【社説①・04.14】:先島の住民避難 綿密な計画で離島の安全守れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.14】:先島の住民避難 綿密な計画で離島の安全守れ
中国は台湾への軍事的な威圧を強めている。万一、有事となれば、先島諸島にまで被害が及ぶ危険性は高い。
官民が協力し、離島の人々を守るための綿密な避難体制を整えねばならない。
政府が、台湾有事を念頭に、先島諸島の住民を九州などに避難させる計画を発表した。日本への武力攻撃が発生した「武力攻撃事態」や、その可能性が高い「武力攻撃予測事態」に適用される、国民保護法に基づいた計画だ。
計画は、宮古島や石垣島、与那国島などの住民11万人と、観光客1万人の計12万人を、民間の航空機と船舶を活用して6日間で九州に運ぶ想定だ。避難した住民は、九州の全7県と山口県の計32市町のホテルや旅館が受け入れる。
政府と各県は、航空・海運会社の協力を取り付けた。宿泊施設に対しては、避難住民の受け入れを要請している。
有事の際、国民を保護することは国と自治体の責務だ。双方が協力し、初めて避難計画をまとめたことは評価したい。
南西地域の安全保障環境が急速に悪化し、地元住民の危機意識が高まったことも、今回の計画策定につながったのだろう。
ただ、解決すべき課題は、なお残っている。
住民の避難は武力攻撃予測事態の段階で始めるというが、事態が悪化し、航空・海運会社の協力を得られない状況も生じうる。その場合、自衛隊と海上保安庁が避難に携わることになる。
自衛隊は武力攻撃に対処しつつ、住民避難まで手が回るのか。様々な状況を想定して作戦計画を検討しておくことが重要だ。
先島諸島には、要介護者や障害者ら「要配慮者」が8000人近くいるという。こうした人たちの移動手段や、付き添う医療従事者らの確保も重い課題だ。
政府は来年度に、細部を詰めた最終的な避難計画をまとめる予定だ。計画を「絵に描いた餅」に終わらせないためには、住民への周知を徹底するとともに、できるだけ多くの人が参加する実動訓練を重ねていくことが大切だ。
石垣市や与那国町は、緊急時に自衛隊が地元の空港を活用できるよう、滑走路の延長などを求めているが、空港管理者の沖縄県は「攻撃目標になる恐れがある」として認めようとしていない。
旧態依然とした「巻き込まれ論」にとらわれていて、住民の安全を確保できるのか。県は現実の厳しい安保環境を直視すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月14日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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