路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説・11.15】:【独居の高齢者】:孤立防ぐ安心の社会を

2024-11-19 05:02:10 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説・11.15】:【独居の高齢者】:孤立防ぐ安心の社会を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.15】:【独居の高齢者】:孤立防ぐ安心の社会を

 世帯の単身化が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所が都道府県別世帯数の将来推計を発表した。2050年には、全世帯に占める1人暮らしの割合が27都道府県で40%を超える。
 とりわけ深刻なのは65歳以上の高齢者が1人で暮らす割合だ。地方を中心に32道府県で全世帯の20%を上回る。最も高いのが高知の27・0%で、徳島25・3%、愛媛24・9%と続き、四国の高さが目立つ。
 未婚の人が増え、少子高齢化で同居する家族の人数も減ることが背景にある。
 誰もが1人暮らしになる可能性がある。安心して暮らせる仕組みづくりが急がれる。
 1人暮らしの高齢者は、配偶者や子どもと同居している人と比べて孤立しやすい。認知機能や体力の低下が進めば、家事や行政手続きなど日常生活で困りごとが増える。孤独死につながる恐れも高まりかねない。暮らしを支える見守り活動の重要性が高まっている。
 見守り活動を担うのは主に地域の民生委員らボランティアだ。頼れる人が近くにいない住民にとっては、同じ目線で話せる身近な相談相手であり、存在そのものが安心感につながる。
 しかし課題もある。担い手の確保が難しいことだ。
 厚生労働省によると、22年度末時点で民生委員は約1万3千人が欠員になっている。高齢期も働く人が増えたことや担い手の高齢化が進んだことが大きな理由だ。
 民生委員は見守りが必要な高齢者らを訪ね、必要に応じて行政や福祉サービスに橋渡しする。そのほか交流サロンの開催や配食サービス、災害時要支援者の把握など役割は幅広い。やりがいを感じる一方で、地域課題が複雑化し負担が増している面もある。
 政府は今年9月に高齢化対策の中長期指針「高齢社会対策大綱」を改定し、多様な選定方法を導入して担い手確保を目指す方針を示している。高知県内では民間企業などとの見守り協定の締結も進む。官民一体となり、地域社会の見守り力を高めたい。
 人手を補うために情報通信技術(ICT)を使った新たなサービスも各地で広がっている。カメラ中継やメールでの安否確認など遠隔で見守ることができる。
 中山間地域では過疎高齢化が深刻で、緊急時の対応が困難な場合がある。仁淀川町では3年前に独居高齢者の「孤独焼死」が起きた。近年は高齢者を狙った事件も相次ぐ。さまざまな手段で対策を進めたい。
 一方で社会保障制度の充実も急務だ。しかし、制度を支える現役世代は減り、介護職などサービスの担い手は不足している。医療や介護の体制維持が難しくなっている。
 国は、高齢者が住み慣れた地域で医療や介護を一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の推進を掲げる。取り残される人を出さない手だてを講じていく必要がある。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.15】:コミュニティーの再生 将来見据えて連帯しよう

2024-11-15 07:00:20 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説・11.15】:コミュニティーの再生 将来見据えて連帯しよう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.15】:コミュニティーの再生 将来見据えて連帯しよう 

 地域の担い手が確実に細っていく。厳しい現実と未来図を改めて突き付けられた。

 国立社会保障・人口問題研究所は、2050年に全世帯に占める1人暮らしの割合が広島、山口など27都道府県で40%を超えるとの推計を発表した。広島の1世帯人数は今から11年後に2を割り込む。

 65歳以上が1人で暮らす割合も、50年には多くの都道府県で20%を上回る。中国地方5県の今の独居高齢者は10人に1人強だが、50年には5人に1人となる計算だ。

 人口減と高齢化は既にさまざまな問題を引き起こしている。家族に頼れなくなれば、地域とのつながりが重要になる。備えを急ぎたい。

 広島市では昨年度、新たな地域運営組織「ひろしまLMO(エルモ)」の取り組みが始まった。小学校区の町内会や社会福祉協議会が、市の呼びかけに応える形で設立。市から毎年最大で600万円が交付され、地域課題を解決するための活動を展開する。

 安佐北区のエルモ大林は、地域まつりを開いたり、住民の交流スペースを開設したりと精力的に活動する。地区内外の企業やNPO法人も加入。耕作放棄地での米作りや森林保全など、活動内容が多岐にわたるのも特徴だ。

 他の地区でも地元の小中学校や高校と連携したり、暮らしの困り事や移動を支援したり、空き家を仲介したりと実情に沿った活動が目立つ。

 中山間地域の雲南市波多地区では、住民主導の取り組みが根付く。10年前に地区内の小売店がなくなったのを受け、地元のまちづくり組織がミニスーパーを開設した。送迎付きの介護予防サービスや交流施設の管理運営を行政から受託し、住民のニーズに応えている。

