【編集日誌】:年越しの魚
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【編集日誌】:年越しの魚
年末年始、県内の各家庭では、どんな料理が食卓を彩るのだろう。こんな質問を本紙「ライフ」面で読者にしたところ、寄せられたお便りに共通していたものの一つが、大みそかの魚だった
▼会津では焼いた塩ザケ、浜通りではカレイの煮付け。ともに大みそかに神棚へ供え、家族で食べる伝統の年越し料理だ。中通りでは郡山名物コイの甘露煮も挙がったが、県北からは「カレイです」とのお便りが多かった
▼サケとカレイが年越しの魚になった理由は、いくつか考えられる。寒い時期に脂がのって、おいしい。サケは日本海、カレイは太平洋から、それぞれ輸送しやすい地域へ広まったのだろう
▼お便りの中には味わい深い一文も見つけた。「明治生まれの祖母は大みそか、紅さかなに白飯が食べられるのが何よりのごちそうだったと言ってましたよ」。紅さかなはサケを指すが、子持ちガレイも、白身に卵の赤が映える。おめでたい紅白である
▼そんなシンプルだが特別な食卓で、食事のできるありがたさをかみしめたのが、大みそかの魚の原点のような気がする。コロナ禍で平穏とは言えなかった今年の最後の一日。きょうまでやってこられた幸せを先人にならい、かみしめてみる。
元稿:福島民友新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【編集日誌】 2021年12月31日 08:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます