妻を喜ばせようと買ってくるのがソニーのテレビ。
リモコンを喜んでいるけれど、いつの時代設定なのかな。70年代?
ジュークボックスもよく登場する。
せっかく車を売って作ったお金を、夫はつい増やそうとして、結局、スッてしまうが、妻はそんな夫に腹を立てない。
夫はいいことがあっても、なんでも妻に花を買ってくる。
いいなあ。
棚には子供の写真、妻はひとり墓参りに行く。
子供を亡くしたのか、それもふたりの固い絆になっているのだろう。
夫婦が互いに寄り添う姿にしみじみする。
見ようによっては暗いお話なのに、暗く感じないのは夫婦ふたりの無表情ぶりが滑稽なのかも。笑
淡々としていて悲壮感はない。
でも、ふたりは一生懸命、決してあきらめない。
だまされても、踏みにじられても、立ち上がる雑草みたいにひたむきだ。
妻イロナを演じるカティ・オウティネンが素晴らしい!
ここから結末に触れています。
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救いは意外なところから(予想できなくもなかったけど)やってきた。
イロナは就職活動先の美容院で、乗っ取られたレストランの元オーナー夫人に出くわす。
事情を知った夫人はもう一度レストランをやってみよう、資金は出そう、それに、イロナにレストランの経営を任せてくれると言う。
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開店の日、お客が来てくれるか緊張するイロナと夫と、元のレストランの同僚たち。
ああ、ここも『かもめ食堂』だ!
『かもめ』の女性監督か原作者は絶対に『浮雲』のファンですね、とにんまり。
お客で満杯になった店を眺めて、イロナは一服しに外に出る。
夫と、愛犬と、彼女はそよ風に髪をなびかせ、空を見上げる。
ここはフィンランド。
しあわせな夫婦と1匹。
空の色はやはり壁紙の美しい水色?
いつまでも見ていたい美しいラスト。
なんて素敵。
年を重ねて、より深く理解できるだろう味わい深い映画です。
そう、雨上がりの虹みたいにね。
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ちょっと気分が落ち込んだ時、元気が出て落ち着く映画だと思う。おススメです。
この映画、ほんとにおススメですよ。
号泣も刺激もないけど、しみじみ心が落ち着きます。
名作と言われるゆえんですね~♪
隣町まで行けばツタヤがあるけど・・・・・・・・
私は見たい!と思ったら、電車に乗って神戸の街までレンタルに行きます。笑
行きつけのツタヤが2軒あって、たいていはそこで見つかります。
1週間レンタルだとゆっくり見られますよ。笑
性格的に、借りに行くのはね行くぞ!!ってなモンですが返すのが・・・
買っちゃえば良いか・・・ここを読んでからならはずれはないし・・・m(~ ~)b
私は1週間に一度くらい街に出るので、返すのもついでです。
でも、つい、かためて借りてくるので、何本かがゴチャゴチャになって感想書いてないのも多いです。笑