監督:小津安二郎
原案:ゼェームス・槇 (小津安二郎)
脚色:伏見晁
撮影:茂原英朗
衣裳:斎藤紅
出演:斎藤達雄(父 )吉川満子(母)
菅原秀雄(長男)突貫小僧(次男)
坂本武(重役)早見照代(夫人)
加藤清一(子供)小藤田正一(小僧)
西村青児(先生) 1932年、日本
ネットでのお知り合い、牧野さんに勧めて貰って見た。感謝!
なあんと、70年以上も前の小津作品、モノクロでしかも、無声映画!
旧かなづかひ。(笑)
映画を読んでるという感じなんだけど、実に面白かった。
大人や特に子供の心理を丁寧にコミカルに捉えている。
大人の世界を子供の目から見たらどう映るのか。。
昭和の初め、兄弟二人はまだ小学生で、この頃は小学生でも制服に革靴。
普段は下駄を履いている!
あっ!それに男女共学ではない??
酒屋の小僧さんなんか今や存在しないもの。
子供たちが子供らしくおおらか。
郊外に越して来たけど、そこには乱暴者のいじめっ子がいて、子供たちの世界もまたそこそこ大変なのだ。
中に、背中に「オナカヲコワシテイ升ノデタベモノヲヤラナイデクダサイ」の張り紙をずっと背負っている小さい子がいるのにはお腹がよじれるほど笑った。
動物じゃあるまいし。あはは
弟役の突貫小僧(青木 富夫)←リンクどうぞが最高です。
臨戦態勢に入る前にははいていた下駄を即座に脱ぎ手に持つ。
すっかりファンになってしまった。
色んな映画に出演、きっと見かけていたはず。
何でも、撮影所に遊びに来ていたのを子役と間違われて映画に出演したという珍しい経歴を持つ。(笑)
父親の勤める会社の重役宅で活動の映写会があり、そこの息子を通じて兄弟も入れて貰うが。
画面には会社で専務におどけた顔をしてご機嫌を取る父親の姿があった。
兄弟の顔色が変わる。
当時は父親は威厳を持っていたし、子供たちも父親を尊敬していた、なのに。
兄弟は傷つき、父親にお父ちゃんは偉くなれ、勉強をしろと言うけど、ちっとも偉くないじゃないかと食ってかかり、おしおきにぶたれる。
子供たちの寝顔を見て父はつぶやく。
「こいつたちも爪を噛みながら一生を暮らすのか・・」
母親はそっと涙を拭っている。
あれ~?私も目頭が熱くなる。
サラリーマンの哀しさなんて70年前も今もちっとも変わらない。
貧富の差も今も昔もどうしようもないこと。
叱った後、父親は優しく子供たちに接するのを忘れないのがいい。
朝ごはんも食べず庭でふくれている子に、父親の言葉とおり母はおにぎりを持っていってやり、父子は仲良くおにぎりを食べる。
専務が車で来た時、兄弟は、少し困った顔の父親に行って挨拶するように合図する。
子供は子供なりに理解していくんだな。
子供たちの間では父親の地位の差なんていつまでもこだわらないのがいい。
肩を組んで仲良く登校していく。
頻繁に画面を横切る電車は明日への希望のシンボルなのかな。
台詞なんかなくても、(字幕はあるけれど)心に沁みるということに驚いた映画でした。
TB送信:マイ・ラスト・ソング