【社説②】:米3月利上げへ 混乱招かぬ金融政策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:米3月利上げへ 混乱招かぬ金融政策を
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、条件が整えば3月に事実上のゼロ金利政策を解除する意向を示した。
パウエル氏が利上げの時期を明示するのは初めてだ。
金融緩和のために購入した米国債などの資産を、利上げ開始後に縮小していく方針も表明した。
米国の物価上昇率は7%という記録的高水準にある。景気過熱を防ぐため、金融を引き締めていく方向性は妥当と言えよう。
問題は、FRBの情報発信が分かりにくくなっていることだ。
これまで今年3回行うと想定していた利上げについて、パウエル氏は11日の米議会で回数増を示唆した。一方、今回の記者会見では回数への明言は避けた。
これでは市場関係者が戸惑うのではないか。実際、パウエル氏が表向きの言葉以上に引き締めに積極的だとの見方も広がり、株式市場は動揺が続いている。
米国の金融政策が世界に与える影響は大きい。FRBは市場と丁寧に対話しながら、慎重で状況に即したかじ取りに努めてほしい。
米株価は年明け以降、大きく下げている。26日には当初前日比500ドル超上げたが、パウエル氏の会見が始まると下げに転じた。
日経平均も今年に入って下落が著しい。きのうの終値は前日より841円も下げた。
昨年までの世界的株高には、金融緩和マネーによるバブルの側面もあろう。緩和の出口での株安は避けられないとはいえ、行き過ぎると弊害は小さくない。
株安が続けば、企業による設備投資や賃上げの意欲が低下しかねない。個人消費も減退して景気悪化を招きうると認識すべきだ。
米国の利上げを織り込んで日米の金利差は広がっており、円安ドル高が一段と進んでいる。
円安は輸入物価を上げ、原油や食品など多くの品目の値上がりを招く。燃料高などに苦しむ家計に一層の打撃とならないか心配だ。
米国の利上げは新興国・途上国から資金を流出させかねない。コロナ禍で疲弊した経済がさらに弱る事態は避けるべきだ。
FRBは地政学上のリスクにも留意してもらいたい。直近ではウクライナ情勢が挙げられる。
ロシアが軍事行動に出た場合に欧米が経済制裁すれば、ロシアは自国産原油・天然ガスの輸出制限で報復する恐れがある。
ロシア産ガスに頼る欧州にとどまらず、世界経済に悪影響を及ぼしうることにも配慮が必要だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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