【アベノミクス】:結局大企業とグルなのだ 安倍政権では賃金は上がらない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【アベノミクス】:結局大企業とグルなのだ 安倍政権では賃金は上がらない
大企業が儲かれば、そのうち利益が従業員に滴り落ちる――。アベノミクスのトリクルダウン理論は、やっぱり完全なる詐欺だった。
財務省が3日に発表した2017年度の法人企業統計。企業が蓄えた内部留保の額は前年度比9・9ポイント増の446兆4844億円と、6年連続で過去最高を更新した。
ところが、企業の稼ぎのうち人件費に回す「労働分配率」は66・2%で実に43年ぶりの低水準。第2次安倍政権発足時(12年度)の72・3%をピークに“右肩下がり”が続いているのだ。
12年度と比べると、大企業の当期純利益は19・5兆円から44・9兆円へと2・3倍も跳ね上がったのに、従業員1人当たりの給与は16年度比で減少した。
従業員1人当たりの労働生産性は13年度の690万円から年々上昇し、17年度には739万円に達した。これだけ必死で働いて企業のために尽くしても、給与はちっとも増えやしない。
東京商工リサーチの調査によると、18年3月期に1億円以上の報酬を受け取った役員は240社、538人と過去最高を記録。企業の利益が賃金に回らず、内部留保や役員の懐に空前の水準で回っているのだ。
安倍首相は“官製春闘”の賃上げ圧力で「やっている感」をアピールしてきたが、企業の儲けは従業員へと滴り落ちてこない。アベノミクスのトリクルダウンなんて、口先だけの嘘っぱちに過ぎなかったのだ。
いつも大風呂敷を広げるだけ(C)日刊ゲンダイ
■強きを助け、弱きをくじくアベコベ政治
賃金以外の収入にも、アベノミクスの弊害は及んでいる。異次元緩和のマイナス金利政策で、かつては年間30兆円以上もあった「利子所得」は、ほぼ消滅。預貯金から20%の税金を差っ引かれれば、貯蓄は底をつく。
さらに年金や医療費の負担割合も年々増加。今や世帯主の年齢が50代の世帯のうち、貯蓄ゼロが3割を占める。年金受給世帯は全世帯の3分の1以上に上るが、受給年齢は引き上げ、支払額もカット。貯蓄もなく、年金収入もガタ減りでは、お年寄りの暮らしは特に悲惨だ。
これから年金を受け取る世代にとっても、将来の所得が減ることは確実なだけに、不安は高まるばかりだ。「人生100年時代」ならなおさらで、国にしゃぶり尽くされる中、「長生きリスク」に備えた倹約に励まなければいけない。
これでは消費の拡大を期待するだけムダ。景気が劇的に上向くことはなく、賃金は絶対に上がりっこないのだ。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「国際競争力の激化や少子高齢化への不安などから、企業は固定費の抑制に注力。護身のために内部留保を積み上げ、人件費を増やそうとしません。つまり、企業任せを続ける限り、将来も賃金は上がらないのです。内部留保を吐き出させ、経済のひずみを是正するのは政治の役目です。所得再配分を目指して企業は増税し、個人の税と社会保障負担は軽減すべきです。例えば、4割近い非正規労働者を厚生年金の対象にすれば、企業の負担は高まっても、個人の掛け金は増えて年金財政が楽になります。増え続ける社会保障費も削減の前に、健康長寿につながる食材や運動の指導を強めるなど、医療コスト全体を減らす策を考えた方がいい。ところが、安倍政権は法人減税で大企業に味方し、個人に手を差し伸べず将来不安の高まりを助長してきた。だから、大企業が空前の利益を叩き出しても、給与に反映されないのです」
強きを助け、弱きをくじく政権が続く限り、賃金は上がらないのだ
酷暑でも懐は寒くなるばかり(C)日刊ゲンダイ
◆やっているフリの目くらましが政権の本質
こうしたアベノミクスのインチキを糊塗し、国民の目をそらすため、国民受けする経済政策のスローガンを掲げてきたのが、アベ政治の5年8カ月だ。
しかも、その全ては常に掛け声倒れ。目標達成に向けた具体的な道筋を立てず、派手な看板を次々と掛け替え、食い散らかしてきた。
