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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.22】:阪神・淡路大震災から29年 指定避難所B&T、国費で全額まかなったらどうだ

2024-02-12 08:01:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.22】:阪神・淡路大震災から29年 指定避難所B&T、国費で全額まかなったらどうだ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.22】:阪神・淡路大震災から29年 指定避難所B&T、国費で全額まかなったらどうだ 

 先週17日午前5時46分、私は神戸・東遊園地からのテレビ中継に合わせて阪神間と、そしてもう1カ所、能登に向けて黙とうをささげた。阪神・淡路大震災は発生から29年を迎えた。追悼のつどいの竹灯籠の文字は、今年は「寄り添うよ」の思いを込めた“ともに”だった。

 黙とうの前、テレビに流れた当時の映像と、その時点で1万5000人の人々が避難所生活を送る能登の姿をダブらせながら、私の胸にあの時のひとつの光景が浮かんだ。

 発生から10日余り。早朝、神戸の中学校の避難所を訪ねると、世話役の方が「きょうだけは取材を遠慮して」と言う。先ほど高齢の男性が息をしていないことがわかった。持病があった上に極寒の日々、疲労も重なったらしい。敷き詰められた雑魚寝の布団の向こうに家族らしい人の姿があった。

 そして同じ季節の能登。震災関連死が日々増える中、体育館の床に敷き詰められた布団のテレビ映像を何度見たことか。避難所に欠かせないのはB&T、ベッドとトイレと気づかせられ、この間に吹雪が舞っていたあの東日本大震災も経験しておきながら、一体、私たちは何をしてきたのか。

 段ボールベッドや簡易テントは寒さ対策になるし、プライバシーも守られる。何より軽量で備蓄しやすい。そして避難所に井戸を掘れば、生活用水とトイレの問題が解決することは原発被害の福島で明らかになった。

 いますぐこの2点を指定避難所に義務づけ、国費で全額まかなったらどうだ。

 能登はやさしや、土までも-。そんな能登の人々や土地柄、そして東北の人々の辛抱強さにすがっていてはいけない。阪神・淡路大震災29年は、そのことを突きつけている。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2024年01月22日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.15】:震災と羽田の事故から 懸命の叫び声と責任逃れの声と…

2024-02-12 08:01:10 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.15】:震災と羽田の事故から 懸命の叫び声と責任逃れの声と…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・01.15】:震災と羽田の事故から 懸命の叫び声と責任逃れの声と… 

 今も厳しい状況が続く能登半島地震と、翌日の日航機と海保機の事故から半月。私の胸にはいまだに女性たちの声や姿が焼きついている。震災発生の日、NHKテレビから津波警報が出た現地の映像とともに、山内泉アナの叫び声が響いた。「逃げて。今すぐ避難して」「大切な人が心配でも、まずは自分の命を」…。

 結果、局地的には5メートルの津波。海辺ではない地域でも、どれほど多くの人が危険な家屋から避難したことか。朝日新聞の「声」欄にも「『逃げて』力強いテレビの連呼」の投稿があった。

 聞けば山内アナの初任地は金沢放送局。見知らぬ土地で出会ったあの顔、この顔を思い浮かべていたのだろうか。

 翌2日の日航機炎上事故。乗客が撮った映像には煙が立ち込めるなか、怖がる子どもに目配りしながら「鼻と口をふさいで姿勢を低くして」「荷物は持たないで」と必死に叫ぶCAの女性の姿があった。わずか18分で乗客367人全員の脱出。海保機の不幸もあって称賛の声は上げづらくても、どれほどの国民が「ありがとう」とつぶやいたことだろうか。

 その一方で、がっかりすることにも出合った。5日夜、新幹線を新大阪駅で降りようとすると、座席にスマホの忘れ物。折よくデッキにいた警備員に伝えると、ここまでの乗務だったのか、嫌そうな顔をして「車掌が気がつくでしょう」と言って降りて行ってしまった。

 忘れ物は業務外かも知れないが、こんな姿勢で1323席の乗客の安全を守れるのか。常々思っているのだが、「運転士、車掌は○○」という車内放送に警備員の名も入れたらどうか。それだけでも気の持ちようが変わってくると思うのだ。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)

 ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2024年01月15日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治とカネ考】:政治資金制度は先進国の標準に達していない 透明化が急務、現金受け取りは原則禁止して報告書は電子化を

2024-02-12 07:14:50 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政治とカネ考】:政治資金制度は先進国の標準に達していない 透明化が急務、現金受け取りは原則禁止して報告書は電子化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治とカネ考】:政治資金制度は先進国の標準に達していない 透明化が急務、現金受け取りは原則禁止して報告書は電子化を

 ◆<政治とカネ考>駒沢大教授(政治学) 富崎隆さん

  ―自民党派閥の裏金事件をどう見る。

 「民主政治でお金が動くことは必ずしも悪ではない。米大統領選で無名候補だったオバマ氏が資金を集めて勝利したように、政治資金には『民主主義の血液』という役割がある。だが、お金がかかりすぎれば金持ちしか政治家になれず、汚職や腐敗につながる。民主政治自体への信用も失いかねない。そんな危機にあるのが今の状況だ」

 ■富崎隆(とみさき・たかし) 1965年生まれ。2010年から現職。現代英国政治を中心に政党や政治資金、選挙制度の比較研究を専門とする。共著に「政治学への扉」「日本の統治システム」など。

◆分かれた政治家の「財布」は一本化を

 ―政治資金制度は見直しを重ねてきた。
 
 「1994年の政治改革で小選挙区制が導入された効果もあり、55年体制下の中選挙区制時代より政治資金の総額や選挙買収の摘発件数が減っているのは間違いない。ただ、欧米に比べたら不十分な面が残り、先進国の標準に達していないと言わざるを得ない」
 
 
裏金問題について話す駒沢大の富崎隆教授

                 裏金問題について話す駒沢大の富崎隆教授

 ―何を改革すべきか。
 
 「透明化の徹底が急務だ。そのために、資金管理団体や政党支部などに分かれた政治家の財布を一本化する。政治資金収支報告書に氏名などを記載する基準は、パーティー券購入も寄付も1万円超に統一する。デジタル化も各国より遅れている。米国では報告書をデータ化してネット公開しており、検索しやすい。日本も現金授受を原則禁止し、報告書は電子化すべきだ」

◆総務省や選挙管理委員会は形式的な点検しかできない

 ―監督体制も弱い。
 
 「総務省や選挙管理委員会は形式的な点検しかできないため、収支を恒常的にチェックし訂正を求めるような第三者の監査機関が必要だ。米国や英国には資金の流れを把握する独立機関があり、けん制が働いている。日本では政治資金の不正にいきなり刑事罰が科されるが、権力組織である検察の恣意(しい)的介入を許す危険もある。その点でも独立機関があった方がいい」
 
 ―税金が原資の政党交付金に課題は。
 
 「自民党が毎年150億円超を受け取るなど、日本の政党助成は民主国家では最大規模に上る。自ら資金を集めて政策を実現していくのが本来の民主主義の姿だ。ドイツには党が自ら集めた収入と同額を公的助成の上限とする規定がある。こうした工夫で交付金の規模はもっと抑えられるはずだ」(聞き手・近藤統義)
 
                 ◇


<連載:政治とカネ考>
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・連載・政治とカネ考・自民党派閥の政治資金パーティー裏金】  2024年02月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治とカネ考】:非課税・使途非公開のカネ、国民とずれている 政治資金の監査を厳格に 収支報告書の訂正もルールが必要

2024-02-12 07:14:40 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政治とカネ考】:非課税・使途非公開のカネ、国民とずれている 政治資金の監査を厳格に 収支報告書の訂正もルールが必要

