【混迷の兵庫県政】:“公益通報”めぐり国と斎藤知事の解釈“食い違い” 職員は困惑「知事だけ理解してくれない」「聞く耳もたない」 再選からまもなく半年も…くすぶり続ける“火種”
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:“公益通報”めぐり国と斎藤知事の解釈“食い違い” 職員は困惑「知事だけ理解してくれない」「聞く耳もたない」 再選からまもなく半年も…くすぶり続ける“火種”
去年11月の兵庫県知事選挙で斎藤元彦知事が再選を果たしてから、まもなく半年を迎える。この間、元県民局長が告発した文書問題を調査した第三者委員会が、公益通報者保護法の観点から県の対応は「違法」と断じたが、知事はその結果を受け入れてはいない。
県職員からは、「知事だけが理解してくれない」などと困惑する声も聞かれる中、一度は「不信任」を突きつけた議会は、今後どう動くのか―。兵庫県政をめぐる火種は、今もくすぶり続けている。<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button>
■国も大臣も異なる解釈…知事は「重く受け止め」も「対応は適切」見解変えず
第三者委員会・藤本久俊委員長(元裁判官) 「厳しい意見を言っているつもりはございません。これがスタンダードな考え方。(知事には)すぐに反論したりとか、すぐに判断しないで頂きたい。ゆっくり報告書を読んで、(違う意見を)取り入れようという姿勢をもってほしい」
3月に公表された第三者委員会の報告書では、斎藤知事が職員に対し、深夜にチャットで緊急性の低い指示や叱責を繰り返したことなど10の行為について“パワハラ”と認定されたほか、告発者を特定するに至った県の一連の対応の違法性を明記した。
この指摘に対し、斎藤知事は自身の行為がパワハラにあたることを認め、謝罪の言葉を述べた一方で、県の対応の違法性については「異なる意見もある」とし、今も「対応に問題はなかった」との主張を崩していない。
4月17日に開かれた公益通報者保護法の改正を審議する衆議院の特別委員会。斎藤知事が“公益通報”と扱わない判断を貫いていることについて、立憲民主党の議員が国側の見解を質した。伊東良孝消費者担当相は、「県議会と第三者委員会とで長時間にわたり審議されているものとして、解釈・結論には一定納得をしなければならないと思う」と述べ、第三者委の判断を肯定した。
また、これまでの記者会見で斎藤知事は「(公益通報者保護法の)体制整備義務について、法定指針の対象は3号通報も含まれるという考え方がある一方で、これは内部通報に限定されるという考え方もある」と答えていたが、消費者庁の審議官の答弁は「法定指針におきましては3号通報に関する体制整備義務について規定している部分がある」と知事の解釈と異なる内容となった。
消費者庁は県に対して「公式見解とは異なる」と指摘しているが、斎藤知事は4月23日の会見で、大臣の答弁について「指摘は重く受け止める」とする一方、「対応はこれまで述べさせていただいた通り」として、従来の見解を踏襲している。
■「職員は受け止めているのに知事だけが…」職員に危機感「県民の信頼失う」
議会からの不信任決議、失職を選択した上での出直し出馬を経て、再選を果たした2日後、斎藤知事は職員を前に、このように訓示していた。
斎藤知事(去年11月19日) 「生まれ変わって一からスタートし、謙虚な気持ちをもってやっていく。丁寧に対話を尽くしていきたい」
ところが、県議会の百条委員会や第三者委員会が調査報告をまとめても知事は従来の見解を改めることはなく、国との間で公益通報者保護法の解釈が食い違う現状は、職員の新たな悩みの種となっている。
職員の1人は読売テレビの取材に対し、「県が法律を遵守しない態度をとり続ければ、県民の信頼を失い、事業の執行にも影響が出かねない」との懸念が周囲から届いていると訴えた。
他の幹部職員は「部局の職員は、最初から消費者庁の法的解釈を受け入れているのに、トップだけが受け止めて終わっている。それが『県の考え』とされることに頭を抱えている」としたうえで、「県担当者と消費者庁の担当者はやり取りをしていて、知事だけが理解してくれないという認識で一致している」と現状を明らかにした。
さらに、元県民局長の処分についても「撤回などを職員から提案しても(知事は)聞く耳を持っていない。がっかりしている」と肩を落とした。
■一部会派は再び「不信任」検討も…最大会派の自民は“及び腰”
4月4日、立憲系会派「ひょうご県民連合」の上野英一幹事長は会見で、再度の「不信任案も検討する」と述べていた。まずは知事自身の自戒を求めるとしていたが、現在の知事の態度を受けて、同会派の県議は「次の議会で不信任の流れになるのでは」と話した。
一方、県議会の最大会派「自民」内では不信任案提出に否定的な意見が相次いでいる。
ある自民県議は「いま再び選挙に突入しても前回知事選と同じ状況が生まれてしまう」と訴える。懸念するのは、県知事選で表面化したSNS上の誹謗中傷や2馬力選挙の問題だ。問題に対応した法改正は「前提条件になる」とした。
「勝てる候補」も相変わらず不在だ。関係者によれば、前回知事選について、自民県議団が所属県議を対象に行ったアンケートでは、自民党の独自候補を擁立できなかったことが、県議が支援する候補の分極を招いたという意見が多くみられた。一部県議は無所属の稲村和美候補を支援したが、「リベラルにつながる候補に対し、保守層が離れた」とする意見も見られた。自民党が一致して支援できる候補者が見つかっていることも、選挙戦を迎える前提条件のひとつとなっている。
県議団内では、「前回選挙ですでに民意が示された」として、「これ以上の選挙戦を望まない」という声もあり、各会派の足並みがそろうかどうかは不透明となっている。
■くすぶる火種「公選法違反の捜査」「私的情報の漏洩・流出」
文書問題に関する一連の調査は終わったものの、2期目の斎藤県政を根幹から揺るがしかねない火種は他にもくずぶっている。
前回知事選で、斎藤知事の陣営は県内のPR会社にポスター制作費などの名目で71万5000円を支払っていた。神戸学院大学の上脇博之教授らは公職選挙法が禁止するSNSなどでの選挙運動に対する“報酬”だったとして刑事告発。県警は今年2月、PR会社を家宅捜索し、社長のスマートフォンなどを押収した。その後、表立った動きはないが、県警による捜査は今も継続中だ。
死亡した元県民局長の“私的情報”の漏洩をめぐる疑惑も残っている。
この問題では、知事の側近とされた当時の総務部長が、告発文を作成した元県民局長の私的情報を県議らに見せていた疑いと、SNS上に私的情報が流出した疑いが、それぞれ別々の第三者委員会が立ち上げられ、すでに調査は3月末に終わっている。人事課などによれば、公表は関係者の懲戒処分の手続きを妨げないために、処分決定までは公表されないという。
何度となく「真摯に受け止める」と発言しながらも、従来の見解を踏襲し続ける斎藤知事。再選から約半年が経過した今も、県政をめぐる混乱は一向に収まる気配を見せない。
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元稿:讀賣テレビ 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】 2025年05月05日 09:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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