路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説・07.02】:能登地震から半年 7月からのカレンダー

2024-07-02 07:18:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【社説・07.02】:能登地震から半年 7月からのカレンダー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・07.02】:能登地震から半年 7月からのカレンダー

 元日の能登半島地震で被害の大きかった石川県能登町宇出津(うしつ)に、7月から始まるカレンダーがあります。毎年7月第1週の週末にある「あばれ祭」が、この港町にとって一年の始まりだからです。地元の小学校では、祭りの翌日にはもう、「祭りまであと○○日」と黒板に書き出されると聞きました。地震の影響で危ぶまれましたが、5、6日の開催に向け、町は活気づいています。

 約350年前の江戸時代、この地域で流行した疫病が京都から迎えた祭神によって鎮まったため、奉灯をかつぎ、地元の八坂神社へ詣でたのが始まりとされます。各町内から出る「キリコ」と呼ばれる高さ7メートルの奉灯40本が練り歩き、2基の神輿(みこし)を川や火の中に投げ込むなど、担ぎ手があばれ回る奇祭でもあります。

 ◆「祭りの宝庫」襲った災害

 闇の中でたかれる大たいまつの炎とキリコの光が乱舞する光景に、ドイツ文学者の故・池内紀さんは著書「祭りの季節」の中で「わが国に残されている祭礼のなかで、宇出津キリコはもっとも火と明かりの威力と美しさを見せつける祭り」と書き残しました。
 
 祭りを取り仕切る宇出津祭礼委員長の新谷俊英さん(70)には迷いもあったといいます。それでも「前を向きたい」と開催に踏み切りました。「能登人(のとじん)にとってキリコ祭りは生活に根付いた文化、先祖から受け継いだ血のようなもの」と新谷さん。近づく祭りを前に「地震で亡くなった人、今も避難している人がいる。例年とは違う意味合いがある」と表情を引き締めました。
 
 能登は「祭りの宝庫」です。とりわけ、夏から秋にかけ、能登半島一円、地域ごとにキリコ祭りが繰り広げられてきました。その数は約200。どの地域でも主役は巨大なキリコ=写真=です。
 
 
 多くは縦長の長方形で、多彩な文字や絵が描かれ神輿を先導します。大きさや豪華さを競い、個性あるキリコはそれぞれの地域の誇りになっています。
 
 しかし、地震の影響で多くの地域で、祭りの中止や縮小を余儀なくされているのも現実です。
 
 能登を代表する景勝地の一つ、見附島のある珠洲市宝立地区も、8月の「宝立七夕キリコまつり」の中止を決めました。能登でも最大級の高さ14メートルある6基のキリコが、打ち上げ花火を合図に、たいまつのたかれた海に入る様が壮観な祭りです。地区は建物倒壊と津波で壊滅的な被害を受け、キリコも1基を残して倉庫ごと津波で流失しました。
 
 発災から半年。災害関連死が増え、石川県内の死者数は300人に達しそうです。輪島、珠洲両市の1800世帯で断水が続き、2次避難を含め2千人以上が避難生活を強いられています。県の統計によると、被害の大きかった能登6市町では、1月から5月までの間に、人口が4千人近く減りました。多くは金沢市や県南部への転出とみられます。

 ◆増やしたい「関係人口」

 宝立地区の見附島観光協会の宮口智美さん(38)は「市外に出る人の気持ちは分かる。中には『珠洲から逃げた』という後ろめたさを感じている人もいると聞く。でも、そうは思ってほしくないし、祭りがやれれば、自然な気持ちで帰ってこられるのではないかと思うと、悔しい」と話します。
 
 祭りが地域コミュニティーの核になってきた能登では、仕事で故郷を離れることを「旅に出る」といい、残る人は「キリコ祭りには帰ってこいや」と声をかける土地柄です。仕事や進学で故郷を離れても、祭りや地域の行事でつながりを維持してきました。
 
 「関係人口」という言葉があります。拠点を別に持ちながら地域づくりに深くかかわり、時にその地域をもう一つの拠点にする人を指します。県はこの増加を復興プランの主要施策に盛り込みました。復興の過程で被災地と結びつきを持つ人を増やせるかどうか。祭りもその契機になるはずです。
 
 金沢大の井出明教授(観光学)は「祭りで地元に戻る人、新たに参加する人はまさに関係人口。限界集落と呼ばれる地域でも、定期的にやってくる人が多ければ『限界』と言えない」と指摘します。
 
 能登のキリコ祭りで先陣を切る「あばれ祭」。新谷さんは「祭りをできない地域の人にも、『復活させるんだ』という希望を与えたい」と力を込めます。7月から始まるカレンダーが、能登復興へのカウントダウンにもなってほしいと願います。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年07月02日  07:18:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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