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治とカネ考】:非課税・使途非公開のカネ、国民とずれている 政治資金の監査を厳格に 収支報告書の訂正もルールが必要

 ◆<政治とカネ考> 政治資金監査人の弁護士・金子春菜さん

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。

 ■金子春菜(かねこ・はるな) 1984年、奈良県生まれ。2016年に弁護士、登録政治資金監査人に登録。13年から3年間、国会議員秘書を務めた。編著に「こんなときどうする?選挙運動150問150答」(ミネルヴァ書房)。

◆後から「政治団体が受け取るはずだった」と言い逃れできてしまう

 ―国会議員秘書の経験から今回の事件をどう見る。
 
 「民間企業であれば資金の出入りを厳しくチェックするのが当たり前だが、政治の世界は感覚がずれている。『政策活動費』など使途を明らかにしなくていいお金があり、課税されないという点も一般の国民とずれを生んでいるのではないか」
 
自民党の派閥や裏金問題などについて話す金子春菜弁護士

自民党の派閥や裏金問題などについて話す金子春菜弁護士

 ―なぜ裏金処理が行われたと考えるか。
 
 「政治資金規正法は派閥から政治家個人への寄付を禁止しているが、(政治団体への寄付は禁じられていないため)『政治団体が受け取るはずだった』と言い逃れできてしまう。この違法な寄付を隠すために政治資金収支報告書に記載しなかったとみている」
 
 ―政治資金の監査はどうなっているのか。
 
 「2006年に発覚した国会議員の事務所費問題を受け、研修を受けた弁護士や公認会計士、税理士ら『登録政治資金監査人』による監査が義務付けられた。ただ、『政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる』ことを目指した規正法の目的を貫徹するには不十分だ」

  ■政治資金の監査 国内では2009年分の収支報告書から、国会議員関係政治団体に「登録政治資金監査人」による支出の監査が必要になった。海外では独立監査機関として米国の連邦選挙委員会(FEC)や英国の選挙委員会が代表的。FECは違法行為が疑われれば文書での質問や現地調査を行う。民事罰として過料を科すこともでき、刑事事件としての立件は司法省に付託する。選挙委員会も違法行為の調査や民事制裁を加える権限がある。

 ―課題は。
 
 「監査が入るのは国会議員が代表の資金管理団体などに限られ、派閥は対象外だ。さらに、点検するのは支出のみで収入は見ない。会計帳簿などの書類がそろっているかや書類の記載が整合的かどうかなど外形的な審査にとどまり、支出の妥当性の評価はしなくていいことになっている」

◆使途不明金を生まない透明化の仕組みを

 ―監査を実効性のあるものにするためには。
 
 「収入もチェックすべきだ。そのために監査人の職務権限の拡大や、第三者による監査機関の設置が考えられる。監査を厳しくしても裏金処理すれば見抜けない。とにかく、使途不明金を生まない透明化の仕組みが大前提だ。会計責任者だけでなく議員も連帯責任を負う連座制を導入し、収支報告書の訂正にもルールを定めた方がいい」
 
 ―自民党に求めることは。
 
 「党の政治刷新本部で制度の見直し議論が先行していることには違和感がある。なぜ裏金を作ったのか、何に使ったのか。派閥の解散とともに、こうした実態解明にこそ、最優先で取り組むべきだ」(聞き手・近藤統義)
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・連載・政治とカネ考・自民党派閥の政治資金パーティー裏金】  2024年01月29日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治とカネ考】:大激論の末に自民党がつくった「大綱」を岸田首相は踏みにじった 「あしき慣習」禁止でカネのかからない政治へ

2024-02-12 07:14:30 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政治とカネ考】:大激論の末に自民党がつくった「大綱」を岸田首相は踏みにじった 「あしき慣習」禁止でカネのかからない政治へ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治とカネ考】:大激論の末に自民党がつくった「大綱」を岸田首相は踏みにじった 「あしき慣習」禁止でカネのかからない政治へ

 ◆元自民党職員 政治アナリスト 伊藤惇夫さん

 ―派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を契機に、1989年に自民党が決定した「政治改革大綱」の意義が見直されている。当時の状況は。

 ◆抵抗勢力と改革派との間で4カ月にわたって大激論

自民党の政治改革大綱作成の背景や裏金問題について話す政治アナリストの伊藤惇夫氏

自民党の政治改革大綱作成の背景や裏金問題について話す政治アナリストの伊藤惇夫氏

 「自民党職員だった私は、後藤田正晴元官房長官から指示を受け、政治改革委員会のスタッフとして大綱の策定に関わった。政治不信に対する党幹部の危機感は高く、若手議員も『政権から転落しても改革をやるんだ』との気迫に満ちていた。まずは事実を洗い出そうと、複数の大物議員からヒアリングをしたほか、非公開のものも含めると70回以上は議論した。『自由な政治活動ができなくなる』と反発する抵抗勢力と改革派との間で4カ月にわたって大激論を交わした結果、政治資金の収支の透明性を『ガラス張りの努力』で高めることなどを明記した大綱が党議決定された」

 政治改革大綱 有力政治家らに未公開株が賄賂として譲渡されたリクルート事件への反省と信頼回復への決意を示すため、自民党が1989年5月に決定した改革の基本方針。政治資金の公開性を徹底することによる「ガラス張りの政治」の実現をうたったほか、「派閥の弊害除去と解消への決意」として、総裁、幹事長ら党幹部や閣僚が在任中は派閥を離脱することが盛り込まれた。

 ―大綱に記載された政治改革の具体策が実行されてきたとはいえない。
 
 「大綱が踏みにじられたからこそ、今回の事件が起きた。政治家のカネの流れは、ガラス張りどころか鉄の扉の向こう側だ。岸田文雄首相(党総裁)は最近まで、大綱が否定している派閥会長と総裁の兼務を続け、大綱が自粛を求めたはずの大規模な政治資金パーティーの開催も重ねてきた。『政治刷新』を掲げる前に、大綱の精神を踏みにじったことを謝罪すべきだ」

 ◆スピード違反の常習犯を交通指導員にするようなもの

 ―派閥が存続したことの弊害は。
 
 「中選挙区制廃止や政党交付金の導入で、公認権やカネは派閥から党に移った。派閥は自然消滅するとみられていたが、人事で優遇されるとの期待感を背景に延命した。結果、唯一残された資金源である政治資金パーティーが大規模化し、裏金の温床になった」
 
 ―どう改革すべきか。
 
 「自民の政治刷新本部に改革を委ねるのは、スピード違反の常習犯を交通指導員にするようなもの。政治資金規正法の改正を議員立法でやれば、国会で多数を占める自民が主導権を握ってしまう。首相は、第三者機関に改革案をつくってもらい、全面的に反映した改正法案を国会に提出すべきだ。大綱の精神に立ち返れば、派閥のパーティーの禁止や企業・団体献金の禁止が必要だ」
 
自民党の政治改革大綱作成の背景や裏金問題について話す政治アナリストの伊藤惇夫氏

自民党の政治改革大綱作成の背景や裏金問題について話す政治アナリストの伊藤惇夫氏

  ―政治はカネがかかるとの「常識」は変わるか。
 
 「現行法では合法とされる支出の中にも、地方議員への陣中見舞いなど、市民の感覚で考えればおかしなものが多々ある。有力者をつなぎ留めるための会食やカネ配りは、あしき慣習だ。こうした行為を全面的に禁止すれば、政治にそんなにカネはかからない。政治家にとっても悪い話ではないはずだ」(聞き手・大野暢子)