 大切なのは、多くの団体や組織が運営に参加することだろう。若者や現役世代を含めた幅広い年齢層が交流を深めることで、高齢化や世代交代に対応できる。自治体職員や町内会長の奮闘だけでは早晩限界が訪れよう。多様な人材を引き込み、生かすことは地域での孤立を防ぐことにもつながるはずだ。

 課題もある。広島市でエルモが発足した地区は47。申請中の地区を含めても69と全学区の半数程度にとどまる。もともと町内会や社協の活動が活発だった地域がエルモに移行するケースが多いようだ。

 都市部や住民同士の交流が薄れた地域でどのようにしてコミュニティーを再生していくか。広島市や中国地方にとどまらず、全ての地方に共通する難題だ。先進事例を基に官民一体で知恵を絞りたい。住民の手に余る部分は、行政が積極的に補うべきだろう。

 近年は1人暮らしや高齢世帯を狙う強盗も相次ぐ。災害も頻発する。趣味や交流サイト(SNS)で簡単に他人とつながれる時代だが、緊急時に役立つのは近場のコミュニティーだ。近所は「近助」でもある。将来に備え、今から連帯を強めておきたい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月15日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・11.15】:千歳飴と2050年

2024-11-15 07:00:10 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【天風録・11.15】:千歳飴と2050年

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・11.15】:千歳飴と2050年

 きょうは七五三。子どもたちの健やかな成長を祝う日である。神社や写真館には晴れ着姿の親子連れが見られるに違いない。小さな手には千歳飴(ちとせあめ)の袋が握られているはず。粘り強く、細く長くと、子どもの長寿を願う縁起物だ

 ▲医療の進歩や健康意識の高まりもあり、人生100年時代とされる。では子どもたちが大人になる頃、日本は一体どんな社会だろうか。さまざまな政策や技術が進み、誰もが安心して暮らせる世の中が望ましいのだが

 ▲26年後の2050年、1人暮らし世帯は27都道府県で40%を超える―。広島・山口・岡山の中国地方3県も。社会保障や人口問題を調査する国の研究所がはじき出した推計だ。きょう七五三を祝った子どもたちが働き盛りを迎えた頃の日本である

 ▲親を田舎に残し、若者は都会へという傾向は変わらぬようだ。単身世帯が54%に上る東京は未婚の現役世代が多そう。一方、人口が流出した地方は、配偶者との死別などで1人暮らしをする高齢者の割合が高いという

 ▲1人が幸せな人もいるに違いないが、孤独や貧困に悩む人も多いのではないか。単身世帯を支える体制を急がねば。そんな社会でないと、千歳飴を誰も喜ぶまい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2024年11月15日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・10.18》:衆院選2024 地方の人口減少 東京集中是正の具体策を

2024-10-24 02:05:20 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

《社説①・10.18》:衆院選2024 地方の人口減少 東京集中是正の具体策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・10.18》:衆院選2024 地方の人口減少 東京集中是正の具体策を

 地方の人口減少が進み、地域社会の維持が危ぶまれている。

 各党は選挙公約で、地方の重視を掲げる。「東京一極集中」が止まらない要因を分析し、より踏み込んだ具体策を競うべきだ。

2014年に地方創生の取り組みが始まってから10年。スタート時、まち・ひと・しごと創生本部の初会合に出席した安倍晋三首相(左)、石破茂地方創生担当相(中央)、高市早苗総務相(右)=首相官邸で2014年9月12日午前11時9分、藤井太郎撮影(いずれも肩書は当時)

 2014年から政府は「地方創生」の人口減少対策に取り組んでいる。石破茂首相はその強化に向けた本部を政府に設けた。来年度予算で自治体の施策を支援する交付金約1000億円の倍増を目指し、自民党公約にも盛り込んだ。

 地方創生は観光需要の掘り起こしなど、自治体の成功事例を他にも波及させることで、地域の活性化を図る施策だ。「単年度ベースで東京圏と地方の人口流出入を均衡させる」との目標を掲げる。

 だが、東京圏への人口流入はコロナ禍を経てむしろ加速しており、総じて成果に乏しい。初代担当相だった石破氏にも責任がある。十分な検証抜きで交付金を倍増しても、効果があるかは疑問だ。

 東京圏への集中が止まらないのは、地方からの若い女性の流出に歯止めがかからないためだ。

 企業立地、農林水産業振興、非正規地方公務員らの正規化など大胆なビジョンを描き、女性の雇用を確保する必要がある。ジェンダー平等の視点も欠かせない。

 自民の公約には「分散型国づくり」との表現はあるが、「東京一極集中是正」の文言はない。

 昨年1年で東京都の人口は7万人増えた。都外から流入した人や、新たに来日した外国人が多かったためだ。少子高齢化の影響で、出生数から死者数を引いた自然増減では5万人の減少となった。

