路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【東京都】:「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する ⑤

2024-07-05 06:50:10 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【東京都】:「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する ⑤ ■『女帝 小池百合子』著者が真相を語った

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京都】:「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する ⑤ ■『女帝 小池百合子』著者が真相を語った

 「近藤大介 北京のランダムウォーカー」と題したこの連載は、普段は毎週火曜に中国を中心とした東アジア情勢に関するレポートを載せ、最後に推薦新刊図書の書評を加えている。だが、今回は特別編として、元政治記者の近藤大介氏と、現在ベストセラーになっている『女帝 小池百合子』(文藝春秋刊)の著者で、ノンフィクション作家の石井妙子氏との120分にわたる緊急対談をお届けするーー。 

舛添要一氏に対する個人的復讐

近藤: そこに2016年夏、舛添要一都知事の金銭スキャンダルが降って湧いて、降板。もう世間が忘れかけていた小池氏が自民党を飛び出して出馬宣言しました。

以前、小池氏の側近に彼女の座右の銘を聞いたら、「風が吹いていたら飛び乗れ、吹いていなかったら自分で起こせ」。小沢一郎氏から授かった言葉だそうですが、まさに千載一遇のチャンスとばかりに「風起こし」に出たわけですね。

石井: そうです。詳しくは本書でも書きましたが、この時は、かつて付き合っていて、結婚まで考えていたのに自分を振った舛添氏に対する個人的復讐も兼ねていた。

近藤: そこのくだりは、衝撃的でした。私も一つ告白しますが、石井さんが本書で書かれた、テレビ局時代の小池氏と舛添東大助教授が恋愛していたという時期、私は東大の舛添ゼミ(国際政治)の学生だったんです。

石井: えっ!? それなら近藤さんに取材すればよかった(笑)。

近藤: 私に取材しても無駄ですよ。プライベートの顔は何も知りませんから。当時、「大学はレジャーランド」なんて言われていましたが、舛添ゼミだけは「地獄の舛添ゼミ」と言われたほどで、涙が出るほど厳しかったんです。

ゼミは毎週水曜日の午後から夕刻まで続き、日本語、英語、フランス語の本や資料を大量に読み込んで国際政治の討論を行う。舛添助教授もゼミ生たちも毎週、真剣勝負で、恩師のプライバシーなど想像したこともありませんでした。

ついでに言っておくと、舛添氏と小池氏は「似た者同士のポピュリズム政治家」と捉えられがちで、石井さんも本の中で、一部そのような書き方をしていますが、私に言わせると、二つの点で、むしろ対照的な存在です。 

 第一に、小池氏は勉強嫌いのようですが、舛添氏はものすごい勉強家で、世田谷のご自宅は世田谷図書館より本が多いと言われるほどです。自民党の政治家になってからも、朝8時から始まる党の部会に一時間も前に来て予習していました。いま安倍首相は憲法改正を唱えていますが、自民党の憲法改正案というのは、もともと舛添氏が作ったようなもので、『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書、2014年)という本も出しています。

第二に、小池氏は孤独な存在ですが、舛添氏には仲間やブレーンが多い。例えばわれわれ元ゼミ生は50人くらいいて、私などはぐれ者ですが、多くは中央官庁で偉くなっています。誰もが「地獄の舛添ゼミで鍛えられた」という感謝の念があるので、舛添厚生労働大臣の時代などは、政策秘書もゼミ生でしたし、省庁を超えた「鉄の結束」ができていました。もう卒業して30年以上が経ちますが、いまでも年に一度くらい、皆で先生を囲んで意見交換をしています。

また、いまの奥様も大変素晴らしい方で、一男一女に恵まれ、円満な家庭を築かれています。厚労大臣時代も都知事時代も、どれほど多忙でも夜7時には自宅に帰って家族で食事することを基本にしていました。こうした点も、「公私ともに一匹狼」の小池都知事とは異なります。

 石井: 近藤さんの熱くなる様子を見ていると、わかる気がします(笑)。確かに、そういった面では二人は対照的ですね。小池氏の周囲には人がいない。すぐに離れていく。

ただ、上を目指しているだけ

石井: 2016年の都知事選に話を戻すと、石原慎太郎元都知事が、自民党公認候補・増田寛也氏(元岩手県知事)の応援演説で、小池氏のことを「大年増の厚化粧」と呼んだことが、小池氏にとって決定的な追い風になりました。小池氏は選挙演説でこの発言を逆手に取って、「今日は薄化粧で来ました」とか「私は大年増ではなく豊島区(の選挙区)です」などと語り、都知事選に圧勝します。