 伊藤惇夫(いとう・あつお) 1948年、神奈川県生まれ。学習院大卒。73年から94年まで自民党に勤務。退職後は羽田孜、小沢一郎両氏らが同年に結成した新進党に移り、98年に野党4党が合流して誕生した民主党などで事務局長を務めた。現在は政治アナリスト。

                 ◇

<連載:政治とカネ考>
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・疑惑・連載「政治とカネ考」】  2024年01月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治とカネ考】:「政治家の税金優遇」は廃止して課税していくべきだ 国民の税負担に必要な「信頼の基礎」が失われた

2024-02-12 07:14:20 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政治とカネ考】:「政治家の税金優遇」は廃止して課税していくべきだ 国民の税負担に必要な「信頼の基礎」が失われた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治とカネ考】:「政治家の税金優遇」は廃止して課税していくべきだ 国民の税負担に必要な「信頼の基礎」が失われた

 ◆<政治とカネ考> 青山学院大名誉教授(税法)・三木義一さん

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。

  ■三木義一(みき・よしかず) 

 1950年、東京都生まれ。専門は税法。弁護士、元政府税制調査会専門家委員会委員。青山学院大教授などを経て2015〜19年に青学大学長を務めた。「日本の税金」「税のタブー」など税制に関する著書多数。

 ◆「税金逃れ」を可能にする政治家の論理とは

 ―自民党派閥を巡る裏金に税金はかからないのか。
 
 「派閥などの政治団体が政治資金パーティーを開いて収入を得ても、法人税の対象となる『収益事業』とは実務上扱われず、非課税となる。その収入が今回のように議員に還流された場合、受け取った側の『雑所得』になり、所得税の納税義務が生じうる」
 
 ―議員らが申告していなければ税逃れでは。
 
 「裏金の使途がいまだ明らかではないが、そのお金を私的に使っていれば脱税に当たる可能性がある。ただし、政治活動に支出していれば必要経費として控除できる。全て政治活動に使ったので申告しなかったという言い分が成り立ってしまう」
 
三木義一さん(資料写真)

三木義一さん(資料写真)

  ―ずさんな対応に政治不信が高まっている。
 
 「私たち国民は政党交付金の原資となる税金を1人250円負担している。お金にきれいな政治にするという約束で導入した制度だった。その政治家たちが政治資金を裏金処理していたことに、納税者はもっと怒っていい。税金の使い道を決める権限がある人たちが自らを一番に律すべきで、税負担を求めるのに必要な信頼の基礎が失われてしまった」

◆政治家がルールを決める限り、自ら不利になる制度にしない

 ―政治資金に関し、安倍晋三元首相の政治団体を妻の昭恵氏が引き継ぎ、安倍氏の別の5団体から計約2億円が無税で移された。
 
 「政治団体の代表者を親族に交代したり、団体間で寄付の形で資金を移したりしても相続税や贈与税はかからない。政治団体を利用した課税回避の手法で、これまでも繰り返されてきた。これは違法ではないが、非常に問題だ」
 
 ―具体的な問題点は。
 
 「税負担なしで親から莫大(ばくだい)な政治資金を引き継げば、他の候補との決定的な差となり選挙に当選しやすい。国民の税金を預かる仕事が家業として承継できてしまう。世襲政治家ばかりが生まれる温床の一つだ」
 
 ―政治家や政治団体への税制優遇は必要なのか。
 
 「政治活動は営利目的ではなく公益目的であり、自由に行われなければいけない。そのためには課税権力は介入しない方がいいという考えが建前としてあるが、政治家が税制を決めている限り自らに不利になる制度にはしないだろう。一度、政治家から独立した第三者にルールを作ってもらった方がいい。政治家や政治団体の優遇措置は廃止し、一般国民と同じ扱いで課税していくべきだ」(聞き手・近藤統義)

  ■政治資金と税

  政治家個人の収入では、国会議員の給与にあたる歳費に所得税が課される。寄付を受けた場合は雑所得となり、所得税の対象となる。調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)や立法事務費は非課税。政党や派閥などの政治団体は寄付やパーティーで集めた収入は原則として課税されず、収益事業のみ法人税の対象となる。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・疑惑・連載「政治とカネ考」】  2024年01月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【政治とカネ考】:「世襲議員」の存在が政治不信を招く 「親の地盤」からの立候補禁止など選挙制度の見直しが必要だ 

2024-02-12 07:14:10 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政治とカネ考】:「世襲議員」の存在が政治不信を招く 「親の地盤」からの立候補禁止など選挙制度の見直しが必要だ ◆駒沢大教授(政治制度論)・大山礼子さん

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治とカネ考】:「世襲議員」の存在が政治不信を招く 「親の地盤」からの立候補禁止など選挙制度の見直しが必要だ ◆駒沢大教授(政治制度論)・大山礼子さん

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。

 ◆大山礼子(おおやま・れいこ) 1954年東京都出身。79〜95年国立国会図書館勤務。2003年から駒沢大法学部政治学科教授。専門は政治制度論。著書に「政治を再建する、いくつかの方法」(日本経済新聞出版社)など。

 ◆選挙が「個人戦」になってしまっている

 ―今回の問題で、国会議員個人が多額の政治資金を集めて活動している状況が浮き彫りになった。
 
 「多額の政治資金を必要とする原因は、今の選挙制度が『個人戦』になっていることにある。30年前の政治改革で、衆院の選挙制度を中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変えた際のテーマは『政党本位・政策本位』だった。議員(候補者)個人の資金力が影響しない選挙制度を目指したはずだったが、徹底できなかった」
 
 ―なぜ選挙が個人戦になったのか。
 
 「小選挙区で負けた候補者が比例復活するには、同じ政党内で惜敗率を争わなければならず、参院や地方議員選挙では党内競争につながる中選挙区制がそのまま残った。完全な政党本位にはならなかった」

◆制度見直しは、政治が変わる大きなシグナルに

 ―選挙制度の見直しは必要か。
 
 「必要だ。政治が変わる大きなシグナルになる」
 
 ―政治不信が続くとどうなるのか。
 
 「自分たちが選んでいる人を信頼できなければ、独裁者を生みかねない。議会制民主主義の根本が揺らぎ、非常に危ない」
 
選挙制度の見直しの必要性を語る大山礼子さん

選挙制度の見直しの必要性を語る大山礼子さん

 ―何が政治不信を招いているのか。
 
 「最大の要因は、世襲議員の存在だと思う。3代目、4代目が首相や閣僚を務めることで(一般市民が)『自分たちは議員になれるはずがない』という感覚を持ってしまっている。これは非常にまずい。親の遺産も政治団体を経由させることで相続税なしで受け継ぐことができ、『地盤・看板・カバン』が簡単にそろう。世襲政治家は圧倒的に有利で、親の選挙区からの立候補を禁じるなどの見直しが必要だ」

◆企業献金は禁止、個人からに切り替えるべき

 ―政治資金制度の見直しは。
 
 「改革が不徹底に終わったのは政治資金も同じだ。企業や団体からの献金はばっさり禁止し、個人からの献金に切り替えるべきだ。パーティー券も個人しか買えないようにすれば良い。米国では、支持者がおしゃれをして党大会に出かける。個人で献金を出すから政治に関心をもつ。企業や団体から献金を集める仕組みが続けば、個人にアプローチするようにならないのではないか」
 
 ―自民党内からは「制度より意識を変えることが先だ」という声も聞く。
 
 「意識を変えるには、まずは制度を変えることが重要だ。地方では議員のなり手不足が深刻で、すでに政治が崩壊している。もし小手先の改革に留まれば、日本は沈没する」
 
 ―派閥の存廃は。
 
 「政策集団としての派閥はあってもよいが、金の流れを完全に明らかにする必要がある。アナログ時代の発想をやめ、現金の収受を禁止し、金融機関を通せば1円からすべて記録しデータ化することができる。われわれの研究費の支出も、すべてオンラインで処理され分かるようになっている」
(聞き手・大杉はるか)