 東京都の合計特殊出生率は0・99と全国一低い。この状況のまま地方から人が流入すれば、日本全体の人口減少を加速させる要因となる。一極集中是正は防災など、危機管理の観点からも重要だ。もっと明確に打ち出すべきだ。

 立憲民主党の公約も地方の将来像を見据えたものとはいいがたい。かつて旧民主党が「地域主権」を柱に据えたような熱量はない。

 人口減少の大きな流れは変わらない。居住地域のコンパクト化、老朽インフラの選別など備えも進めるべきだ。能登半島地震は過疎地が抱えるもろさを浮き彫りにした。地域の持続に向けた議論を与野党は深めていく必要がある。

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月18日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・10.19】:交通空白対策 安心できる地域の足確保を

2024-10-20 05:01:40 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説②・10.19】:交通空白対策 安心できる地域の足確保を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・10.19】:交通空白対策 安心できる地域の足確保を

 過疎化などに伴って、バスや鉄道を利用できない「交通空白」地域が増えている。官民が連携して、地域の足を確保する策を練ってほしい。 

 国土交通省は7月、交通空白の解消に向け、対策本部を設置した。来月には自治体や民間企業が連携を図るための組織を創設する。

 地方では、人口減少を受け、鉄道の廃線や路線バスの減便が相次ぎ、タクシー不足も深刻だ。高齢化が進み、車を運転できない人が増えることも避けられない。

 交通空白の問題を放置したままでは、地方創生を進めることも難しいだろう。日常生活を支える移動手段の確保は急務である。

 個人が自家用車を使い有償で人を運ぶ「ライドシェア」は、海外で広く普及している。

 日本では、安全性への懸念から一律の全面的な解禁には慎重論が強いが、日常生活に直接の影響が出ている地方については、自治体やNPO法人などが責任を持って運行を管理する「公共ライドシェア」の必要性が高まっている。

 2006年の制度導入後、約600市町村にまで拡大した。

 電話やLINEなどで依頼を受けた地域住民が、自宅や決められた乗車場所まで自家用車で迎えに行き、目的地に送り届ける。

 自治体などが損害保険契約に加入し、事故の賠償金が支払われる仕組みだ。顔なじみの住民に送迎してもらう安心感も大きい。

 課題はドライバーの確保だ。

 新潟県村上市は、5000人が居住する市北部地域で昨年10月、公共ライドシェアを導入した。年間利用者は、のべ1500人と認知度は高いが、約20人いる登録ドライバーは高齢者が多く、配車依頼に応えられない事例がある。

 一方、交通空白の対策が進んでいない自治体は、全国で2割弱にあたる300超もある。

 自治体や郵便局、JAなどの地域組織や、地元の交通関連企業が緊密に連携することが重要だ。

 北海道上士幌町では、郵便局の集配車が郵便物の集荷といった業務をしながら、住民を乗せて運ぶ貨客混載の実証実験が始まった。他の自治体でも参考になろう。

 交通空白は過疎地にとどまらず、最近では地方都市でも夜間帯で起きている。地域のタクシー会社で共通の配車システムやアプリを導入するなど、運転手を効率的に活用していく必要がある。

 政府は、当初予算で地方創生交付金の倍増を検討中だ。地域住民が安心して出かけられるよう、活用策を探ってもらいたい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月19日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・05.20】:『前略おふくろ様』などの脚本家、倉本聰さんは北海道の富良野…

2024-05-20 07:27:30 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【筆洗・05.20】:『前略おふくろ様』などの脚本家、倉本聰さんは北海道の富良野…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・05.20】:『前略おふくろ様』などの脚本家、倉本聰さんは北海道の富良野…

 『前略おふくろ様』などの脚本家、倉本聰さんは北海道の富良野に移り住んで間もないころ「廃屋」をよく訪ね歩いていたそうだ

 ▼捨てられた家を見つけては中におじゃまする。その昔は居間だった場所に座り込む。散乱した室内に放り出されたランドセルや少女雑誌…。寂しい光景にかつて住んだ家族がこの地にやってきたときの夢や家を出るしかなかった事情を想像する。廃屋は「哀(かな)しい博物館」だという。廃屋に着想を得て書いたのが『北の国から』という

 ▼以前は笑い声があふれた家だが、今は誰もいない。そんな「哀しい博物館」の建設ラッシュが日本中で起きているのか。空き家問題である

 ▼総務省の住宅・土地統計調査(速報値)によると全国の空き家数は900万戸と過去最多。住宅総数に占める割合は13・8%で、約7戸に1戸は空き家ということになる

 ▼ひとり暮らしの高齢者が亡くなり、そのまま空き家になるケースが相次いでいる。相続する人がいない、相続して売りに出したものの買い手がつかない、解体費が払えない-。少子高齢化の進んだ社会では空き家の増える理由はいくらでもあるのだろう

