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「『三つの棺』密室講義」について

2006年06月30日 | JDカー
某2ch内のカースレで、「『三つの棺』密室講座」についての話題があがっていますが、「飛ばして読んでも差し支えない」などというのは論外としても、「密室講義」の正しい意味を書いて欲しいものです。

以下ネタバレです!

『三つの棺』のメイントリックは鏡による一人二役だと言われていますが、それはカーが仕掛けた大トリックの一部分です。カーが目論んだのは、常套的なミステリの流れの逆転、それによっておきる不可思議な現象。視点を変えれば、ありきたりな殺人事件になるという解決の爽快感。
一般的なミステリの構造は
事件の発端→第一の殺人→第二の殺人→解決→犯人の自滅
ですが、
三つの棺は、
事件の発端→犯人の自滅【グリモー教授の死】→第二の殺人【フレイによるグリモー教授射撃】→第一の殺人【グリモー教授によるフレイ殺害】→解決、です。
このプロットを一般的なミステリ構造にみせかけるために「時計の針がすすんでいた」とか「部屋の中に被害者がいて、外から犯人が侵入した」という豪腕描写があったのです。
「密室講義」では「被害者と犯人が同一人物」というネタに気づかせないために、イヤになるほど、「密室からの脱出」「密室の作り方」などという『犯人と被害者は別人』というディレクションにこだわっているわけです。
「密室講義」を読ませることにより、読者の意識を「一人二役」に向けさせない、ミスディレクションに最大の注意をはらっていたのです。のちにロースンが「帽子から飛び出した死」でマーリニに「第3の場合」とした章を付け加えさせていますが、下手すりゃネタバレ、または親友の作品についてイマイチよく分かっていなかったのかもしれません。
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