 ■衆院選挙制度改革

 1988年に発覚したリクルート事件など「政治とカネ」を巡る一連の事件を受け、政治に金のかかる原因は同一政党の候補が争う中選挙区制度にあるとされた。89年に発足した第8次選挙制度審議会(首相の諮問機関)は90年、小選挙区比例代表並立制を柱とする改革案を答申。94年の法改正で同制度の採用が決まり、小選挙区300人、比例代表200人とした(現在は小選挙区289人、比例代表176人)。政党に小選挙区候補者の届け出などを認め、政党本位の制度を目指した。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・「政治とカネ考」】  2024年01月19日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【自民党】:細川護熙氏と河野洋平氏がバッサリ「企業献金はやめる約束」 1994年政治改革の与野党トップにインタビュー

2024-02-12 07:12:00 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【自民党】:細川護熙氏と河野洋平氏がバッサリ「企業献金はやめる約束」 1994年政治改革の与野党トップにインタビュー

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:」【自民党】:細川護熙氏と河野洋平氏がバッサリ「企業献金はやめる約束」 1994年政治改革の与野党トップにインタビュー

 リクルート事件に端を発した政治不信の高まりを受けた「平成の政治改革」から30年。当時、主役を演じたのは、非自民連立政権の細川護熙(もりひろ)首相(86)と野党自民党の河野洋平総裁(87)=肩書はいずれも当時=だ。1994年1月28日のトップ会談で、派閥政治の一掃を目指した衆院の小選挙区制導入や企業・団体献金の制限に道筋を付けた。自民党派閥を舞台に「政治とカネ」の問題が繰り返されている現状をどう見ているのか、2人に聞いた。(坂田奈央、宮尾幹成)

                ◇
 
政治改革関連法案の修正協議に臨む細川護熙首相(右)と河野洋平自民党総裁=1994年1月28日夜、国会内で

政治改革関連法案の修正協議に臨む細川護熙首相(右)と河野洋平自民党総裁=1994年1月28日夜、国会内で


このページに続いてインタビュー詳報があります。
▶2ページ目 細川護熙氏「今思えば、あそこで解散をやっていたら」
▶3ページ目 河野洋平氏「まとまらなければ、あの日で自民党は終わっていた」

  
             ◇ 

 ◆細川氏「約束をほごにされては困る」

 「全く意味がない、無責任な議論だ」。河野氏は、企業・団体献金の全面禁止に踏み込んでいない自民党内の議論を一蹴した。
 
 細川、河野両氏の協力で実現した政治改革関連法は、政党に公費助成する政党交付金制度を設ける代わりに、政治家個人への企業・団体献金を禁止。激変緩和のため政党への献金見直しは5年後に先延ばしするとの付則が付き、与野党協議で5年後に禁止することを確認した。だが、99年の法改正では政治家の資金管理団体への献金を禁じただけで、政党や政党支部への献金は引き続き容認した。
 
 河野氏は、企業・団体献金禁止の議論は「(94年の時点で)終わっているはずだ」と指摘。「自民党は(2023年で)約160億円もの公費助成を受けておきながら、やめると約束した企業・団体献金の『もらい方』の議論をしている」と批判した。
 細川氏も「企業・団体献金は5年たったらやめるという約束を直ちにやることが第一だ。ほごにされては困る」と苦言を呈した。

◆河野氏「名称が『政策集団』だからといって認めるのはおかしい」

 自民党は今、カネと人事の機能を切り離しつつ「政策集団」としての存続を認める方向で議論を進める。
 派閥のあり方に関して、自民党参院議員時代に派閥に所属した経験もある細川氏は「派閥はどんな世界でもすぐできる。裏金づくりなど悪いことをするから問題なのであって、そうでなければ問題にならない」と語った。
 一方、かつて河野グループ(現・麻生派)を率いた河野氏は「派閥は任意団体みたいなもので、本来の党の仕組みにはない。政策は政調会で議論するのであって、名称が『政策集団』だからといって認めるのはおかしい」と論評した。

 政治改革関連法 衆院の小選挙区比例代表並立制、企業・団体献金の制限、政党交付金の導入を柱とする一連の法律。改正公職選挙法、改正政治資金規正法、政党助成法など4法からなる。細川護熙内閣が提出した当初案は1993年11月に衆院通過したが、参院では94年1月21日、与党と野党自民党の双方から多くの造反者が出る混乱の中で否決。衆院の再議決でも与野党の大量造反が想定されたため、衆参両院議長のあっせんで細川首相と河野洋平自民党総裁が28日夜からトップ会談。臨時国会最終日の29日未明、自民案に沿った修正案で合意にこぎ着け、同日中に成立に至った。

 細川護熙(もりひろ)元首相と河野洋平元自民党総裁は東京新聞のインタビューに、30年前のトップ会談を振り返りつつ、当時取り組んだ政治改革で積み残された課題を指摘した。それぞれの立場から、現役の国会議員たちに注文も付けた。(聞き手・坂田奈央、宮尾幹成)

 
【細川護熙元首相インタビュー詳報】

◆政治改革という一つの旗を立てれば

 —「平成の政治改革」で中心にいた立場から、今の政治改革の議論をどう見る。
 
 「当時の政治改革はものすごく熱気があった。与党も野党もマスコミもそうだし、(各界の有識者が集まった)民間政治臨調もすごく熱心だった。政治改革が進むかもしれないという期待感が国民にあったと思う。経済界や労働組合にも強力にサポートしていただいた。そうした状況と比べると、今は熱気はない。野党にちょっと元気がないんじゃないか」
 
インタビューに応じる細川護熙元首相

インタビューに応じる細川護熙元首相

 —現役の野党議員に助言する機会はあるか。
 
 「名前は伏せるが、ある野党幹部と最近会う機会があった。話したのは、いろいろ旗を揚げすぎると結局実りませんよということ。今はやはり政治改革一本で『この指止まれ』という一つの旗を立てないとだめだ。そういうやり方なら、いくらか期待できると思う」
 
 —当時の細川さんは、まさに政治改革という一つの旗印で非自民8党派をまとめていた。
 
 「それはもう、六つも七つも党をまとめて進もうという時は一つに絞らないと。欲張ったらだめだ。あの時は(自民党の)加藤(紘一)さん、山崎(拓)さん、小泉(純一郎)さんのいわゆる『YKK』もこちらに来たいという話があった。一歩遅れたために実現しなかったが、自民党議員にも来たいと思われたのは、旗を揚げるタイミングが良かったからだと思う。そういうやり方なら、今だって自民党からも間違いなく人が来る」
 
 —政権交代も可能な時期になってきていると。
 
 「そうだと思う。自民党がこういう状態だからチャンスだと思いますよ」
 
 —当時、細川政権にいた渡海紀三朗氏や茂木敏充氏が今、政調会長や幹事長として自民党の中枢にいる。
 「自民党が性根を据えるよう、中から突き上げてくださいと言いたいですね」

◆衆院の小選挙区制「合格点はいった」

 —30年前、自民党の河野洋平総裁とのトップ会談で合意に至った政治改革関連法は、小選挙区比例代表並立制と企業・団体献金の規制、政党交付金の導入が柱だった。評価と、積み残した課題を。
 
