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「仮面劇場の殺人」と「月明かりの闇」

2024年07月25日 | JDカー
■勢いがついて「仮面劇場の殺人」「月明かりの闇」まで読んでしまったよ。
★「月明かりの闇」はフェル博士もの最後の作品ですね。
■両作ともに、元版が出た当時に読んでいたはずだけれど、まったくおぼえていない。
再読してみたら「仮面劇場の殺人」は悪くなかったよ。
★へえ。
■「悪魔のひじの家」は、40年代の作品を再現しようとして失敗した作品とみた。
★「仮面劇場の殺人」は、正史の「幽霊座」を連想しましたよ。
■「幽霊座」のほうが発表は早いんだけれどね。
「仮面劇場の殺人」はロミオとジュリエットを上演する最中に殺人がおきる、という趣向だから
歌舞伎を趣向とした「幽霊座」と似ているのも当然なのかもね。
ところどころに自作の「B13号室」、「九人と死で十人だ」などの粗筋を、
作品名は出さずにこっそりといれこんでいるのも楽しい。
★船の出来事を元妻に話すところですね。
■往年のカー節が多少なりとも復活している、といってもいいかな。
★復活しているとはいえ、レトリックがずいぶんクドいんですよ。
あと、名前を言い換えるのが、そんなにおもしろいのかなあ。若干鼻につきます。
あれ原文とおりに翻訳しなくてもいいのに。この癖は「月明かりの闇」ではさらにエスカレートします。
■老人性饒舌体かあ。とはいえ、カーは自分が住んでいたところの近所を舞台にして、
執筆のモチベーションを上げようとしたのでは。
「仮面劇場の殺人」の手ごたえが自伝的「ニューオリンズ三部作」執筆へのステップになったんじゃないか。
★だけど、やたらに近代アメリカ史のうんちくが披露されるのは、若干、いや相当に困惑します。
■日本人にとっては、どうでもいい話だからね。子どもむけクイズみたいな歴史うんちくが白々しい、という感じがしなくもない。
★そういった「うんちく」を削ってしまえば、総ページが3分の2ぐらいになって、もっとスマートになるのでは。
■ところがね、その削られるだろう「うんちく」をカーは書きたいんじゃないか。
自分の若い頃のアメリカのことを書きたいんだろうなあ。
★フェル博士ものといえば舞台は英国、英国の風習、習俗を描いていたのに。
■40年代までの作品に見られる英国趣味は営業だったんじゃないかね。
★カーにそんな器用なことができたんですかねえ。
■昔のように英国を舞台にした「悪魔のひじの家」が失敗したので、
「仮面劇場の殺人」でフェル博士をアメリカで活躍させてみたらうまくいった、というのが本音かも。
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