近藤: 本書での、このあたりの描写は圧巻ですね。石原慎太郎氏と小池家の間に、半世紀も前からあった深い因縁。小池氏が「厚化粧」をする本当の意味。そしてこの時の小池氏の細かな心理分析。まさに石井ノンフィクション文学の真骨頂という感じです。

石井: ありがとうございます。でもようやく掴んだ東京都知事の椅子ですが、彼女は特にやりたいことがあって都知事になったわけではないので、築地市場の豊洲移転問題を始め、混乱の都政が続きます。

2017年6月の都議会議員選挙に「都民ファーストの会」を立ち上げて49議席を獲得。自民党の23議席を抑えて都議会第一党に躍り出ますが、問題は彼女自身にありました。

近藤: そして波乱の同年10月の総選挙になるわけですね。「希望の党」を立ち上げ、小池劇場の幕が上がった。石井さんは本書で、「彼女はただ、上を目指しているだけで、理由は後からつけられる」と喝破していますが、前原誠司代表率いる民進党は「女帝」に翻弄されます。

石井: その通りです。毎週金曜日午後2時から開かれる小池都知事の記者会見で、フリージャーナリストの横田一が懸命に挙手して、前原代表が前日、「(旧民進党議員が)公認申請すれば排除されない」と述べたことについての見解を質しました。すると小池都知事は「排除いたします」と言い放ったのです。この一言で小池劇場は、小池氏にとって悲劇になる。

近藤: 本書での小池都知事の記者会見の様子も興味深かったです。私も石原都知事時代の一時期、毎週金曜日午後3時から行われる都知事の会見に行っていましたが、異様な風景でした。

まず都庁記者クラブの会員でないため、私に許されるのは「傍聴」のみで、質問は不可。でも記者クラブの人たちの質問を聞いていると、石原都知事に対して阿諛追従の言葉ばかり並べている。記者の中には、おべんちゃらを言い足りなくて、会見終了後に都知事のところへ擦り寄って行く人までいる。何だこれは? という感じでした。

そんなことが小池時代になっても続いていたんですね。そこへフリーランスの横田氏が「ハチの一撃」を刺した。

石井: 都庁記者会見は本当にひどいですね。私は記者クラブに参加している新聞記者、テレビ局記者に、自分の仕事をどう思っているのか聞いてみたいです。小池氏が喜ぶような、くだらない質問ばかりする。小池氏のつまらない冗談に大げさに笑ったり。大手マスコミと都知事が結託しているように見えます。

小池氏はマスコミを巧みに利用することで有名です。とりわけテレビを味方につける。テレビによって生み出された政治家の先駆でもあります。ですが、「排除します」発言で、テレビが初めて彼女の敵になった。彼女の悲願である「初の女性総理への道」は、この一言で潰えました。人間、得意なところで失敗するとは、よく言われることですが口が禍しました。

近藤: あの騒動の時、安倍首相に近いある関係者から、信じられないような話を聞きましたよ。表では、小池氏は野党連合の「希望の党」を率いて、自民党と戦うジャンヌ・ダルクの役を演じていた。しかし、裏では安倍首相に電話を入れて、「選挙後に憲法改正に賛成するから、改正と共に退陣して自分に譲れ」と言ってきたというんです。

この証言が事実かどうかは確認のしようもありませんが、もし事実なら、小池氏にとって政治とは、「都民ファースト」でも「国民ファースト」でもなく「百合子ファースト」だということですね。

石井: 彼女はこの時、日本記者クラブが主催した選挙の党首討論でも、経済政策を問われて「ユリノミクスを提唱する」と述べた。中身はよくわかりません(笑)。ゴロのいいキャッチコピーをまず考える。でも、中身は考えない。いずれにせよ、あの総選挙で国政復帰を諦めざるを得なくなって初めて、彼女は都政に目を向けるわけです。

もしも「小池首相」が誕生したら

近藤: それから2年半以上が経ち、来月5日に再び、東京都知事選を迎えます。そんな折、新型コロナウイルスが日本を襲い、再び小池都知事が連日、テレビに登場するようになっています。