「待機児童ゼロ」「全ての女性が活躍できる社会」「目指すは1億総活躍」「名目GDP600兆円」「介護離職ゼロ」「教育無償化」「人づくり革命」……。仰々しいのは名称だけで、達成できたためしはない。
待機児童と介護離職の2つのゼロは、急ピッチで「ハコ」だけ建て、「ヒト」不足は手付かず。全産業平均より約10万円も低い保育士と介護人材の安月給の改善を怠ってきた。
来年秋の消費増税分と企業の拠出金を財源とする年2兆円の政策パッケージで、保育士の体質改善に充てられるのは数百億円程度。月給換算での上昇効果は平均3000円ぽっちだ。
結局「待機児童ゼロ」は人手不足を解消できず、達成期限としてきた昨年末には実現できなかった。安倍は保育を担う人材確保をサボったくせに、昨年の総選挙で「幼児教育の無償化」を公約。さらに保育の需要を掘り起こし、人材を必要とする派手な看板を立てた。現場の混乱などお構いなしで、人気さえ取れればいい――。安倍のロクでもない人間性が、実によく表れている。
この政権が唯一シャカリキになって成立させたのは、「働き方改革」と称した“過労死法案”のみ。これも財界の注文通りで、この政権と大企業はやはりグルなのだ。
「安倍政権の本質とは、ゴマカシと隠蔽の目くらましだと思います」と言うのは、法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)だ。こう続けた。
「いつも『やっているフリ』の印象操作で、国民をたぶらかし、大企業優遇など不都合な真実を隠し続ける。その真相を伝えられたら困るから、安倍首相とその不愉快な仲間たちが圧力をかけ、メディア支配を強めた。真相追及から逃れるため、野党の分断工作にも余念がない。総裁選で石破元幹事長との論争を避けているのも、アベノミクスの大失敗などから国民の注意をそらすのが目的ですよ」
こんな国民を苦しめるだけのゴマカシ政権が、あと3年も続くとは正気の沙汰とは思えない。
■アベ政治を総括せず“逃げ恥”の片棒担ぐ
詐欺的政策のアベノミクスで企業の人件費率の低下に歯止めがかからない中、来年10月には消費税率が10%に上がり、さらに2年後には東京五輪が開催される。
「前回の東京五輪の直後も、日本経済は不況に襲われましたが、賃金や年金が増えない状況の中で、今回のダメージはさらに厳しさを増すのは間違いありません。それなのに、安倍政権は『カジノ解禁』や『サマータイム導入』など余計なことばかりをやろうとする。カジノは遊技機メーカーが手ぐすねを引き、サマータイムもシステムを扱う企業は儲かる。こうした一部の大企業と“お友だち”となり、利権にあずかろうとしているのが、今の不透明で信用ならない政権の実態ではないですか」(斎藤満氏=前出)
6年ぶりの自民党総裁選は、こうした政権の悪行の数々をあぶり出し、アベ政治の5年8カ月を総括する好機だ。それこそ、大マスコミは「この時期にロシアでプーチン大統領と会っている場合か」と迫るべきなのに、特にテレビは朝から晩まで、単なる内輪もめに過ぎない体操協会のパワハラ騒動に時間を浪費。総裁選そのものを扱うことさえしないのだ。
「これでは、常に国民の注意をそらし、まったく別のところに関心を向けさせたがる安倍政権の思うツボです。徹底した“逃げ恥”作戦の『安倍隠し』に、メディアが積極的に片棒を担いでいるようなものですから、アベノミクスで豊かさの実感が湧かずとも、国民になかなか、歪んだ真相が伝わらないわけです」(五十嵐仁氏=前出)
かくして、あと3年もアベ政治が続く異常事態で、この国は消費増税と五輪後に、空恐ろしくなる“焼け野原”が広がることになる。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年09月06日 15:25:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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