 ▼2035年には3戸に1戸が空き家になるとの推計もある。空き家は都会でも増えている。政府の対策も効き目が見えない。「哀しい博物館」を再び、誰かの「楽しいわが家」に戻す有力な手はないものか。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2024年05月20日  07:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《社説②》:認知症の将来推計 暮らし支える対策が急務

2024-05-20 02:05:40 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

《社説②》:認知症の将来推計 暮らし支える対策が急務

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:認知症の将来推計 暮らし支える対策が急務

 高齢者が多い社会になれば、認知症になる人も増える。患者や家族を支える体制の整備が急務だ。

 厚生労働省が認知症患者の将来推計を発表した。高齢人口がピークを迎える2040年の患者数は22年より3割以上多い584万人に達する。前段階である軽度認知障害の613万人と合わせると、高齢者の3人に1人に当たる。

認知症の人は徘徊(はいかい)などで事故に遭う危険もある。ケアを家族任せにせず、地域で暮らしをどう支えていくかが課題だ=茨城県内で2023年7月、中村琢磨撮影

 認知症は重くなるとコミュニケーションを取るのが難しくなり、徘徊(はいかい)などの問題が起きる場合もある。警察に行方不明の届けが出される人は年2万人近くに上る。

 ケアする側の心身の負担も大きく、介護のため離職を余儀なくされる家族もいる。働き手が減れば、経済全体の損失になる。

 認知症の人が地域社会の中で暮らし続ける。そのためにはどのような対策が必要なのか。

 施策の一つが、認知症の人が少人数で共同生活するグループホームの拡充だ。家庭的な雰囲気の中、できる限り自立した生活を送る。在宅患者には、通所や訪問を組み合わせた「小規模多機能」などの介護サービスもある。 

 だが、介護職員の不足は深刻で、40年度には今より60万人以上多い280万人が必要となる。

 国は待遇改善による人材確保を急ぐが、限界もある。「特定技能」の在留資格を持つ外国人の業務範囲拡大や、介護ロボットなどテクノロジーの活用が欠かせない。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/05/20/20240520k0000m070001000p/9.webp?1" type="image/webp" />兵庫県姫路市の集会所で毎月開かれている認知症カフェのイベント。参加者は昔懐かしい歌に合わせて、体を動かしていた=2022年7月、斉藤貞三郎撮影</picture>
兵庫県姫路市の集会所で毎月開かれている認知症カフェのイベント。参加者は昔懐かしい歌に合わせて、体を動かしていた=2022年7月、斉藤貞三郎撮影

 認知症への理解を深めることも重要だ。正しい知識を持った人を増やす「認知症サポーター」の養成や、当事者や家族の交流拠点となる「認知症カフェ」の整備も、各地で進んでいる。

 予防を考えるヒントも、今回のデータから浮かんだ。

 15年に公表された試算と比べ、推計患者数が約200万人減っていた。健康意識の高まりを背景とした喫煙率低下や、生活習慣病治療の進歩が、認知症への進行を抑えた可能性が考えられるという。昨秋登場した治療薬「レカネマブ」も、前段階や発症初期で進行を遅らせる効果が期待される。

 政府は1月に施行された認知症基本法に基づき、具体的な数値目標を盛り込んだ基本計画を秋までに策定する。認知症になっても安心して暮らせる社会の実現につなげなければならない。 

 元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月20日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.07】:縮小する市町村 地域の持続へ発想転換を

2024-05-10 06:05:20 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説・05.07】:縮小する市町村 地域の持続へ発想転換を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.07】:縮小する市町村 地域の持続へ発想転換を 

「消滅可能性」は一つの見方である。名指しされても、うろたえることはない。

 民間の識者でつくる人口戦略会議が、将来の人口推計を基に消滅可能性がある自治体を公表した。九州は約3割に相当する76市町村、全国では744市町村が該当する。

 2020年から50年までの30年間に、子どもを産む中心年代の20~39歳の女性が半数以下になる見通しで、急速な人口減少に歯止めがかからないと分析している。

 程度の差はあれ、九州の大半の市町村は人口減少から逃れられない。それを前提に、住民が安心して暮らし続けられる手だてを考えなくてはならない。人口戦略会議の警鐘を冷静に受け止めたい。

 消滅可能性がある自治体は10年前にも公表され、大きな反響を呼んだ。歩調を合わせるように政府が始めたのが地方創生だった。

 危機感を強めた自治体もさまざまな対策に取り組んだ。特に力を入れたのは移住者を増やすことではなかったか。その努力は否定しないが、全国の人口が減る中で移住者を奪い合っても限界がある。

 自治体はこの10年の人口政策を検証すべきだ。政府から半ば強制されて作った地方創生の計画は、どれだけの効果をもたらしただろう。

 人口政策は国力と結び付けられがちだが、自治体は地域と個人の暮らしを尊重する視点を欠いてはならない。人口や出生率の数字に振り回されず、いまの暮らしを持続可能にすることに努めてほしい。