国会議事堂

国会議事堂

 「私はほぼ、合格点はいったと思っている。ただ、選挙制度について言えば、野党(自民党)の反対で定数が小選挙区300、比例200と、比例が少なくなった。これは早く、(連立与党が当初検討していた原案のように)小選挙区と比例を同数にしてもらいたい。それから参院の選挙制度改革にも取り組んでほしい。今の参院の選挙は、衆院のやり方とほとんど変わらない。全く変えないとだめだと思う」
 
 —小選挙区と比例の重複立候補で復活当選できる仕組みには批判も多い。
 
 「普通に考えるとおかしな話なんですよね。でも、党にとって大事な人を救済する、(小選挙区での)死に票をなくすという点では意味がある。小選挙区の欠点を補う仕組みになっている。私は必ずしも悪い制度とは思わない」

◆30年前与野党合意できなければ「おそらく自民党はつぶれていた」

 —政治資金の改革については。
 「まずまずだったと思っている。ただ、政党交付金を導入したのだから企業・団体献金は5年たったらやめるという(与野党協議での)約束をまず直ちにやることが第一じゃないか。あそこで骨格は書いてあるわけだから、ちゃんとそれをやってくださいよと。それをほごにされては困る。政治改革というのは、このくらいでいいだろうと放置せず、常にやり続けなければならない」
 
 —参院で法案が否決された後に行われた河野氏とのトップ会談は、政権の命運をかけた交渉だった。
 
政治改革関連法が成立し、河野洋平自民党総裁と握手する細川護熙首相(右)=1994年1月29日午後、国会内で

政治改革関連法が成立し、河野洋平自民党総裁と握手する細川護熙首相(右)=1994年1月29日午後、国会内で

 「もし(合意に至らず)衆院の再議決で否決されたら、抜き打ち解散をやっていたかもしれない。それも真剣に考えた。これは小沢(一郎)さんと2人しか知らない。今思えば、あそこで衆院を解散していたら面白いことになっていただろうなと。私としては、そちらの方が魅力的な選択肢だった。解散をやっていたら、おそらく自民党はつぶれていた。あの時は世論調査で『政治改革をやるべし』との意見が7〜8割ありましたから」
 
 「しかし実際には、どちらにするか非常に悩んだ。(竹下以降の)五つの内閣が関わって、(海部、宮沢の)二つの政権がつぶれて6年かかった政治改革の法案が、もうあと一歩で成立するわけだから。自民党案を丸のみしてしまえば、河野さんも反論のしようがない。ただ、私が考えていた内容とはかなり違う結果にはなってしまう」
 
 「最終的に、河野謙三さん(元衆院議長)からいつか言われた『7・3の構え』という言葉で、(自民党案の)丸のみを決断した。大事な問題を国会で議論するとき、7は野党の言い分を聞かなければいけないと。今回は、野党の自民党に大幅に譲ろうと思った」
 
 —衆院再議決で否決されて政治改革が止まった場合、衆院解散の可能性もあったと。そこはやはり心残りか。
 
 「そうですね。政権交代もろくにできないような今の状況を見てると、あのとき解散をしていたらどういう結果になっていたかな、と思う」

◆「政党というのは、期限を区切ってやることが大事」

 —自民党議員だった頃は田中派に所属していた。当時、派閥というものをどう思っていたか。
 
 「嫌でしょうがなかった。当時は田中派が全盛期で、その中で竹下(登)さんが独立するという話があって、竹下さんのところに行く人と二階堂(進)さんのところに行く人に分かれる。どちらとも親しくしていたが、ちょっとメシ食いに来いとか話がある。そういうのはかなわない。もちろん、諸先輩に教えてもらったこともたくさんありましたが」
 
政治改革関連法が成立した当時の様子や自民党の派閥について話す細川護熙元首相

政治改革関連法が成立した当時の様子や自民党の派閥について話す細川護熙元首相

 「ただ、派閥というのはどんな世界でもすぐにできる。だから『派閥が悪い』という言い方は、ちょっとどうなのかなと思う。裏金をつくったり悪いことをするから問題なのであって、そうでなければ問題にならない」
 
 —今の与野党、特に若手議員への注文は。
 
 「基本的な話ですが、与党でも野党でも、何をするんだっていうことを分かりやすくやってもらわないと困る。私は日本新党の時から、四つのやるべきことを明確にしてきた。一つは日本におけるベルリンの壁、つまり(当時)38年間続いた自民党一党支配を壊すこと。二つ目は歴史認識を明確にすること。三つ目はコメの開放。それから最後の一つは政治改革をやると。政治改革が最後だった。その四つをやり遂げたら日本新党も解党すると立党の時に宣言し、3年たってその通り解党した」
 
 「政党というのは100年、200年も続かなくてもいい。期限を区切ってやることが大事なんだと解党時にも話した。そうしたら小沢さんが『おれも一度そういうセリフを言ってみたいもんだ』と言ってましたけど。長い期間やることじゃなく、何をやるかということだ。岸田さんを見ていると、何をやりたいのか分からない。その辺のことを、若い人たちにもしっかり頭に置いてもらいたいなと思いますね」

 ■細川護熙(ほそかわ・もりひろ) 1938年、東京生まれ。上智大卒。朝日新聞記者を経て、71〜83年に自民党参院議員2期。72年、田中角栄首相が旗揚げした田中派に加わる。熊本県知事2期を務めた後、92年に日本新党を設立し、同年の参院選で国政復帰。93年7月の衆院選でくら替え当選し、非自民連立政権の首相に就任した。在任中の94年1月に政治改革関連法が成立。同年4月に退陣後は、新進党などを経て、98年に民主党結党を見届けて政界引退。現在はふすま絵、陶芸などの作家として活動する。 

【河野洋平元自民党総裁インタビュー詳報】

◆「党のため、派閥のための政治になっている」

 —政治資金パーティー裏金事件で、自民党の派閥のあり方が問われている。
 
 「ここのところ自民党が派閥にこだわり過ぎて、『派閥政治』になっていたのを心配していた。例えば、岸田(文雄)さんが首相になっても岸田派会長を引き続き務めていたのは全く異例なことだ。閣僚や党役員の在任中は派閥を離脱するという(1989年に党が決定した政治改革大綱の)ルールがあるはずなのに、最近はないがしろにされていた。国民のための政治であるべきものが、党のため、さらには派閥のための政治になっていた」
 
インタビューに応じる河野洋平元衆院議長

インタビューに応じる河野洋平元衆院議長

 —岸田首相が自ら率いた岸田派の解散を打ち出したのを皮切りに、同派や安倍派、二階派、森山派が次々と解散に踏み切った。
 
 「解消しても必ず、すぐできますよ。派閥の解消というのは過去に何度もあって、その都度、3日たたないうちに違う形ですぐ集まる。本当に解消された試しがない。看板のかけ替えみたいなことになりかねない」
 
 「本来、派閥というのは一代限りで、あいつに天下を取らせてこの政策をやるんだと思って同志が集まり、それが辞めたらいっぺん全部散って、また誰かとんがっているのを見つけて、そこに集まるという方がいい。派閥の会長が2代目、3代目になると、だんだん丸くなって、政策はどこかに行ってしまい、ただの世話役になる。世話役がいると便利だから、そこへ集まっているだけの話。天下を取らせて何かしようというものではなくなっていく」
 
 —党が25日に決定した政治改革の中間取りまとめでは、派閥の全面解消には踏み込まず、カネ集めとポスト獲得の機能を切り離した「政策集団」としての存続は容認した。
 
 「もともと派閥というものは任意団体みたいなもの、本来の政党の仕組みの中にはない。総裁が最初から相手にしなければいいだけの話だ。派閥単位で人事を論ずることがそもそも間違っている。また、例えば政策は政務調査会(政調会)で議論するのであって、名称が『政策集団』だから認めるというのはおかしい」
 
