spin out

チラシの裏

毒杯の囀り

2006年12月15日 | ミステリ
読めないですねえ「囀り」(さえずり、です)。
なんでこんな題かというと、密室を構成するための環境に日本で言うところの「うぐいす張りの廊下」が出てくるんです。14世紀のイギリスでは「ナイチンゲールの廊下」と言うそうですが。
カーの歴史ものを彷彿とさせるような歴史ミステリ第一作です。作者は他シリーズとして「白薔薇と鎖」という作品も書いていますが、そちらよりは本格ミステリっぽい展開と構成です。
舞台が14世紀ですから、厳密なトリックの不可能性から犯人を探し出すことより、プロット展開の面白さと当時の風俗描写の巧みさ、探偵役の2人のキャラクター、そんなところが魅力かと思います。密室といってもトリックは現代ものでやったら非難轟々でしょうし、物騒な時代背景らしくばったばったと死人が出ます。
それに「白薔薇と鎖」でも感じたことですが、当時の風俗を忠実に描いているとはいえ、汚物、死、背徳、といったものをことさら書きつらねるのは、作者がわざとやっているとしか思えないほどです。それも歴史学者として中世文学の伝統「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を参考にしているからでしょうか。
「毒杯の囀り ポール・ドハティ著 創元推理文庫」
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 密室と奇蹟、っていうか | トップ | 千年、働いてきました »

コメントを投稿

ミステリ」カテゴリの最新記事