 少し先を見据え、地域のありたい姿を多世代の住民で描くことから始めたい。行政任せにするよりも、生活実感が色濃く反映されるはずだ。

 これまでとは違い、地域づくりに発想転換が必要だ。過大になった公共施設の規模を見直し、複数の施設を一つにまとめるなど、地域を上手に小さくする工夫が要る。

 子どもを育てる希望をかなえる方策は、若い世代への経済的支援ばかりではない。職場や地域で女性と男性が役割分担する環境づくりも、今日では重視される。

 水道の維持管理のように、一つの市町村で解決が困難な課題は近隣の市町村や県との連携で乗り越えたい。従来よりも機能性の高い広域行政の検討が求められる。

 政府による地方創生は芳しい成果が出なかった。東京一極集中を是正する目標を立てたものの、東京圏の人口はむしろ膨らむ一方だ。

 大規模な開発はとどまるところを知らず、企業の集積も進んでいるのだから、当然の帰結と言える。一極集中を是正するのであれば、開発を抑制し、政治と経済の中枢が過度に集中している構造にメスを入れるべきだ。

 少子化についても実効性のある対策を打ち出せないままだ。「消滅可能性」は自治体だけに突き付けた問題ではない。政府の人口政策のまずさに対する批判でもある。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月07日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・05.02】:人口減少社会 若者が希望持てる施策を

2024-05-05 05:05:25 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説・05.02】:人口減少社会 若者が希望持てる施策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.02】:人口減少社会 若者が希望持てる施策を

 人口減少によって「将来、消滅の可能性がある」自治体が全国で4割に上り、道内では6割超の117市町村に達する―。

 有識者らでつくる「人口戦略会議」が発表した報告書は、少子化と人口流出が自治体の存続を危うくする現実を改めて突き付けた。
 同会議副議長の増田寛也元総務相が座長を務めた日本創成会議が2014年に発表した「増田リポート」より若干改善したが、少子化の基調は全く変わっていない。
 少子化の大きな要因は婚姻数の減少だと専門家は指摘する。若者が希望すれば、安定した仕事を得て、安心して結婚、出産、子育てできるよう、国や自治体は施策を一層充実させるべきだ。
 地方にとっては、若者が東京圏など他の自治体へ流出すれば「社会減」となるばかりでなく、子どもを産む人も減り「自然減」も進む。流出を食い止める施策を急ぐ必要がある。
 岸田文雄政権は「異次元の少子化対策」を掲げるが、一朝一夕には進まない。親となる世代は既に少なく、人口は当面減り続ける。人口減少社会への適応にも同時に取り組まなければならない。

 ■質の高い雇用が大切

 今回の報告書の特徴は、地方から若者を吸い寄せながら、出生率は低い東京圏などの自治体を「ブラックホール型自治体」と名付け警鐘を鳴らしたことだ。
 実際、女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す合計特殊出生率は全国平均1.26だが、東京都は都道府県最下位の1.04だ。
 道内では札幌市がブラックホール型に近い。道内外から流入が多いものの、合計特殊出生率は1.02にとどまる。札幌から道外へ流出する若者も目立ち「ダム機能」を果たしているとも言えない。
 地方から札幌へ、さらに東京へという流れを抑える必要がある。
 東京は給与水準が高いが、家賃などの生活費はかさむ。可処分所得や通勤時間などを考慮すれば、地方の魅力も大きいはずだ。
 地方に賃金など質の高い雇用をつくることが何より大事だ。札幌など都市部も、正社員を増やしたり、男女の待遇格差や長時間労働を是正したり、雇用環境を改善することが求められる。

 ■変化への適応急務だ

 この10年を振り返ると、政府は「地方創生」や「まち・ひと・しごと創生」など地方活性化策を打ち出した。国が枠組みを用意し、自治体が計画を策定し、国が認めれば交付金を出す仕組みだ。
 だが自治体は交付金獲得ばかりに目が向き、似たような計画をつくった。移住者の誘致合戦に終わった側面もある。どんな資源があり、どう生かせるかという内発的なまちづくりには至らなかった。
 岸田政権は、その検証と反省を踏まえねばならない。
 自治体が子育て施策を充実させ、移住者や関係人口を増やしたり、地域内で経済を循環させる、その意義は薄れてはいない。
 ただ対策が一定の成果を挙げたとしても、人口減少のペースが幾分抑制されるに過ぎない。
 国立社会保障・人口問題研究所の50年までの推計によると、全道の市町村全てで人口が減る。
 変化への適応が急務だ。
 住民合意を前提に、まとまって暮らす集住化を進めたり、消防や水道事業などの広域連携を一層進めたりすることが考えられる。