自民党本部

自民党本部

 「派閥は、お金を集めたり、人事で自派閥の人間を推薦したりして、所属議員にとって相当有効な動きをしてきたのは事実だ。岸田さん1人の知識で、400人近い人材の誰が適材適所か分かりっこない。かつて『人事委員会』のようなものを作ったことがあったが、機能しなかった。派閥のリーダーへの信頼で『この人が選ぶ人なら大丈夫だろう』ということでやっていたが、最近は『ええっ』という人でも有無を言わさず選んで、(総裁は)知らん顔して使うというふうになっていた。それではだめだ」

◆「企業・団体献金をやめないなら、政党交付金はやめたらいい」

 —派閥の裏金事件で政治不信が強まっている。30年前に党総裁として臨んだ政治改革も「政治とカネ」の問題が契機だった。
 
 「細川さんと合意したあの政治改革は、選挙制度では小選挙区制を導入し、政治資金問題では公費による政党交付金を導入する代わりに、企業・団体献金はやめるという大きな改革だった。今やっている話は、本来そこで終わっているはずだ。ところが、企業・団体献金の全面禁止は激変緩和という名の下に5年先にずらされ、結局そのまま30年がたった」
 
 「自民党は年に約160億円もの公費助成を受けておきながら、やめると約束した企業・団体献金の『もらい方』の議論をしている。政党交付金の導入を決めた立場からいえば、全く意味がない、無責任な議論だ。企業・団体献金をやめないなら、政党が国民の税金から交付金をもらうなんてことはやめたらいい」
 
政治改革関連法案の修正案の合意文書に署名する細川護熙首相(右)。左は河野洋平自民党総裁=1994年1月29日未明、国会内で

政治改革関連法案の修正案の合意文書に署名する細川護熙首相(右)。左は河野洋平自民党総裁=1994年1月29日未明、国会内で

 —当時、政治家が集めてもいい年間の上限額を設ける提案をした。
 
 「集め方を規制するといっても、集め方は絶対に『潜って』しまう。それなら上限額を決めて、もうこれ以上は絶対集めませんと決めた方がいいと言った。だけど、後藤田(正晴)先生は『政治家とか政党というものは、なるべく法律で縛らない方がいい』と強くおっしゃった。今みたいなだらしのない政党ではなく、その常識・良識に委ねられるちゃんとした政治家がいるという前提に立っていた。かつて政権を握った軍が法律で政党を押さえつけたという認識から、法律を盾にぎりぎり縛ると民主政治が死んでしまうと。今の議論とはちょっと違うレベルの話があった」

 ◆衆院の小選挙区制は「失敗だった」…なぜなら

 —宮沢喜一首相は政治資金の腐敗を撲滅する腐敗防止法を提唱していた。だが、政治改革の議論は選挙制度の議論に収斂(しゅうれん)し、小選挙区制の導入で決着した。
 
 「なぜそう変わったか、いまだに僕にはよく分からない。国会が政治改革という大きなうねりの中に置かれて、僕らはどういう政治を目指せばいいのか、どんな改革をすればいいかを考えていた。しかしある時、あっという間に政治改革とは小選挙区制の導入だというふうに変わった。それに対する是非しか議論がなくなってしまった。非と言えば守旧派だし、是と言えば改革派だともてはやされる。だからかろうじて、選挙制度をやるならカネのほうもやろうと言って、もう一方の車輪(政党助成金導入と企業・団体献金禁止)を一生懸命回した」
 
 —小選挙区制を導入したことは良かったか。
 
自民党の現状を憂える河野洋平元衆院議長

自民党の現状を憂える河野洋平元衆院議長

 「大変責任を感じているが、失敗だったと思う。小選挙区制にもいろんなやり方があるから全部がだめとは言わないが、今、目の前で行われている選挙は、候補者を党の執行部が一本に絞ってしまい、とても多様性に対応しているとは思えない。小選挙区制がうまくいっている国は、候補者選定のための予備選挙がフェアな形で行われるとか、長い歴史や経験を積んで、あるべき姿を求めてできている。できるだけ早く修正してほしい」

◆自民案の丸のみの「政治改革」だったからこそ「罪が重い」

 —細川首相とのトップ会談は、国会会期があと1日というぎりぎりのタイミングで行われ、かろうじて与野党合意にこぎ着けた。あの会談を振り返って思うことは。
 
 「自民党は当時、絶対に譲るなという声と、全部譲ってもまとめるのが大事だという声がほぼ同数で、僕はものすごい罵詈讒謗(ばりざんぼう)を浴びていた。細川さんは、政治改革ができなかったら辞めると言っていて、明日だめなら辞めざるを得ない。だが、細川内閣を支えていた8党派で最大の社会党が(小選挙区制が中心の選挙制度に)絶対反対だった。僕も絶体絶命だが、細川さんも絶体絶命だった」
 「直前の総務会で総裁一任を得て会談に臨むことができたが、僕も別に腹案があって出て行ったわけじゃない。あとは出たとこ勝負で、向こうの出方によって押すか引くかでいこうと。それで話し始めると、細川さんは全て『結構です』『結構です』と受け入れていく。最後はほとんど自民党案の丸のみだった」
 
 「まとまらなければ自民党が割れて、あの日で自民党は終わっていたかもしれないわけだから、当時はとにかくまとまって良かったなと思ったが、今となれば良かったのだろうかとも思う。結果的にこちらの案を全部のませて、この体たらくだ。罪が重いですよ」

 ■河野洋平(こうの・ようへい) 1937年、神奈川県生まれ。早稲田大卒。丸紅飯田(現・丸紅)勤務を経て、67年に自民党公認で衆院議員に初当選。連続14期務める。当初は父の一郎元農相が率いた河野派の流れをくむ中曽根派に参加。76年に自民党を離党し、新自由クラブを立ち上げた。86年に自民復党後は、宮沢派(後の岸田派=今月23日に解散)所属を経て河野グループ(現・麻生派)を結成。官房長官、自民党総裁(93年7月〜95年9月)、外相、衆院議長を歴任し、2009年に政界引退した。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・自民党・派閥を舞台に「政治とカネ」の問題が繰り返されている現状】  2024年01月28日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

2024-02-12 05:01:45 | 【食糧自給率・食品ロス・農業・JA・農家・化学肥料・米・牛・豚・養鶏・野菜】

【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:農林水産物輸出 安定的拡大へ販路の多角化を

 農林水産物・食品の輸出を安定的に伸ばすには販路を多角化する必要がある。海外のニーズにあった産品づくりに取り組み、輸出拡大に向けた戦略を再び強化したい。 

 2023年の農林水産物・食品の輸出額が、前年比2・9%増の1兆4547億円と、11年続けて過去最高を更新した。多くの国や地域で、コロナ禍からの経済活動の正常化が進んだほか、円安による割安感も追い風になった。

 ただ、伸び率は22年の14・2%増から大幅に鈍化した。中国が、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を受け、昨夏以降、日本からの水産物の輸入を全面的に停止したことが響いている。

 輸出額の大きいホタテが落ち込んだほか、中国の景気低迷で日本酒やウイスキーも減った。特定の国や地域に依存することのリスクを浮き彫りにした形だ。

 一方、中国向けの農林水産物・食品の輸出は、全体で前年より14・6%減少したものの、なお最大の輸出先である。科学的な根拠に基づかない水産物の禁輸措置を早期に解除するよう、政府は粘り強く働きかけねばならない。

