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チラシの裏

ユダの窓

2015年12月25日 | JDカー
まさか創元から新訳が出るとは。
扉見返しに「翻訳権所有」とありますが、ハヤカワポケミス版「ユダの窓」にもそう書かれています(昭和50年改訂1版)。
トレードの理由はなんだったのでしょうか。
ハヤカワポケミス版にあった「ガブリガブリ」が「ゴロゴロゴロ」になっちゃったのは
ポケミスで読んだ人間にはちと残念。

犯行可能な人物を探すのではなく、容疑者には犯行不可能、ということを証明する、
「死時計」にもつながるようなヤヤコシイハナシです。
チェスタトン風逆説を長編に導入して成功した作品で、
「死時計」「死者はよみがえる」路線の到達点ではないでしょうか。

犯行の箇所は手短にすませて、すぐに法廷場面へチェンジ。
法廷では追訴側の弁護士が3人、メインの敵は背が高くかっこよくて、いかにもキレ者。
弁護側はH・M卿1人だけ。
しかも立ち上がるときに法服を踏んづけて破いてしまう、というお馬鹿ぶり。
でも、H・M卿の最初の発言がヒーロー然として惚れぼれ。
このあたりは本当にうまい。

いわゆる法廷ものなのですが、同じくカーの作品「アラビアンナイトの殺人」みたく、
いろいろな人間の語り/騙りで事件の形が見えてくる、という趣向のような気もします。

しかし、またもカーはH・M卿に「とある人物は計画に参加していない」と断言させている(P248)
にもかかわらず、最後の謎解きでそのH・M卿が「計画に割り込んできた」と言っているのは、
とてもズルいのでは。
その計画が殺人計画でないにしろ、探偵を都合よく使いすぎ。
探偵の発言についても真実かどうか保証しない、という
カーの作風に納得できるかどうか、ですね。
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