《余録・03.26》:鎌倉時代の歴史書…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・03.26》:鎌倉時代の歴史書…
鎌倉時代の歴史書「吾妻(あずま)鏡(かがみ)」に「泥が雨に交じって降った」という記録がある。「希代の怪異なり」と記す。1266(文永3)年旧暦2月。新暦ならちょうど今ごろだ。中国大陸からの黄砂を指すとみられている

▲古来、黄砂には「霾(ばい)」の字が当てられ「つちふる」と呼んだ。中国の古代遺跡、殷墟から出土した甲骨文字の中にあるという由緒正しい文字。古代人も怪異現象とみて吉凶を占ったといわれる

黄砂飛来が多かった2002年、札幌市内の駐車場で車に降った黄砂を掃除する市民=札幌市中央区で2002年3月22日、橋本政明撮影
▲近年「春の5K」なる言葉が定着してきたらしい。乾燥、強風、寒暖差、花粉に黄砂。かつてきつい、汚い、危険の「3K」職場の労働条件が問題視されたことがあった。5Kもやっかいな現象である
▲岩手・大船渡に続き、愛媛、岡山でも起きた山火事には乾燥、強風の気象が影響している。寒暖差も大きく、東京では雪の4日後に夏日を記録。今度は花粉症に苦しむ人に追い打ちをかける黄砂の到来である
▲現代社会では黄砂にイラッとさせられることが多い。自動車や洗濯物に降った黄砂の始末は大変。雨が交じれば簡単には落ちない。花粉症が悪化し、黄砂だけでもアレルギー症状を起こすことがある
▲発生地の砂漠地帯により近い韓国では日本以上に飛来量が多く、外出を控えることも多いという。黄砂の飛来は2000年ごろをピークに減少傾向にあるとされるが、安心はできない。先日、外相会談が開かれた「日中韓」の枠組みでもぜひ協議してもらいたい東アジアの共通課題である。<殷亡(ほろ)ぶ日の如(ごと)く天霾(つちふ)れり/有馬朗人>
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年03月26日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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