【余禄】:日本では「判官びいき」といわれるが…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:日本では「判官びいき」といわれるが…
日本では「判官(ほうがん)びいき」といわれるが、不利な立場にある人を見ると応援したくなる心理を「アンダードッグ(負け犬)効果」という。マーケティングではそれなりに一目置かれる心理で、それを狙うCMもある▲不人気をあえて宣伝して話題となる商品もあるから、知恵は使いようである。アンダードッグ効果の逆は「バンドワゴン(楽隊車)効果」で、こちらはヒット商品や行列のできる店を吹聴(ふいちょう)して、人気が人気を呼ぶ力学に乗るものだ▲マーケティングの世界はそうだが、こと政界において自民党議員のバンドワゴン――勝ち馬に便乗する気迫には本当に舌を巻く。岸田文雄(きしだ・ふみお)氏が予想に反して1回目投票から1位となり、決選投票も圧勝してみせた自民党総裁選だった▲予想では1回目投票で1位になるとみられたのは河野太郎(こうの・たろう)氏だった。しかし安倍晋三(あべ・しんぞう)前首相の推す高市早苗(たかいち・さなえ)氏の陣営の支援により決選投票での岸田氏の優勢がはっきりすると、議員票は一気に勝ち馬・岸田氏に流れこんだようである▲池田勇人(いけだ・はやと)以来の戦後保守本流と呼ばれる宏池会(こうちかい)に属する首相の誕生は久々となる。安倍氏や菅義偉(すが・よしひで)首相と異なる政治路線を期待する向きもあるが、安倍氏がキングメーカーとなっての総裁選勝利は今後の政権運営にどう影響するのか▲いや、そればかりかバンドワゴン上はいつの間にか「判官びいき」と無縁な便乗客がひしめいている。岸田氏が総裁選とひと味もふた味も違う国民の審判に堪(た)える「顔」になれるかどうかの総選挙までだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2021年09月30日 02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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