《社説②・03.28》:米国自動車関税 足並みそろえて撤回迫れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・03.28》:米国自動車関税 足並みそろえて撤回迫れ
トランプ米大統領が日本車を含む全ての輸入車に25%の追加関税を課すと発表した。
米国を最大の輸出先とする日本の自動車メーカーへの打撃は避けられない。自動車産業は裾野が広く、日本経済に甚大な影響が及ぶ可能性がある。
日本は輸入車に関税をかけておらず、無責任で一方的な関税発動を認めてはならない。政府は対象から日本を除外するよう米国に要請しているが、日本以外の自動車メーカーや世界経済にも大きなマイナスとなることは必至だ。必要なのは関係国とともに関税の撤回を強く迫ることである。
米国は乗用車に2・5%、トラックに25%の関税を課している。これに25%を追加し、4月3日に徴収を開始する。エンジンなどの基幹部品も対象となる。
関税は輸入側が負担し、販売価格に上乗せされることが一般的だ。米国市場で輸入車は価格面で不利な状況になり、販売減や収益悪化を招く可能性が高い。
日本は2024年に自動車137万台を米国に輸出した。対米輸出額全体の3割に上る。高関税によって米国から実質的に締め出されることになりかねない。
生産や販売の縮小で部品メーカーも打撃を受ける恐れがある。自動車関連産業は約550万人を雇用する日本経済の屋台骨だ。完成車や部品の工場が立地する地方を含めて広範囲に影響が及ぶ。
トランプ氏は、輸入車に関税のハードルを課すことで国内外のメーカーに米国内での生産を促し、製造業を復活させると主張する。思惑通りになるかは疑問だ。
米国や日本などのメーカーはメキシコやカナダに工場を構え、貿易協定に基づき無関税で米国に輸出してきた。関税を回避するため米国に拠点を移しても、高い人件費が難点になる。
部品も関税の対象となれば輸入コストがかさむ。米国内で完成させた自動車でも価格上昇は避けられず、米国のメーカーも打撃を免れることはできない。
トランプ氏はこれまで、関税発動の直後に一部の適用除外を表明するなど一貫性を欠く対応が目立つ。政策の展開が見通せず、企業は米国内への投資に慎重にならざるを得ないだろう。
米国では日本メーカーが得意とするハイブリッド車(HV)が人気を集める。関税によって価格が上昇した場合には米国の消費者が不利益を被る。トランプ氏はこれらの現実を直視し、独善的な関税措置を取り下げるべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月28日 08:57:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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