 23年の輸出は、香港や米国、韓国、豪州など、中国以外では順調に増えている国・地域が多い。

 海外で和食ブームが続いているほか、訪日観光を機に和食ファンになる外国人も多いという。日本産品を海外に売り込む余地は大きいはずだ。官民が一体となって、多様な国・地域で販売拡大を図ることが大切となる。

 それには、現地の需要に応じた産品を作ることが重要だ。

 23年の輸出で、緑茶は33・3%増えた。粉末の抹茶にすることで栄養を余すところなく取り込める健康食品として認知され、健康志向が高まっている欧米で人気が出たという。ニーズを開拓した成功事例だと言えよう。

 「和牛」として知られる牛肉も、外食需要が持ち直した香港や台湾などで、輸出が大幅に伸びた。

 各地の需要を調べ、効果的な販売促進活動を展開してほしい。

 そのほか、中国はホタテなど日本の水産物を加工して、第三国に輸出する役割も果たしていたため禁輸措置の影響が広がった。

 そのため、政府は、中国で行われていた米国向けのホタテの殻むき作業を、ベトナムなどに移す事業への支援を始めた。

 政府は、農林水産物・食品の輸出のためのサプライチェーン(供給網)についても再点検し、リスクの分散に努めてもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:救急医療の逼迫 軽症者の利用抑制が不可欠だ 

2024-02-12 05:01:40 | 【医療・診療報酬・病気・地域・オンライン診療・マイナ保険証・薬価・医療過誤】

【社説②】:救急医療の逼迫 軽症者の利用抑制が不可欠だ 

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:救急医療の逼迫 軽症者の利用抑制が不可欠だ 

 119番通報で搬送される人が増え、救急医療体制が 逼迫ひっぱく している。軽症者の利用を抑制する仕組みを整え、医療従事者や救急隊員の負担を減らしていくべきだ。

 2022年の救急出動件数は723万件で、08年の510万件の1・4倍だった。高齢化の進展で今後も増加が見込まれる中、救急医療体制を将来にわたってどう維持するかが課題となっている。

 救急車の利用が有料の国もあるが、日本では無料で運用されてきた。総務省消防庁の有識者会議も16年、有料化には慎重な議論が必要だと提言している。

 生活困窮者が救急要請をためらうことにならないためにも、無料制度の維持が望ましいことは言うまでもないが、救急医療体制がパンクしては元も子もない。

 問題は、症状に緊急性がないのに「交通手段がない」などの理由で安易に救急車を呼ぶ人が後を絶たないことだ。

 22年に全国で救急搬送された622万人のうち、47・3%は入院には至らない軽症者が占めた。「平日は休めないから」と言って、夜間や休日に救急外来を受診する人も少なくない。

 救急車や救急医療は、限りある公的資源である。安易な利用が増えれば、ほかの救える命も救えなくなる。自治体や病院は適正な利用を呼びかけてきたが、住民の良識に頼るだけでは限界がある。

 このため、軽症者による救急サービス利用の実質的な有料化に踏み切る医療機関も出始めた。

 三重県松阪市の三つの基幹病院は今年6月以降、救急車で搬送された軽症者から原則として7700円を徴収することを決めた。

 かかりつけ医の紹介状がない人が大きな病院を受診した場合、診療費の他に「選定療養費」として7000円以上が徴収される国の仕組みを適用する。

 既にこの仕組みを導入した近隣の病院では、軽症者の救急利用の抑制につながっているという。

 ただ、選定療養費の適用は苦肉の策だ。本来は、救急医療を安易に利用した人から料金を徴収できるよう、国が法改正を進めるべきではないか。

 119番通報をするか迷った人の話を聞いて、救急車の出動につないだり、受診できる医療機関を紹介したりする電話相談窓口が各地に設置されているが、十分に活用されているとは言えない。

 窓口の普及は救急出動の抑制につながる。国や自治体は拡大と周知に努めなければならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月11日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:小沢征爾氏死去 情熱のタクトで感動を届けた

2024-02-12 05:01:35 | 【訃報・告別式・通夜・お別れの会・病死・事故死・災害死・被害による死他】

【社説①】:小沢征爾氏死去 情熱のタクトで感動を届けた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:小沢征爾氏死去 情熱のタクトで感動を届けた

 国境を超えて、クラシック音楽の発展に果たした役割は計り知れない。世界に感動や熱狂をもたらした日本人指揮者として、多くのファンの記憶に刻まれるだろう。 

 指揮者の小沢征爾さんが死去した。88歳だった。米国の名門ボストン交響楽団、世界最高峰のオペラハウスといわれるウィーン国立歌劇場で音楽監督を務め、ベルリン・フィルなどトップクラスの楽団とも共演を重ねた。

 小沢さんの指揮は、的確な技術と、全身を使った表現が特徴だった。ベルリオーズやマーラーなどの作品を得意とし、深い譜読みと解釈によって、情熱的かつ精妙な響きを引き出した。

 その活躍は、日本をクラシック大国に押し上げただけでなく、欧米の音楽界にも新風を巻き起こした。クラシック音楽をアジアなどの非西洋圏に普及させる役割も果たしたと言えるだろう。

 20歳代で世界への扉を開いたことも、高度経済成長期に入った日本人を勇気づけた。

 単身渡欧した1959年は、海外旅行がまだ一般化していない時代だった。日の丸の国旗を付けたスクーターでパリなどを駆け回りながら、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールなどを制して活躍の舞台を広げていった。

 20世紀を代表する指揮者のカラヤンやバーンスタインのもとで 研鑽けんさん を積んだことが、後に大きな財産となった。誰とでもすぐに親しくなれる気さくな人柄も、成功の原動力となったに違いない。

 特筆すべきは、海外で培った貴重な経験を、惜しみなく日本に還元したことだ。晩年の小沢さんは「僕は天才ではない。努力家です」と語り、「残された時間で、次の音楽家を生み出す」との決意をにじませていた。

 長野県松本市で前身の音楽祭から30年以上続く「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に、その思いが表れていた。小沢さんを慕って、世界から集まった演奏家が生み出した名演は数知れない。

 小沢さんは昨年も車いす姿で舞台に上がった。思いの詰まったフェスティバルだったのだろう。

 日本やスイスでは、若手演奏家向けの教育プログラムを主宰し、深夜まで熱心に指導する姿も見られた。指導を受け、世界を舞台に活躍し始めた若手もいる。

 日本のオーケストラは近年、技量が向上し、演奏を充実させている。後に続く指揮者や演奏家たちには、小沢さんが切り開いた道を一層広げていってもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:技能実習廃止 外国人の就労環境を改善せよ

2024-02-12 05:01:30 | 【移民・難民・亡命・密入国・入管・在留資格・日本語学校・偽装結婚・技能実習生他】

【社説②】:技能実習廃止 外国人の就労環境を改善せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:技能実習廃止 外国人の就労環境を改善せよ

 外国人材を受け入れる制度を大きく改めることになる。国際的に人材獲得競争が激しくなる中、外国人の就労環境を改善し、「選ばれる日本」にしていくことが大切だ。

 政府は、技能実習制度に代わる新たな仕組みとして、3年間の就労を認める「育成就労制度」を創設することを決めた。今国会での法改正を目指し、受け入れ態勢を整えたうえで導入する方針だ。

 約30年前に始まった技能実習制度は、日本で習得した技術を帰国後に生かしてもらうという「国際貢献」を目的に掲げてきたが、実際は労働力を確保するための手段となってきた。

 労働者の権利を守る仕組みも不十分で、長時間労働や賃金の不払いなどの問題が相次いだ。実習生の失踪も後を絶たなかった。

 新たに設ける育成就労は、「人材の確保と育成」を掲げ、人手不足を補う目的を明確にした。技能の有無を問わずに外国人を労働力として受け入れるという点で、大きな政策転換と言える。