 ■再分配が欠かせない

 「増田リポート」は若い女性が流出する自治体は将来消滅すると指摘した。今回の報告書も、女性の「産む役割」を強調するような書きぶりには疑問が残る。
 結婚や出産をしない選択が珍しくなくなり、生きやすくなった人も多いことを忘れてはならない。
 大事なのは、結婚・出産を奨励するのではなく、したくてもできない人の障壁を取り除くことだ。
 とりわけ非正規雇用で働く若者が置き去りにされている。
 低賃金で結婚に踏み切れない人が多く、結婚しても、育児休業給付金(育休手当)の受給要件は正社員に比べて厳しい。仕事と出産が両立できない状況だ。
 同一労働、同一賃金の原則はもとより、どのような働き方であっても、出産や育児で格差のない制度をつくるべきだ。
 富の偏在を是正し、全体を底上げするためには再分配が欠かせない。富裕層の資産所得に課税するなどして、財源を確保することも検討してもらいたい。
 子どもを持つことをリスクだと考える若者もいる。高額な教育費や自身のキャリア形成への影響などへの懸念からだ。子ども時代から大人になっても続く競争社会が出生率低下の一因だとも言える。
 都市であれ地方であれ、若者が生き生きと暮らせる環境づくりが何より求められる。政府にはグランドデザインを示す責任がある。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:「消滅」自治体 次世代育てる施策を強化せよ

2024-04-29 05:01:45 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説①】:「消滅」自治体 次世代育てる施策を強化せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:「消滅」自治体 次世代育てる施策を強化せよ

 人口減少に歯止めをかけるのは容易ではない。だが、手をこまねいていれば、日本全体が衰退してしまう。行政も民間も少子化対策に総力を挙げる必要がある。

 民間有識者でつくる「人口戦略会議」は、全市区町村の4割にあたる744自治体がいずれ、人口減によって行政の運営が困難になり、「消滅する可能性がある」とする報告書を公表した。

 「消滅可能性」の根拠として、出産の中心世代とされる20~39歳の女性人口が今後、50%以上減ることを挙げている。

 日本の総人口は近年、60万人前後のペースで減っていて、2100年には6277万人に半減するとされる。現在29%の高齢化率は40%に達する。経済は縮小し、介護や防災など行政機能の維持も難しくなるだろう。

 結婚や出産は、個人の意思が尊重されるべきだ。ただ、経済的事情などで結婚や出産の希望が かな わないのであれば、支障を取り除かなければならない。

 若い世代の結婚を後押しするには、まずは賃上げが欠かせない。また、仕事と育児を両立できるよう長時間労働の是正も必要だ。

 こうした報告書は10年前にも示された。今回は「消滅可能性自治体」の数が前回調査から152減った。だがその理由は、労働目的の外国人が増えるためで、日本人人口の安定にはつながらない。

 10年前の報告をもとに、当時の安倍内閣は「地方創生」に取り組んだが、多くの自治体が、若い住民を奪い合うかのような施策に走ったため、肝心の少子化対策が不十分だったとの指摘もある。

 読売新聞は、こうした状況を踏まえ、若者と家庭の支援など7項目を提言した。デジタル化や街づくりなど幅広い対策が不可欠だ。政府は、省庁横断の対策本部を設け、一体的に施策を推進できる体制を築くべきだ。

 地域によっては、子育て支援策の拡充などで、少子化を改善させた都市もある。

 茨城県つくばみらい市、千葉県流山市は、若い夫婦のための住宅を確保し、駅近くに保育所を整備するといった街づくりを進めた。会議は、こうした65自治体を持続可能性が高いと評価した。

 成功事例を共有し、各地に広げていきたい。

 地方自治のあり方についても、改めて見直すべき時期にある。水道や消防などの事業を広域で担うことや、市町村のさらなる合併も検討課題となるだろう。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月28日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【石川アンジュ氏】:「人口を奪い合うのではなく地域に関わって持続を」 744自治体が消滅の可能性

2024-04-25 09:24:30 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【石川アンジュ氏】:「人口を奪い合うのではなく地域に関わって持続を」 744自治体が消滅の可能性

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【石川アンジュ氏】:「人口を奪い合うのではなく地域に関わって持続を」 744自治体が消滅の可能性

 起業家の石川アンジュ氏が25日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜午前8時)に出演。民間の有識者らで作る「人口戦略会議」が24日に公表した、「消滅可能性自治体」の問題について、「仕事だけではなく、生活環境が充実している自治体が今後注目される」とコメントした。

テレビ朝日(2023年10月撮影)
テレビ朝日(2023年10月撮影)

 人口戦略会議では、2050年までに20~39歳の女性人口が半減し、将来的に消滅の可能性が高いとした自治体が744あるとした。このなかには、神奈川県箱根町、栃木県日光市、北海道函館市などが含まれている。

 番組では、その一方で10年前に同様の発表を行った際、「消滅可能性自治体」に挙げられながら、今回は該当しなかった東京都豊島区の例に触れた。同区では女性の声を政策に反映させたり、2013年(平25)に270人いた待機児童をゼロにした。

