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呪いの塔

2006年12月04日 | ミステリ
横溝正史の初長編作品ですが知名度は低いですね。ですが、のちに書かれる有名作品のネタともとれる要素が散見できます。

それより解説にあるように、乱歩の「陰獣」にたいする編集者としてのリスペクトという読み方と、もうひとつ当時の乱歩-正史ラインの心のありようが見えるような気もします。探偵役の白井三郎はもちろん江戸川乱歩の分身でもありますが、殺される大江黒潮も同じ分身です。正史の分身である語り手の由比耕作がどちらにシンパシーを感じるかというと、最終的には白井三郎のほう、つまり探偵作家として名を成す前の江戸川乱歩イコール平井太郎ではなかったか、ということです。ま、うがちすぎでしょうけどね。

「四本指」「バベルの塔」「不可能犯罪(らしきもの?)」「意外な犯人」「2部構成」等、なんだかどこかで見たような、初長編なのに後期作品と見紛うような言葉や展開です。

若かった正史は乱歩と探偵小説の中の人物になりたかったのではないでしょうか。

「呪いの塔 横溝正史著 徳間文庫」
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