【書評】陽の当たる場所へ:石井妙子著『女帝 小池百合子』
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【書評】陽の当たる場所へ:石井妙子著『女帝 小池百合子』
4年前の選挙で圧勝し、再選確実と言われている小池百合子東京都知事。出馬表明を前に、カイロ大学からは突然「(小池氏の)卒業を証明する」との声明が出された。彼女はいったい、何者なのか。書かれてこなかった“何か”に迫るノンフィクション。
石井妙子(著)
発行:文藝春秋
四六判:440ページ
価格:1500円(税別)
発行日:2020年4月14日
■「東京アラートの発動を、決定をいたしました」
目の前のテレビで、小池百合子都知事がそう宣言していた。
新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除された後、再び感染者数が増加傾向に移った2020年6月2日のことだ。
東京アラート……。
インターネットで調べる。なるほど、注意喚起らしい。
新型コロナウイルスが日本に広がり、東京の感染者が爆発的に増加するにつれて、都知事のメディア登場頻度は格段に上がった。
記者会見を見ながら、ふと思う。
「小池百合子」とは、どんな人物なのか。
日本に彼女の名前を知らない人は、ほとんどいないだろう。
だが、政治哲学は何か、信念は何かと考えてみると、ほとんどわからない。
カイロ大学を卒業した元テレビキャスター。
日本新党、自由党、新進党、自民党と政党を移り、都民ファーストの会を発足させた。
小池百合子はどこから来て、何を目指すのか。
本書はその問いに、真正面から向き合う。
読み応え十分。むしろ、そのへんのドラマよりよっぽど刺激的だ。
◆Truth is stranger than fiction
著者は『原節子の真実』で新潮ドキュメント賞を受賞するなど、これまでも女性の評伝を多く書いているノンフィクション作家である。
膨大な資料にあたり、丹念に取材を重ね、人に会う。そして、時間の中に埋もれていた真実に光を当ててきた。
本書のように優れたノンフィクションを読むと、作家マーク・トウェインの“Truth is stranger than fiction”という言葉を思い出す。
小池百合子を描くなかで著者が強くこだわったのが、“小池百合子”を表舞台に立たせた輝かしい学歴だ。
エジプト最難関のカイロ大学を、留年せずに4年間で卒業した初の日本人。しかも首席で――。
「学生数は十万人、エジプト人でも四人にひとりは留年するという大学で、そんなことがあり得るのだろうか。私にはとても信じられなかった」
著者はそう述べ、小池自身が語ってきた言葉や周囲の証言、彼女が話すアラビア語のレベルなどから、多くの矛盾を指摘する。
そんな折、ひとつのニュースが飛び込んできた。
カイロ大学が「小池百合子氏が1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する」と、大使館を通じてフェイスブック上で声明を出したのだ。
本書が話題になっている、このタイミングで。
真偽は、読者の判断に委ねるしかない。
文藝春秋社 主要出版物 【話題の新刊・担当:幸脇 啓子 【Profile】】 2020年06月12日 09:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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