 政府の移住対策委員もした石川氏は、「仕事第一優先で人口を奪い合うのではなく、拠点移住とか関係人口という形でシェアして、地域に関わることで持続可能性がある」との私見を述べていた。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・民間の有識者らで作る「人口戦略会議」・「消滅可能性自治体」の問題】  2024年04月25日  09:24:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【玉川徹氏】:「人口減を受け入れて豊かな暮らしをという発想に」 744自治体が消滅の可能性

2024-04-25 09:08:30 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【玉川徹氏】:「人口減を受け入れて豊かな暮らしをという発想に」 744自治体が消滅の可能性

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【玉川徹氏】:「人口減を受け入れて豊かな暮らしをという発想に」 744自治体が消滅の可能性

 元テレビ朝日社員の玉川徹氏(60)が25日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニンたまがわ徹氏(2019年7月撮影)に出演。民間の有識者らで作る「人口戦略会議」が24日に公表した、「消滅可能性自治体」の問題について、「人口減を受け入れても豊かな暮らしを守っていけるかという発想に変えていかないと、どうにもならないところまでと来ている」と現状を指摘した。

玉川徹氏(2019年7月撮影)玉川徹氏(2019年7月撮影)

 人口戦略会議では、2050年までに20~39歳の女性人口が半減し、将来的に消滅の可能性が高いとした自治体が744あるとした。このなかには、神奈川県箱根町、栃木県日光市、北海道函館市などが含まれている。

 玉川氏は、韓国が30年かけて取り組んだ子育て政策の結果、むしろ出生率が下がったという例を挙げ、「急に出生率を上げても変えられない。少子化対策、子育て政策は(子供を)産みたい人、産もうとしている人にいいことであり、今まで産んだことがない人が産むことにはならない」と語った。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・民間の有識者らで作る「人口戦略会議」・「消滅可能性自治体」の問題】  2024年04月25日  09:08:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:成年後見制度 安心して利用できる仕組みに

2024-04-11 05:01:40 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説②】:成年後見制度 安心して利用できる仕組みに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:成年後見制度 安心して利用できる仕組みに

 認知症のお年寄りが増え、財産管理や生活を支援する制度の重要性が高まっている。使い勝手が悪いと指摘される仕組みを改め、安心して利用できるようにすべきだ。 

 法制審議会の部会が、成年後見制度の見直しに向けた議論を始めた。この制度は、認知症や知的障害など判断能力が不十分な人に代わり、家庭裁判所が選んだ後見人が、預貯金の管理や不動産の処分、各種の契約などを行うものだ。

 介護保険制度と共に2000年に導入され、高齢化社会を支える両輪になると期待された。しかし、認知症患者が推計600万人まで増えたのに、利用者は約25万人にとどまっている。

 社会の高齢化は今後も進み、認知症の患者はさらに増えるとみられる。利用の拡大に向け、制度の見直しを急がねばならない。

 利用者が伸び悩んでいる背景には、制度の使いづらさがある。

 現在は、後見人が生涯にわたって担当する前提のため、不動産の処分などが終わっても、本人が亡くなるまでは後見人を解任できず、途中での交代も難しい。

 後見人は弁護士や司法書士らが選ばれることが多く、月数万円の報酬を支払い続けることになる。弁護士や司法書士は金銭管理には適しているとしても、本人の生活状況を見定めてサポートするには不向きな面もあるだろう。

 法制審では、後見人が不要になれば、利用を終わらせることができるように仕組みを変更することなどが議論される見通しだ。

 認知症患者は、年齢や生活環境に応じて症状が変化する。手厚い介護が必要な局面では、福祉関係者を後見人にできるようにするなど、柔軟な制度が望ましい。

 後見人のなり手不足も課題だ。親族がいなかったり、遠方に住んでいたりして、支援を受けられないお年寄りも多い。こうした状況の改善には、「市民後見人」制度を活用することも必要だろう。

 研修を積んだ市民が自治体に登録され、家裁が後見人に選ぶ。近所の人が後見人になれば、生活費を渡す際に、雑談の中で生活ぶりを確認するなど、寄り添った対応も可能になるのではないか。

 ただ、裁判所が市民後見人を選ぶケースは、全体の1%に満たない。弁護士ら専門職や親族の選任を優先する傾向が強いためだとされる。自治体が主導して、市民後見人の信頼度を高めてほしい。

 後見人による財産の着服事件も起きている。悪質な後見人をいかに排除するかも大事な問題だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年04月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:多死社会 故人を円滑に葬送できるよう

2024-04-01 05:01:45 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説①】:多死社会 故人を円滑に葬送できるよう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:多死社会 故人を円滑に葬送できるよう

