【社説①】:ガザの戦闘激化 民間人の犠牲回避に力尽くせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ガザの戦闘激化 民間人の犠牲回避に力尽くせ
イスラエルによる軍事作戦の激化により、パレスチナ自治区ガザの人道危機が深刻化している。民間人の被害がこれ以上拡大しないよう、一時休戦を急ぐべきだ。
イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスとの戦闘が「第2段階」に入ったと宣言した。
ハマスから奇襲を受けたことへの反撃として、イスラエルはガザへの空爆を行ってきた。ここ数日は、戦車や部隊を投入する限定的な地上作戦も続けている。
「第2段階」では、ハマス幹部や戦闘員の殺害とともに、ガザに張り巡らされた地下トンネルの破壊を目指しているという。イスラエルは近く、本格的な地上侵攻に踏み切るとの見方が強い。
問題は、民間人の犠牲者が増えていることだ。ガザ当局は、イスラエルとハマスが交戦を始めた7日以降、8000人以上が死亡したと主張している。
ハマスは、病院などの民間施設の地下にトンネルを掘り、軍事施設を置いているとされる。イスラエルがハマスの拠点を攻撃する場合、住民が結果的に「人間の盾」として使われることになる。
民間人が犠牲になるように仕向けて、イスラエルが攻撃できないようにし、もし強行した場合には非難の矛先が向かうようにする戦術としか見えない。ハマスの卑劣さは際立っている。
イスラエルに自衛の権利があるのは当然だが、過剰な侵攻で民間人の犠牲者が飛躍的に拡大すれば国際人道法違反だとの批判は避けられない。イスラエルの孤立は、ハマスの思うつぼだろう。
ガザには約220万人の住民がいる。水や食料、医薬品、燃料などの搬入は、イスラエルの封鎖措置によって、約3週間にわたり、ほぼ停止されている。現地では物資の略奪が起きるなど、危機的な状況が伝えられている。
国連総会は緊急特別会合で、ガザ情勢に関し、「人道的休戦」を求める決議を採択した。
事実上、イスラエルに自制を促す内容で、ハマスへの非難を盛り込んでいない点は公正さを欠いていると言わざるを得ない。米国は反対し、日英なども棄権した。
それでも、ガザの惨状は放置できないという国際社会の意思を、イスラエルは重く受け止め、危機に歯止めをかける必要がある。
戦闘の中断と、ハマスがイスラエル奇襲時に連れ去った人質の早期解放に向けて、関係国は外交努力を加速させねばならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年10月31日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。