『週刊文春』(4月23日号)は「小池百合子 血税9億円CM 条件は『私の出演』」と題した特集記事を出して、「小池都知事はコロナウイルスを選挙に利用している」と批判しました。私も渋谷のスクランブル交差点の電光掲示板でこのCMを目にして、「これは選挙CMではないか」と、思わず足を止めてしまいました。

石井: 本書の発売が都知事選の直前になったことは、まったくの偶然なんです。つまり、出版社側はもっと早く出したかったのですが、調べ物や検証に時間がかかったこともあり、また、私が遅筆で迷惑をかけました。

「政治的意図をもって出版されたのではないか」と一部で語られているようですが、もちろん、いかなる政治団体とも私は結びついていませんし、政治記者や政治ジャーナリストでもありません。小池都知事に対する個人的な恨みもないです。世論を誘導しよう、世の中を変えよう、選挙に影響を与えよう、などと考えて、本書を執筆したわけではありません。結果としてなることは、あるのかもしれませんが。

 ノンフィクション作家のやるべきことは、事実の追求に尽きると思います。作品をどう読むか、小池百合子という人物をどう見るかは読者の判断に委ねたいです。読者には自由に読んで欲しいし、それを作者が邪魔してはいけないと思っています。

 私にとっては彼女を軸にして、平成30年の日本政治史を振り返る作業でもありました。私が成人してからの年月に比例する。自分の生きた時代を書いた、という実感はあります。

 近藤: なるほど。それでは最後の質問です。小池都知事の野望は、明確だと思います。すなわち、来月の都知事選で圧勝し、来夏の東京オリンピック・パラリンピックも成功させる。ついでに来夏の東京都議会選挙にも勝つ。そしてこれらをバックにして国政に復帰し、「ポスト安倍」を目指すというものです。

 彼女がどんな野望を抱こうが自由ですが、現在は1300万都民の生殺与奪を握り、首相になれば1億2000万国民の生殺与奪を握るわけです。本書の帯には、「救世主か? “怪物”か? 彼女の真の姿。」と書いてありますが、444ページを貫いている「彼女の真の姿」は、「救世主」ではなく「怪物」です。 

自民党には、かつて彼女に裏切られた同志がゴマンといるから、彼女はまず野党連合を目指すでしょう。その際、カギを握る一人になるかもしれないのが、いまコロナ対策で人気沸騰している吉村洋文大阪府知事(維新の党)です。その吉村府知事と先月、直接話す機会があったので、「近い将来、『小池総理』を担ぐ意志はありますか?」と聞いたら、「それはありません」と言下に否定しました。

維新の会が味方にならないとすると、自民党二階派を小池派に模様替えしようとするのかもしれない。ともかく来年、小池氏は、年齢から言っても、人生を賭けた最後の大勝負に出るでしょう。

ズバリ、小池氏が本物の女帝に、すなわち女性初の総理になる可能性はあると思いますか?

石井: 私は小池氏の半生をつぶさに追いかけて、彼女がここまで上り詰めてしまったことが不思議でならないんです。言葉を代えて言うと、そのこと自体が、日本社会の「危うさ」を表していると思います。

現段階から、さらに階段を上がっていく姿は、私にはあまり想像できないのですが、最後は運次第でしょうね。ただ、もしも小池首相が誕生したら、日本中が彼女に振り回されると思います。彼女自身が自分の業に振り回されているのですから。

近藤: 「運次第」ですか――。私が研究している中国政治の世界に、「小事は智によって成し、大事は徳によって成すが、最大事は運によって成す」という言葉があります。小池氏の強運は尽きるのか、尽きないのか。

それから、「もしも小池首相が誕生したら、日本中が振り回される」というのも、本書を読んだら、十分理解できます。その意味でも、多くの人に『女帝 小池百合子』を手にとって自分の問題として考えてもらいたいです。

 ◆石井妙子(いしい・たえこ)
1969年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。5年をかけた綿密な取材をもとに『おそめ』(新潮文庫)を発表。伝説的な「銀座マダム」の生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補となった。『原節子の真実』(新潮社)で新潮ドキュメント賞を受賞。他の著書に『日本の血族』(文春文庫)、『満映とわたし』(岸富美子との共著/文藝春秋)、『日本の天井 時代を変えた「第一号」の女たち』(KADOKAWA)などがある。

 元稿:現代ビジネス 主要ニュース 政治 【選挙・メディア・マスコミ・担当:近藤 大介 , 石井 妙子】  2020年06月05日  09:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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