 新制度では、1~2年間働けば、同じ業種での転職を認める。技能実習では、本人の希望による転職は原則禁じられていた。

 自由に職場を選べず、厳しい環境から逃れられないことは、失踪の大きな要因となっていた。外国人が自らの意思で、勤務先などを選べるようにするのは当然だ。

 転職を制限する期間を巡り、政府は1年とする方針だったが、自民党から「地方から都市へ人材が移ってしまう」といった声が出たため、2年まで幅を持たせた。雇い主が転職を認めない場合、昇給などの待遇改善を図るべきだ。

 新制度はまた、高度な技能を持つ人に認めている在留資格「特定技能」に つな がる仕組みとする。

 育成就労で受け入れる分野を、特定技能と同じ建設業、農業、宿泊業などに合わせる。試験に合格すれば特定技能に移行し、より長く働くことができる。

 日本の生産年齢人口は先細りしており、今後も深刻な人手不足が見込まれている。有為な人材を確保するには、これまでのように外国人を安価な労働力とみなす発想は改めねばならない。

 技能実習制度では、外国人が送り出し機関に多額の手数料を支払い、借金を背負って来日する事例が多かった。受け入れ企業を監督すべき国内の監理団体が機能していないとの指摘もあった。

 新たな制度を作るだけでなく、こうした問題を一つ一つ解決していくことが重要だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:訪日客消費最高 世界へ魅力を発信する好機に

2024-02-12 05:01:25 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説①】:訪日客消費最高 世界へ魅力を発信する好機に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:訪日客消費最高 世界へ魅力を発信する好機に

 訪日外国人客数が回復し、その消費額が大きく伸びている。日本が持つ多彩な魅力を世界に発信する好機だ。政府や自治体は、観光資源の活用に努めてもらいたい。

 観光庁は、2023年の訪日外国人の消費額が、コロナ禍前の19年より9・9%多い5兆2923億円と、過去最高になったと発表した。政府が23年3月に決めた5兆円の目標を早々と突破した。

 23年の訪日客数は2506万人と、19年の約8割まで戻った。さらに円安や物価高、宿泊日数が延びたことによる宿泊費の増加などで、消費額が押し上げられた。

 訪日客の消費増は、日本経済の追い風となる。コロナ禍で打撃を受けた観光業や飲食業の再生に着実につなげていきたい。

 消費額を訪日客の国・地域別でみると、台湾が7786億円と最多で、中国、韓国と続いた。

 訪日客の数では、韓国が最も多く、2位が台湾だった。コロナ禍前に最多だった中国は、19年の3割以下にとどまり3位だった。

 日本向けの団体旅行の解禁が遅れたことや、中国国内の不動産不況などの影響だとみられる。

 米国やカナダなどは大きく増えた。欧米からの訪日客は消費額や滞在日数が多く、日本の伝統文化や寺社などへの関心も高い。

 一方、京都市や神奈川県鎌倉市など一部の観光地では、オーバーツーリズム(観光公害)が再燃している。ホテルや旅館など観光業の人手不足も深刻だ。

 そうした課題を解決するには、訪日客を日本各地に分散させる必要がある。そのために、訪日客からのニーズが高い、旅先で様々な体験をする「コト消費」の機会を提供していくことが重要だ。

 例えば、山岳修験道の聖地の一つである山形県の「出羽三山」では、外国人向けの修行プログラムが人気を集めている。地元食材の料理体験などを楽しめる岐阜県高山市も訪日客で にぎ わっている。

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ自動車道「瀬戸内しまなみ海道」に設けられたサイクリングコースは、そこからの絶景が高い評価を得ているという。

 日本の清潔さや治安の良さ、アニメなどの新しいカルチャーも、訪日客をひきつけている。

 日本の文化を知り、自然を楽しみたいという訪日客の求めに応えることができれば、消費を増やすだけでなく、日本の良さを世界に広める効果が期待できよう。それが国際社会での日本の発信力や信頼感の向上にも資するはずだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:わいせつ保育士 処分歴照会で被害を防止せよ

2024-02-12 05:01:20 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【社説②】:わいせつ保育士 処分歴照会で被害を防止せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:わいせつ保育士 処分歴照会で被害を防止せよ

 子供を守り、育てるはずの保育士が、幼児らにわいせつな行為をする事件が後を絶たない。卑劣な犯罪の再発を防ぐための新制度を、確実に機能させねばならない。

 こども家庭庁は4月から、子供へのわいせつ行為で処分された保育士のデータベースを導入する。全国の保育所や自治体などに閲覧する権限を与え、保育士を新規採用する際に、処分歴の有無を照会するよう義務づける。

 保育士として働く場合、国家資格の取得後、都道府県に登録する必要がある。わいせつ行為が発覚すれば登録は取り消されるが、現在は雇用主が処分歴を確認する制度がなく、過去の行為を隠して再雇用される懸念があった。

 データベースには、登録が取り消された保育士の氏名やわいせつ行為の内容などを掲載する。チェック漏れを防ぐため、旧姓などの情報も記録するという。

 性犯罪は、子供の心身を深く傷つける。断じて許されない行為だ。処分された保育士が再び子供と接することのないよう、保育現場から遠ざけることが重要だ。データベースの創設は、一定の意義があると言えよう。

 ただ、それだけでは不十分だ。過去には、保育園児にわいせつ行為をした保育士が、別の園で再び性犯罪を起こしたケースもある。最初の事件で保育士としての登録取り消しが適切に行われなかったため、次の事件につながった。

 登録が取り消されなければ、データベースに掲載さえできない。各都道府県は保育所側と情報交換を密にして、確実に登録取り消しにつなげる必要がある。

 また、すでに在籍している保育士については、今回のデータベースで処分歴を照会してはいけないことになっている。プライバシーへの配慮が理由だというが、各地に処分歴を隠して働く保育士がいる可能性は否定できない。

 インターネットのサイトで紹介されたベビーシッターによる性的暴行事件も起きた。サイトの運営会社にシッターとの雇用関係がない場合、会社側は処分歴の照会ができないという問題もある。

 データベースの運用後は、状況を見ながら、見直しを検討すべきではないか。最も重要なのは、子供を被害から守ることだ。それを忘れてはならない。

 再犯だけでなく、初犯をどう防ぐかも大事な課題だ。保育所に防犯カメラを設置することも一案だろう。国や自治体はそのための補助制度なども検討してほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月09日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【風知草】:森元首相、なぜ不問か=山田孝男

2024-02-12 02:01:50 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【風知草】:森元首相、なぜ不問か=山田孝男

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【風知草】:森元首相、なぜ不問か=山田孝男

 「森(喜朗)元首相は調査しないのか?」

 裏金問題で自民党国会議員対象の聞き取り調査を命じた岸田文雄首相を野党が追及、岸田は「適切に判断する」とかわした(5、6両日、衆院予算委)。

 

絵・五十嵐晃

絵・五十嵐晃

                ◇

 岸田は明らかに森に遠慮している。「森に聞け」と野党に責められ、ハイ、とは言えない。岸田内閣は安倍派の協力がなければできなかった。安倍派は瓦解(がかい)したが、森は、なおゴッドファーザーである。86歳。森とは2日に1度、電話で話すと、首相就任直後の岸田に聞いた記憶がある。

 派閥の政治資金パーティーの収入を裏金として議員に還流する――という安倍派の悪習は、森がこの派閥の会長だった20年前から始まった。安倍派の幹部が証言している。つまり、森は裏金づくりの経緯を知るキーパーソンである。

 ※残り1013文字(全文1349文字)

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【風知草】  2024年02月12日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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