 高齢化が進む日本は、出生数より死亡者数が圧倒的に多い「多死社会」を迎えている。故人を大切にしながら、円滑に葬送ができる環境を整えていくことが重要だ。

 2023年の全国の死亡者は159万人を超え、過去最多を更新した。00年の1・65倍に上る。50年頃まで、年160万人を上回る高水準で推移する見通しだ。

 これに伴い、亡くなった人をすぐに火葬できない「火葬待ち」が深刻になっている。日本では死亡者の大半が火葬されるが、施設の整備が追いついていない。

 墓園事業者を中心に作る公益社団法人「全日本墓園協会」が、火葬場などに聞いた調査では、火葬待ちの最大日数は「6~8日」が約3割で、最も多かった。

 かつて、これほど待つことは少なかったという。多死社会に対応できているとは言えまい。

 火葬を待つ間は、遺体を安置できる斎場などを活用することになるが、料金が1日あたり数万円かかるケースもある。

 地元の市町村に公営の火葬場がない場合は、他の自治体や民間が運営する火葬場に頼るしかない。ただ、他の自治体では、地元住民より料金が割高で、利用時間が制限されることが少なくない。

 自治体などによる斎場や火葬場の新設、更新が急がれるものの、「迷惑施設」として周辺住民から反対されることが多いという。

 火葬が滞るようでは、故人の尊厳を損なうだけでなく、遺族の金銭的、心理的な負担も増すことになる。自治体は、施設の新設や拡充について、住民に丁寧に説明して理解を得ていく必要がある。

 高齢者の死亡数が増えたのは、戦後の第1次ベビーブーム期に生まれた世代が高齢化したことが大きな要因だ。高度成長期に地方から都市部に移り住んだ人も多く、特に首都圏などで目立つ。

 そうした自治体では、近隣自治体との広域連携で、火葬場を整備するなどの動きが出ている。

 1990年代以降、共同で斎場兼火葬場を運営する千葉県の船橋など4市は、2019年に2か所目の施設を作った。公営の火葬場を持たない埼玉県の朝霞や志木など4市は、共同で整備する意向だ。そうした流れを加速させたい。

 既存施設の運用を効率化することも課題となる。横浜市は1日の火葬炉の利用回数を増やしたり、従来は縁起が悪いとされてきた「友引」の日にも稼働させたりしている。地域の実情に合わせて、工夫を重ねてもらいたい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:独居の高齢者 行政の支援で孤立を防ぎたい

2024-03-04 05:01:50 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【社説②】:独居の高齢者 行政の支援で孤立を防ぎたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:独居の高齢者 行政の支援で孤立を防ぎたい

 独り暮らしの高齢者が安心して生活するには、周囲の配慮や支援が欠かせない。政府と自治体が知恵を絞り、手を差し伸べていきたい。

 身寄りのない高齢者の支援策について、岸田首相は昨年末、省庁横断で検討するよう指示した。

 2020年の国勢調査によると、65歳以上の単身世帯は672万世帯に上り、高齢者の5人に1人が一人暮らしだった。10年前の1・4倍に増えている。

 核家族化が進み、三世代で同居する世帯は少なくなった。夫婦で暮らしていても、配偶者に先立たれれば、独り暮らしになる。

 元気なうちはともかく、体力や判断力が低下すると金銭管理や行政の手続きが難しくなることがある。死後、葬儀や遺品整理をする親族が見つからず、行政が対応に追われる事例も頻発している。

 厚生労働省は、身寄りのない高齢者の実態調査を行っている。どのような困りごとを抱えているのか、課題を洗い出してほしい。

 近年、問題になっているのは、介護施設への入居時や病院への入院時の手続きだ。施設や病院は子などの「身元保証人」を求めるケースが多いが、独居の高齢者が保証人を見つけられず、入所を断られることもあるという。

 国は、保証人がいないことを理由に、施設が高齢者の受け入れを拒んではならない、と通知している。ただ、施設側には、緊急時の連絡先の把握や、支払いの保証を確実にしておきたいという事情があるのだろう。

 最近は、身寄りがない人の「身元保証」を代行する民間事業者が増えている。高齢者が事業者と契約を結び、身元保証人になってもらう仕組みで、事業者が家族に代わって財産管理や死後の手続きなどを行うサービスもある。

 だが、こうした事業を監督する官庁はなく、金銭を巡るトラブルも起きている。16年には、都内の事業者が高齢者から集めた預託金を不正に流用していたことが発覚し、契約者に返還されないという被害が発生した。

 独り暮らしの高齢者は今後も増えていく。「身元保証サービス」を安心して利用できるようにするには、政府が何らかの規制を設けるべきではないか。事業者を審査し、悪質な業者を排除する仕組みを導入することも一案だ。

 高齢者が孤立を防ぐには、日頃から地域に関わり、人とのつながりを保つことが大切だ。いざという時に備え、自らに関する情報をまとめておくのも有効だろう。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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